AIを使い一般的なデスクトップPCでも動作するAI天気予報システム「Aardvark Weather」、従来より数千倍少ない計算能力ではるかに高速
従来のAIと物理シミュレーションを組み合わせた天気予報システムに比べ、数十倍のスピードおよび数千分の1の計算能力で天気予報を行える新たなシステム「Aardvark Weather」がケンブリッジ大学のチームによって開発されました。
Fully AI driven weather prediction system could start revolution in forecasting | University of Cambridge
https://www.cam.ac.uk/research/news/fully-ai-driven-weather-prediction-system-could-start-revolution-in-forecasting
Project Aardvark: reimagining AI weather prediction | The Alan Turing Institute
https://www.turing.ac.uk/blog/project-aardvark-reimagining-ai-weather-prediction
AI can forecast the weather in seconds without needing supercomputers | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2472659-ai-can-forecast-the-weather-in-seconds-without-needing-supercomputers/
🌦 New AI model aims to provide weather forecasts entirely driven by AI
— The Alan Turing Institute (@turinginst) 2025年3月20日
Research published today in @Nature looks at how Aardvark Weather is reimagining weather prediction.
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天気予報は農業や交通、エネルギーなどの重要な決定に加え、洪水や猛暑といった気象災害の警告など社会のさまざまな部分に大きな利益をもたらしています。天気を正確に予測する方法については長年研究されてきており、2025年3月時点では以下の3ステップのアプローチが確立しています。
◆ステップ1
人工衛星・気象観測所・気象気球・船舶・ブイ・航空機などからデータを収集し、現在の大気の状態を推定します。
◆ステップ2
計算モデルを使用して大気の状態を時間的に前進させて天気予報を作成します。
◆ステップ3
バイアスを修正したり、詳細なデータを作成したり、人間の予測者からの情報を入力したりして場所に応じた予報ができるように処理を行います。
こうして天気予報を行うには、巨大なスーパーコンピューターと複雑なソフトウェアを使用した計算と、大規模なチームなどが必要です。
天気予報は社会的に重要であり、より少ない計算能力で天気予報を行うAI天気予報が大きな注目を集めるのは当然のことです。これまでGoogleをはじめ、HuaweiやMicrosoftなどがAI天気予報を開発してきました。
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しかし、従来のAI天気予報は3ステップのうちの「ステップ2」だけをAIに置き換えるものであり、ステップ2と同じくらい計算能力が必要なステップ1については手つかずのままでした。そのため、AI天気予報が導入されても依然としてスーパーコンピューターと大規模なチームが必要でした。
今回ケンブリッジ大学の研究チームは、ステップ1からステップ3までの全工程をAIで処理できるシステム「Aardvark Weather」を開発。Aardvark Weatherのモデルは人工衛星や気象観測所などのセンサーからのデータを取り込むことでいきなり世界と地域の予報を出力することができ、天気予報パイプライン全体を単一のシンプルな機械学習モデルに置き換えることに成功しました。
Aardvark Weatherは既存の観測システムのデータのうち、わずか10%を使用するだけで既にアメリカの気象局の予報に匹敵する精度を出せているとのこと。実際、以下の動画では左に表示されているAardvark Weatherの風速予報が右に表示されている実際の風速と一致していることが分かります。
Aardvark weather - YouTube

また、Aardvark Weatherはスーパーコンピューターを使わずデスクトップPCだけで予報を行えるうえ、アフリカの農業の気温予測やヨーロッパの風力発電向けの風速予測など、特定の業界や場所に合わせたカスタム予報を迅速に作成できるという長所があります。
ただし、ヨーロッパ中期予報センターが気象予測を0.3度単位のグリッドを使用して行っているのに対し、記事作成時点でAardvark Weatherは1.5度単位のグリッドを使用しており、「複雑で予期しない気象パターンを捉えるには粗すぎる」とマンチェスター大学のデイビッド・シュルツ氏はコメントしました。
Aardvark Weatherの論文の筆頭著者であるアンナ・アレン氏は、「今回の結果はAardvark Weatherが達成できることのほんの始まりに過ぎません。Aardvark Weatherのエンドツーエンドの学習アプローチはハリケーンや山火事など他の天気予報の問題にも簡単に適用できるほか、大気の状態や海洋力学など地球システムのより広範な予測にも応用できます」と今後の発展性を語っています。
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