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中国マフィアや麻薬組織がこぞって狙う「海のコカイン」の密輸を防ぐ取り組みとは?

by Matt Hardy

金よりも高価といわれ、中国マフィアやメキシコの麻薬密売人たちがこぞって狙うことから「海のコカイン」と呼ばれているのが、世界で最も小さなクジラ「コガシラネズミイルカ」や「トトアバ」という魚の持つ(うきぶくろ)。一晩で数匹釣り上げれば漁師の年収をしのいでしまうという「海のコカイン」の密輸の実態を暴き、そのサプライチェーンを破壊するための取り組みが行われています。

The Ugly War Over the ‘Cocaine of the Sea’
https://www.thedailybeast.com/the-ugly-war-over-the-cocaine-of-the-sea


コガシラネズミイルカやトトアバはメキシコ西岸のカリフォルニア湾に生息し、その鰾は高級食材として扱われることから、近年、麻薬組織や重武装した密猟者のターゲットとなっています。いずれも密猟が多発したことで個体数が減少し、コガシラネズミイルカに至っては2019年時点においてカリフォルニア湾にわずか15頭しか存在しません。

野生動物の保護団体であるEarth League Internationalの共同創設者であるアンドレア・クロスタさんは、コガシラネズミイルカを絶滅から救うべく、3年前にバハ・カリフォルニア州でトトアバの密輸業者の調査を開始しました。すると、調査チームはすぐに問題が単なる「貧しい漁師による密猟」ではなく、マネーロンダリングを行う犯罪組織が関わっていることを突き止めました。

調査チームは違法なバイヤーを装い、中国人の密輸業者に近づきました。クロスタさんは中国人業者がトトアバをマネーロンダリングに使う仕組みについて説明しているところをこっそりと録画しましたが、その映像によると、毎年10億ドル(約1100億円)ものロンダリングされたお金が中国に送られ、いくらかは再び違法行為への投資に使われているとのこと。このような密輸にはメキシコに存在する中国マフィアと現地の麻薬密売人が関わっており、犯罪者たちは脅迫と賄賂を用いてローリスクで迅速にお金を作り出しています。


調査チームによると、中国におけるトトアバの鰾の価格は1グラムあたり50ドル(約5300円)で、金よりも高価とのこと。このためカリフォルニア湾の漁師たちは一晩に数匹のトトアバを釣り上げるだけで、年収よりも多くの収入を得ることが可能になります。

これがトトアバの鰾。


政府やNGOが何十億ドルとお金をつぎ込んでいるにも関わらず、過去数年にわたって野生動物の密猟・違法売買・違法伐採などは撲滅できておらず、犯罪者たちは常に法執行機関の一歩先を行きます。

そして、違法なサプライチェーンは多くの場合、「密猟者」と「消費者」に目が向けられがちで、その間にある環境犯罪の複雑なシステムは注目されません。このようなサプライチェーンの中間層には、さまざまな国の犯罪組織や、ビジネスマン、腐敗した政府職員などが関わっています。

「これまでのアプローチの多くが失敗に終わった」という歴史を受けて、クロスタさんらはトトアバのサプライチェーンを混乱させるという方法を取りました。これによりカリフォルニア西岸の密猟は抑制され、コガシラネズミイルカの絶滅を防ぐことができたとクロスタさんは語っています。

海のコカインを巡る戦いの様子はナショナル・ジオグラフィックがドキュメンタリー映画「Sea of Shadows」としてまとめています。

Sea of Shadows Official Trailer | National Geographic - YouTube


赤外線カメラで捉えられたのは、深夜の海をゆく一隻の船。


この船に乗っているのが密猟者たちです。


網で釣り上げられるトトアバ。


中国人の密輸業者の背後には、大量の鰾が並べられています。


そして、メキシコでは……


トトアバやコガシラネズミイルカを狙う麻薬組織の構成員たち。


写真に写っているのがコガシラネズミイルカです。


カリフォルニア西岸にはかつて数百頭のコガシラネズミイルカが生息していましたが、2019年時点ではその数は15頭まで減少しています。


コガシラネズミイルカの保護活動を行うスタッフたち。


政府やテレビ局などと協力しつつ……


クロスタさんらは「トトアバのエル・チャポ」に迫っていきます。


犯罪組織との争いは熾烈なものに。


「コガシラネズミイルカを救えなければ、私たちは世界で最も美しい海を失ってしまう」


「私たちは、一匹の生き物のために戦う」


なお、ドキュメンタリー映画「Sea of Shadows」はリチャード・ラッカーニ氏が監督、レオナルド・ディカプリオ氏がプロデューサーを務め、2019年7月12日に全米公開となっています。

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in 生き物,   動画, Posted by darkhorse_log

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