セレブによる「ペットのクローン作成」が動物の健康や幸福を危険にさらすとの指摘

犬や猫といったペットの寿命は一般的に飼い主よりも短く、大抵の飼い主はペットを失った悲しみに襲われることとなります。近年はクローン技術の発展により、一部のセレブたちが「ペットのクローン」を作り出していますが、この試みが動物の健康や幸福を危険にさらしていると、イギリスのノッティンガム・トレント大学で動物科学の上級講師を務めるジャクリーン・ボイド氏が指摘しました。
Celebrities are cloning their pets – but the procedure risks animals’ health and wellbeing
https://theconversation.com/celebrities-are-cloning-their-pets-but-the-procedure-risks-animals-health-and-wellbeing-269571

人々はペットにたくさんの愛情と時間を注ぎますが、ペットが永遠に生き続けることはできません。そのため、一部のセレブたちがペットのクローンを作ろうとすること自体は不思議ではないといえます。
1997年に哺乳類として世界初のクローンである羊の「ドリー」が誕生して以降、クローン技術は一大ビジネスとして発展しました。実際に元アメリカンフットボール選手のトム・ブレイディ氏や女優のバーブラ・ストライサンド氏などが、愛犬のクローンを作成したと報じられています。
ボイド氏は、「特別なペットのコピーを作成することは、人とペットの深い絆を維持する方法のひとつかもしれません。特に、ペットを失うことには大きな悲しみを伴うからです」と述べ、ペットのクローン作成に一定の理解を示しました。
その上で、「ペットのクローンを作ることは本当に良い考えなのでしょうか?クローンは費用がかかるだけでなく、クローンされたペットの健康や福祉にリスクが伴う可能性があります。また、クローンされたペットが性格・行動・外見において、元のペットとまったく異なる可能性も高いのです」と指摘しています。

クローン技術の基本的な原理は、元となる生物の「正確な遺伝的複製」を作成することです。一卵性双生児が同じ遺伝的プロファイルを持つのと同様に、クローン動物は遺伝物質を得た「親動物」と遺伝的に同一の存在です。
動物のクローン作成プロセスでは、元となる動物の細胞核から遺伝物質を取り出し、核を取り除いた未受精卵に移植する体細胞核移植という技術が用いられます。こうして処理された卵子を代理母に移植すると、適切な条件下で完全に成長したクローンを妊娠・出産するというわけです。しかし、生物学者らが1世紀以上にわたりクローン動物の実験を行ってきたにもかかわらず、記事作成時点でもクローン作成の成功率は16%程度とそれほど高くありません。
また、クローン作成プロセスで生み出されたクローン動物は、必ずしも元となった動物とまったく同一ではないという点にも注意が必要です。もちろん遺伝的には元となった動物と同一ですが、動物の性格や特性、行動といった要素は遺伝子だけでなく経験や環境によっても左右され、これらが遺伝子発現にも影響を与えることがあります。
したがって、クローンで作ったペットに元となるペットとまったく同じ影響、育て方、習慣、生活環境を与えることができない限り、クローンのペットが元のペットとまったく同じ行動をするわけではないというわけです。
さらにクローン動物の外見でさえも遺伝子発現の違いに左右されるため、見た目が元となる動物と異なる場合があります。たとえば世界初のクローン猫「CC」の元となったのは三毛猫でしたが、CCの毛色は三毛猫ではなく白と茶色のトラネコでした。このように、遺伝子が同じでも見た目が同じとは限らないとボイド氏は指摘しています。

さらに問題となるのが、クローンペットを作成することによる倫理的な問題です。ペット自身はクローン作成について同意も拒否もできず、将来的なクローン作成のために組織サンプルを採取する際、望まない痛みを伴う場合があります。
体細胞核移植のためにメスから卵子を採取する際には、ホルモン治療や手術といった侵襲的な処置が必要となる場合があるほか、実際にペットを妊娠・出産する代理母にも多大な負担をかけることになります。ボイド氏は、卵子提供者と代理母のケアと福祉について、クローン作成プロセス全体を通じて綿密な配慮が必要だと主張しました。
クローン動物には潜在的な健康リスクもあり、ある研究ではクローン豚の48%が生後1カ月以内に死亡することが確認されているほか、クローン牛には正常な歩行ができない跛行(はこう)や腱(けん)の異常など、筋骨格系の異常がみられることが多いとのこと。また、元となる動物が遺伝性疾患を患っていた場合、クローン動物もそのリスクを受け継ぐこととなります。
クローン動物を作成する費用も懸念事項のひとつです。記事作成時点では、クローン動物作成にかかる費用は一般に5万ドル(約780万円)以上かかりますが、この資金を里親を探すペットたちの福祉などに活用できれば、より多くの個体が救われることとなります。
ボイド氏は、「ペットは大切な家族の一員です。クローン技術は一見すると、ペットを長生きさせ続ける完璧な方法のように思えるかもしれません。しかし、クローン技術にはさまざまな困難や潜在的な懸念が伴うため、私たちは時間やお金、感情的なエネルギーを今いるペットに注ぎ、ペットが私たちと過ごす時間を可能な限り幸せで、思い出深いものにすることに専念する方がいいでしょう。これは、深く愛されたペットが残す、最高の遺産となることが多いのです」と述べました。

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in サイエンス, 生き物, Posted by log1h_ik
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