生き物

Instagramの有名人たちが違法動物取引を促進しているという指摘


片手で持てるくらい小さなサルやトラ、ライオン、チーター、ピューマ、ナマケモノ、ミーアキャットなどのキュートな動物の写真や動画を、InstagramやTikTokといったSNS上にアップする有名人が多くいます。こういった写真や動画の被写体となっている動物たちは、ドバイの違法な動物取引からやってきたものであると、調査報道を旨とするウェブメディア・bellingcatFoeke Postma氏が指摘しています。

How Instagram Celebrities Promote Dubai's Underground Animal Trade - bellingcat
https://www.bellingcat.com/news/mena/2021/02/08/how-instagram-celebrities-promote-dubais-underground-animal-trade/

人気のラッパーや映画俳優、実業家、テレビ司会者、モデル、YouTuberなどが小さな希少動物と一緒に撮った写真を自身のInstagram上にアップしています。しかし、これらの動物はドバイを拠点に活動する違法な動物取引グループが販売したものであるとPostma氏は指摘。このような野生動物の違法取引は数十億円規模の産業になっています。

アラブ首長国連邦(UAE)などでは昔からトラやライオンをペットとして飼うことがステータスシンボルとされてきました。しかし、基本的にトラやライオンをペットとして飼うことには問題があり、「動物たちの身体的および社会的な幸福を害する行為です」とPostma氏。


そもそも、UAEは2017年に野生の霊長類や大型のネコ科動物などを個人が所有・取引・輸送することを禁じる法律を施行しています。そのため、基本的にトラやライオンをペットとすることは違法です。また、こういった動物の違法取引が横行することで、国際的な犯罪組織が資金を得るために密猟に勤しむケースもあるとPostma氏は述べています。

このような規制があるにもかかわらず、野生動物の違法取引はいまだにまん延しているとPostma氏は指摘。特にソーシャルメディア上で有名人たちがペットを誇示するような写真を投稿することが、野生動物の違法取引が続く原因のひとつであると説明しています。


ソーシャルメディア上で特に人気なのが、小さなライオンやトラの写真。こういった動物の写真が人気な理由は、個体の販売価格が高く、飼育のハードルも非常に高いため、一般人には手が出せないためです。中でも人気が高いのがホワイトタイガー。野生の個体が非常に少ないため、近親交配により生まれた個体であるケースが多く、深刻な遺伝的欠陥を有する場合も多いそうです。

2019年8月にInstagramで500万人以上のフォロワーを持つインドの女優・モデルであるEsha Gupta氏が、ホワイトタイガーとの写真を投稿しました。この投稿は記事作成時点では削除されていますが、ウェブアーカイブなどで投稿を確認することができます。


Gupta氏がホワイトタイガーとの写真を投稿したのと同じ月に、Instagramで40万人以上のフォロワーを持つMoeMoneyOfficial氏も、ホワイトタイガーの写真を投稿。


さらに2019年9月1日には1000万人以上のチャンネル登録者数を誇るYouTuberのMo Vlogs氏も、ホワイトタイガーとたわむれるムービーを公開しました。


この3つの投稿で撮影されたホワイトタイガーは、すべて同じ個体であるとPostma氏は指摘。トラの縞模様は各個体に固有なものであり、以下の画像の色線で示している部分にあるひげや鼻の斑点、縞模様が同じ個体である証拠としています。


これらの投稿では同じホワイトタイガーが撮影されているというだけでなく、「MBE.777」というタグが使用されているという共通点が存在します。この「MBE.777」というタグはトラやライオン、チーターといった動物と一緒に写真や動画を撮影した有名人の投稿でも同様にタグ付けされているとのこと。

他にも、前述までのホワイトタイガーとは異なる個体のホワイトタイガーとの写真を、イギリスのラッパーFredo氏やサウジアラビアの有名人Dyler氏、エジプトのテレビ司会者Sarah Khalifa氏らが投稿しています。これらの投稿にも当然のように「MBE.777」というタグが使用されています。


Fredo氏、Dyler氏、Khalifa氏の3人が一緒に撮影したホワイトタイガーは、縞模様の特徴から同じ個体であるとPostma氏は指摘しています。


「MBE.777」のタグは有名人だけでなく写真家も使用しており、動物の販売だけでなくレンタルも行っているであろうことが予想できます。


さらに、イギリスで詐欺罪により懲役刑を言い渡されて逃亡中のサヒド・カーンも、Fredo氏らが撮影したのと同じ個体のホワイトタイガーと写真を撮影しています。左がKhalifa氏が投稿したホワイトタイガーの写真で、右がカーンの投稿したホワイトタイガーの写真。


複数の著名人にタグ付けされている「MBE.777」は、Instagramのアカウント名です。MBE.777はInstagram上で顔や名前などは公開していないため、Postma氏は「MBE.777がUAEの動物に関する法律を熟知している可能性があります」と指摘。MBE.777による投稿では、「いくらですか?」などの動物の販売価格を尋ねるようなコメントが確認できます。


MBE.777はプライバシーを非常に重視して投稿写真を選別していますが、同氏と共に違法な動物販売を行っている人々が投稿する写真から、個人情報を一部垣間見ることが可能。例えばMBE.777の関係者と思われるロシア人女性のInstagram投稿に写りこんだ建物や位置情報などから、MBE.777は「ドバイのジュメイラ・ビーチ・レジデンスにある高層アパートの20階あたりにある部屋」で写真を撮影していることがわかります。


インドの有名人であるAdnaan Shaikh氏やドイツの起業家Saygin Yalcin氏、インドのインフルエンサーShadan Farooqui氏などがこのMBE.777の借りているアパートの一室で動物と写真を撮影しています。

MBE.777は写真撮影に動物を貸し出しているだけでなく、動物を違法に販売しており、別のInstagramアカウントであるExotic Pets DubaiがMBE.777らによる動物の違法販売を支援しているとPostma氏は指摘。その理由はExotic Pets Dubaiが投稿したサーバルの写真が、MBE.777が投降したサーバルの写真の個体と一致しているからです。


MBE.777と動物販売ネットワークを構成しているロシア人女性は、生息数が推定8000頭という絶滅危惧種に近いチーターをInstagram上で販売していたことが確認されており、コメント欄には「すでに売れました」とコメントしています。


他にも、MBE.777が投稿した写真に写った動物と同じ特徴を持った写真を、別のInstagramユーザーが投稿しているケースが複数ある模様。そのため、これらの動物は「MBE.777が販売したものなのでは」とPostma氏は推測しています。


また、MBE.777をタグ付けした写真の中には謎の男性が写りこんでいるケースもあり、「これがMBE.777を運用している人物なのでは?」とPostma氏。


MoVlogs氏のムービーでもホワイトタイガーと一緒にMBE.777と思しき人物が映り込んでいます。


Postma氏は「有名人やインフルエンサーがライオンやトラの子どもとツーショットで写真を撮り、その写真にMBE.777などをタグ付けして投稿することで、彼らの何百万人ものフォロワーにMBE.777を宣伝しています」と記し、法的な問題や動物自身の幸福といった問題を別として、こういったセレブによる投稿が「絶滅の危機に瀕している野生生物たちを密猟の危機にさらしている」と指摘。さらに、「著名人のフォロワーたちはInstagram上に投稿されるホワイトタイガーなどの写真について指摘し、投稿の魅力を低下させることで、絶滅の危機に瀕している野生生物の個体数を守ることができるかもしれません」と語っています。

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in 生き物, Posted by logu_ii

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