犯罪ドラマに触発された「偽ウミガメの卵」作戦で密猟と闇取引のルートを特定するまで
ウミガメの卵はマレーシアなどで珍味とされることから密猟が相次いでおり、中央アメリカのあるビーチでは産み落とされた卵の90%がふ化できないと言われています。そこでウミガメを保護すべく研究者は「偽のウミガメの卵」を使って、密猟の貿易ルートを特定する作戦を行いました。テレビの犯罪番組に触発されて実施された作戦ですが、実際に闇ルートを突き止めることができたとのことです。
InvestEGGator Sea Turtle Eggs
https://pasopacifico.org/project/investeggator-sea-turtle-eggs/
Using GPS-enabled decoy turtle eggs to track illegal trade: Current Biology
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(20)31255-0
Decoy smart turtle eggs leave illegal traffickers with egg on their face - Scimex
https://www.scimex.org/newsfeed/decoy-turtle-eggs-shows-which-illegal-traffickers-have-it-on-their-face
GPS-equipped decoy eggs reveal wildlife smuggling routes in Costa Rica
https://newatlas.com/environment/gps-equipped-decoy-eggs-wildlife-smuggling-routes/
「InvestEGGator」と呼ばれる作戦は、アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)が実施したテクノロジーで野生動物を保護するプロジェクトの「Wildlife Crime Tech Challenge」を受けて実施されたもの。保全生態学者のキム・ウィリアムズ-ギレン博士らの研究チームは、ドラマ「ブレイキング・バッド」で麻薬取締局が化学物質の入った容器にGPSデバイスを取り付けて麻薬密造の捜査を行うというシーンを見て、同様の方法で密輸ルートを特定できる可能性があると考えました。
また「ドラマ『THE WIRE/ザ・ワイヤー』の中では2人の捜査官が音声デバイスをテニスボールの中に入れてドラッグディーラーの会話をひそかに録音していました。ウミガメの卵はピンポン球のような見た目です。私たちは2つのアイデアを1つにまとめることで『InvestEGGator』を生み出しました」とウィリアムズ-ギレン博士は述べています。
研究チームは3Dプリンターでウミガメの卵のような球体を出力し、それを本物に似せて塗装。球体の中に1時間に1度信号を送信するGPSデバイスを入れた状態で、ウミガメの巣1つあたりにつき1個の球体デバイスを配置しました。これは、密猟者は通常、1つの巣に含まれる卵をまるごと取っていくためです。
この結果、卵が密猟された時、デバイスの25%は除去されてしまいましたが、残り75%はそのまま密猟者の手に渡りました。なお、密猟されずに残った卵はデバイスがあっても無事ふ化したことが確認されており、デバイスが卵を傷つけることはないとのこと。
盗まれた卵型デバイスの信号から、研究チームは5つの密猟・売買を行う集団を特定しました。法的な観点からいうと、密猟している人をその場で捕まえるよりも引き渡し場所を特定する方がはるかに価値があると、研究者は述べています。
追跡により判明した引き渡し場所までの最短距離は、ビーチから地元のバーまでの約2kmで、最長距離はビーチから内陸地のスーパーマーケットまでの137kmでした。卵はスーパーマーケットで販売されていたわけではなく、そこからさらに民家に移動されたため、スーパーマーケットは中継地点の1つであり、民家が実際の販売場所だとみられています。引き渡し場所が明らかになったことは有益ですが、バーやスーパーマーケットなどの地元コミュニティが卵の売買に関わり情報提供などをしていることが判明したことは、問題の深刻さと解決の難しさを示していると研究者は述べています。
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