畜牛・競走馬から愛犬までクローンを大量生産する中国の世界最大規模のクローン工場とは?
By Steve Jurvetson
世界初のほ乳類のクローンとしては「羊のドリー」が世界的に知られていますが、1996年のドリーの誕生から約20年が経過した2015年現在、中国で世界最大規模のクローン工場が稼働しており、食肉用の家畜からペットまでをクローンとして大量生産する計画が進められています。そんなクローン工場を管理するバイオテクノロジー企業の会長がTelegraphの取材を受けました。
China ‘cloning factory’ to produce cattle, racehorses and pets - Telegraph
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/asia/china/12013158/China-cloning-factory-to-produce-cattle-racehorses-and-pets.html
日本では人間のクローンを作る技術が「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律(クローン技術規制法)」で規制されています。人間以外のほ乳類に関するクローン技術は比較的容認されていますが、ヨーロッパでは欧州議会が「クローン技術が完全に成熟していない」として、2015年9月にクローン家畜の販売を禁止する動きを見せています。クローンを作り出す技術には倫理的・技術的な懸念があるわけですが、中国のバイオテクノロジー企業であるBoyaLifeは、世界最大規模のクローン工場の稼働を開始しています。
クローン技術が世界的に規制されている状況について、BoyaLifeの会長であるXu Xiaochun氏は「クローン技術を禁止・規制する措置は、科学的・倫理的・政治的根拠に基づいたものでしょうか。法律とは常に科学に基づいて制定されるはずですが、クローン技術に関しては間違っています」と、Telegraphにコメントしています。
中国では中間層へ安定した牛肉を供給するのが難しくなりつつあり、2000年から2013年までの間に牛肉の価格は3倍に値上がりしています。そのため、中国国内では農業バイオ技術への関心が高まっているわけですが、Xiaochun氏の巨大なクローン工場では、食用の牛だけではなく競走馬・警察犬・ペット犬などのクローン生産まで視野に入れているとのこと。
By Pixel Pepp
「従順で知能が高い犬がいれば、その1匹から100万匹を作り出すことができます。通常は、賢い犬を1匹見つけ出すだけでも大量の犬をチェックする必要があります」とXiaochun氏は語っており、1万5000平方メートルにおよぶXiaochun氏のバイオ研究所には遺伝子バンクなどの設備がすでに整えられているとのこと。BoyaLifeは韓国のパートナー企業であるSooam Biotechと研究所を運営しており、顧客から10万ドル(約1200万円)規模の出資を受け、すでに550頭以上の子イヌを生産したことが伝えられています。しかしながら、BoyaLifeとパートナーを結んだSooam Biotechのトップであるファン・ウソク氏は、2006年にヒト胚性幹細胞の論文を捏造した人物であるのは見逃せない事実です。
ただし、ウソク氏のクローン犬に関する実績は認められており、2014年にこれら中国・韓国の2社は共同で、絶滅危惧種にあたるチベット犬のクローニングを成功させているとのこと。今後クローン工場では1年間に10万個の畜牛の胚が生産され、最終的なクローン胚の生産量は100万個まで拡大される予定です。
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