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国際的な短編小説賞を受賞した5作品中3作品が「生成AIで書かれた可能性が高い」と指摘される事態に


大手出版社がAIによって生成された疑いでホラー小説の出版を取りやめるなど、人間だと偽ってAIに生成させた記事や小説を発表する人には厳しい目が向けられています。新たに、国際的な短編小説賞で受賞した作品について「生成AIで書かれた可能性が高い」という疑念の声が上がっています。

AI scandal engulfs prestigious short story prize after multiple entrants accused of fabricating work | The Independent
https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/books/news/commonwealth-short-story-winner-ai-generated-jamir-nazir-granta-b2980039.html

‘Obvious markers of AI’: doubts raised over winner of short story prize | Books | The Guardian
https://www.theguardian.com/books/2026/may/19/commonwealth-short-story-prize-winner-doubts-ai-artificial-intelligence

コモンウェルス短編小説賞はイギリスの政府間組織であるコモンウェルス財団が2012年に創設した文学賞であり、56の加盟国で構成されるイギリス連邦(コモンウェルス・オブ・ネイションズ)の加盟国に住む作家に応募資格があります。

審査対象となるのは2000~5000語の未発表の短編小説であり、「アフリカ」「アジア」「カナダ&ヨーロッパ」「カリブ海」「太平洋」という5つの地域ごとの受賞者と、これらの中から1人の最優秀者が選ばれるとのこと。最優秀者の発表は毎年6月30日に予定されており、受賞賞金は地域ごとの受賞者が2500ポンド(約53万円)、最優秀者が5000ポンド(約107万円)となっています。


2026年度のコモンウェルス短編小説賞には史上2番目に多い7806作の応募があり、5月に各地域の受賞者が発表されました。このうちカリブ海地域の受賞者で、トリニダード・トバゴ出身の作家であるジャミール・ナジール氏の作品『The Serpent in the Grove(森の中の蛇)』について、AIで生成されたのではないかという疑惑が浮上しました。

ナジール氏は東インド系の血を引くトリニダード・トバゴ出身の作家で、カリブ海地域とインド系移民の文化的な交わりを探求する作品を手がけているとのこと。また、詩人としても活動しており、すでに多くの著書を出版していると受賞者発表ページでは紹介されています。


『The Serpent in the Grove』はトリニダード・トバゴの田舎を舞台にした物語で、「苦境にあえぐ農夫や口を閉ざす妻、そして人間が埋葬しようとするものを記憶しているかのような森」について記されているとのこと。審査員らは、「ジャミール ・ナジールの言葉は崇高で、正確でありながら豊かな情感を喚起し、驚くほど簡潔に鮮やかで豊かなイメージを描き出す」「洗練され自信に満ちたこの物語は、最後の行を読み終えた後も長く心に残る旋律的な響きを持っている」などと評しています。


『The Serpent in the Grove』はイギリスの文芸誌・グランタの公式ウェブサイトに全文掲載されており、以下のリンクにアクセスして読むことができます。

The Serpent in the Grove | Jamir Nazir | Granta
https://granta.com/the-serpent-in-the-grove/

『The Serpent in the Grove』が公開されると、インターネット上の読者らが「AIで生成された文章によくみられる文体上の特徴がある」と指摘し始めました。AI研究者のナビール・クレシ氏は、「ChatGPTで生成した物語が名門の文学賞(コモンウェルス短編小説賞)を受賞するという初めての出来事です。『Xでもなく、Yでもなく、Zだ』という文があちこちに見られ、『hums(ブンブンと音を立てる)』という表現も頻繁に使われています。そのほかにもAIであることを示す明らかな特徴が数多くみられます。いずれにせよ、AIにとって大きな節目になる出来事です」と述べています。


ペンシルベニア大学のAI研究者であるイーサン・モリック教授は、「これは一種のチューリングテストとも言える結果になりましたが、100%AIで生成された物語がカリブ海地域のコモンウェルス短編小説賞を受賞したようです。この物語は『叙情的な精緻さと心に残る雰囲気、そして自信と抑制の効いた語り口が際立っていた』と評されていました」と述べています。

In a Turing Test of sorts, it looks like a 100% AI generated story just won the Commonwealth Prize for the Caribbean region "for its lyrical precision and haunting atmosphere, the story stood out for the confidence and restraint of its voice."

Published in Granta: granta.com/the-serpent-...

[image or embed]

— Ethan Mollick (@emollick.bsky.social) 2026年5月19日 2:50


興味を持った人がナジール氏について調べてみたところ、これまでに出版したらしい著作は2018年に自費出版された『恋愛詩集』のみであり、後はFacebookやLinkedInへの投稿程度しか見つからなかったことも報告されています。ナジール氏はLinkedInでAIがいかに素晴らしいのかを語っており、AIに執着しているらしいこともうかがえるとのこと。


なお、「ナジール氏の顔写真もAIで生成されたのではないか」と疑う人もいましたが、2018年に詩集を自費出版した際、ナジール氏がトリニダード・トバゴの新聞に載ったことも突き止められています。


海外メディアのThe IndipendentがAI検出プラットフォームのPangramでチェックしたところ、『The Serpent in the Grove』は100%AIで生成されたものだと判定されました。Pangramによると「湿った土、薪の煙、発酵したココアの酸っぱい味」といった3つの語句を並べた形容は一般的なAIの修辞パターンであり、「stubborn(頑固な)」「as if it had(まるで~であったかのように)」という単語やフレーズの多用は、AIが生成した文章によくみられるものだとのこと。

また、あるXユーザーはカナダ&ヨーロッパ地域の受賞作である『The Bastion’s Shadow(要塞の影)』とアジア地域の受賞作『Mehendi Nights(メヘンディの夜)』についてもAIで生成された疑いがあると指摘しました。


この指摘に対し、『Mehendi Nights』の作者であるインド人作家のシャロン・アルパライル氏は、執筆や編集などのいかなる段階でもAIを使っていないとThe Indipendentに主張。『Mehendi Nights』の執筆過程を示すために、コモンウェルス財団にGoogleドライブのタイムスタンプなどの資料を提出したとして、「この物語には人間の手と目しか関わっておらず、私は執筆にAIを使うことを拒否します」と述べました。

一連の騒動を受け、コモンウェルス短編小説賞の受賞作をオンラインで公開している文芸誌・グランタは、全受賞作の公開ページ上部に「グランタの編集者は、作品受領後の校正以外ではこれらの作品や選考に一切関与していません。今年は、一部の作品が少なくとも部分的にAIによって生成されたのではないかという臆測が流れています。作家が自身の作品ではないものを提出したという指摘について、グランタは誠実に受け止めていますが、確たる証拠が明らかになるまではこれらの作品をオンラインで掲載し続けます」という声明を表示しました。

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in AI,   創作, Posted by log1h_ik

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