サイエンス

中国でゲノム編集された双子の実在を確認、臨床実験を行った中国の科学者は警察の捜査対象に


世界で初めてヒトの胚に対してゲノム編集技術を用いる実験を行った中国の科学者について中国・広東省が予備調査を行った結果、ゲノム編集を受けた双子が実在していたことがわかりました。さらに他にも臨床実験によってゲノム編集済みの赤ちゃんを妊娠した女性がいることが判明。広東省は科学者の行った臨床実験が事実だったことを正式に認めました。実験を行った科学者は大学を解雇され、処罰対象として中国警察の捜査対象になると報じられています。

China confirms birth of gene-edited babies, blames scientist He Jiankui for breaking rules | South China Morning Post
https://www.scmp.com/news/china/science/article/2182964/china-confirms-gene-edited-babies-blames-scientist-he-jiankui


Chinese scientist who gene-edited babies fired by university | Reuters
https://www.reuters.com/article/us-china-health-babies/chinese-scientist-who-gene-edited-babies-fired-by-university-idUSKCN1PF0RA


2018年11月25日、南方科技大学の研究者である賀建奎(He Jiankui)氏が、YouTube上で「ゲノム編集技術『CRISPR-Cas9』を用いて、先天的にHIV耐性を持つ双子を生み出すことに成功した」と発表しました。ヒト胚を用いた実験には倫理的問題が多く、いまだに議論が多く重ねられてるにも関わらず、それらを全て無視した賀氏の発表に世界中の科学者から批判の声が集まりました。

中国の科学者が「ゲノム編集でHIV耐性を持つ双子の女児が誕生」と発表、倫理面や内容には強い疑問の見方も - GIGAZINE


こうした世界からの大きな批判を重く受け止めたのか、中国の科学技術副大臣が「遺伝子編集ベビーの実験は違法であり、容認できない」とテレビ番組内で発言。中国当局が賀氏率いる研究チームに対して研究の中断を命じ、捜査のメスを入れたことが明らかになっています。

中国政府が「世界初の遺伝子編集ベビーの誕生」を主張する科学者チームに研究中止を命令 - GIGAZINE


2019年1月21日、広東省の調査チームは予備調査の結果を中国メディアに発表しました。調査チームは「意図的に監視を避けながら、人間の胚へ遺伝子編集を行うために、賀氏は外国人スタッフを含むプロジェクトチームを組織し、安全性と有効性が不確実な技術を用いた」と結論づけ、「自らの名声を追求するために、どこからか自己調達してきた資金によって臨床実験を行った」と指摘しています。また、調査結果では「賀氏や賀氏のプロジェクトに関連したスタッフ、そして組織は法律と規制によって処罰を受けるだろう」と言及されていて、これから警察による本格的な捜査が始まるとみられています。

賀氏は2017年3月から2018年11月の間に被験者として8組のカップルを募集し、そのうち2組が妊娠。二人の母親のうち、一人は双子の「露露(ルル)」と「娜娜(ナナ)」を産み、もう一人の母親はまだ出産していないとのこと。この双子は既に捜査チームによって特定されていて、ルルとナナは広東省人民政府の医学的監視下に置かれる予定だそうです。また、賀氏の研究を承認した病院の倫理審査委員会が深圳市の保健当局に登録されていなかったことも判明しています。


南方科技大学は、調査結果を受け止めた上で、「南方科技大学は賀氏との作業契約を解約し、大学内での教育研究活動をすべて終了します」と賀氏の解雇を2019年1月21日に発表しました。

Southern University of Science and Technology Public Statement - In the Focus - SUSTC
http://www.sustc.edu.cn/en/info_focus/3056


当の賀氏は2018年11月に香港で開催された国際会議で成果を発表して以来姿を現しておらず、一部の報道機関は「賀氏が自宅軟禁もしくは警察に拘束されている」とみていますが、南方科技大学は賀氏の拘禁を否定しています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
中国の科学者が「ゲノム編集でHIV耐性を持つ双子の女児が誕生」と発表、倫理面や内容には強い疑問の見方も - GIGAZINE

中国政府が「世界初の遺伝子編集ベビーの誕生」を主張する科学者チームに研究中止を命令 - GIGAZINE

遺伝子編集によって誕生した子どもには「遺伝子的プライバシーがない」という懸念 - GIGAZINE

中国は科学研究に潤沢な予算をつぎ込むことで海外の優秀な研究者や学生を誘致している - GIGAZINE

遺伝子操作により生まれる「デザイナーベビー」を多くの識者が支持、重大な疾患を避けるため - GIGAZINE

ヒト遺伝子操作のガイドライン策定に向けて動き、タブーの領域に踏み込んだ「ヒトの遺伝子操作」に歯止めか - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.