Googleの親会社が所有する研究機関「X」からレーザー光を使ってインターネット接続を提供するプロジェクト「Taara」が独立

Googleの親会社・Alphabet傘下の研究機関であるX(旧Google X)では、次世代の画期的な製品につながる可能性を秘めたさまざまな研究が行われています。そんなXから、レーザー光を使ってインフラが不十分な地域にインターネット接続を提供するプロジェクト「Taara」が独立しました。
Introducing the Light Generation - Google X Blog
https://x.company/blog/posts/taara-graduation/

Alphabet spins off laser-based internet project from ‘moonshot’ hub
https://www.ft.com/content/1331c131-7b89-47ab-8dd2-3ce6c6a2307a
Alphabet’s Starlink competitor Taara is spinning off into an independent company
https://www.engadget.com/mobile/alphabets-starlink-competitor-taara-is-spinning-off-into-an-independent-company-154653176.html
もともとXでは、高度およそ20kmの成層圏にWi-Fiアンテナ装備の気球を飛ばし、通信インフラが整備されていない地域にインターネットを提供する「Loon」というプロジェクトが進められていました。Loonに参加していたあるエンジニアが、「より地上に近い場所でインターネット接続の問題を解決できるのではないか」と考えて新たに立ち上げたのが、レーザーを使ってインターネット接続を提供する「Taara」です。
Taaraはレーザー光を使ったワイヤレス光通信を提供するプロジェクトであり、わずか5cmほどの大きさのレシーバーに、遠く離れた位置から鉛筆の幅ほどの目に見えないレーザー光を照射することで機能します。このシステムは最大20kmの距離で毎秒20Gbもの高速データ通信が可能で、物理的なケーブルや大がかりな設備や工事を必要とせず、セットアップにわずか数時間しかかかりません。
そのため、建築物が密集した都市部や、川や海などで隔てられた地域、起伏の多い山岳地帯など、従来の光ファイバーの敷設が困難または高価すぎるエリアで、高速インターネットアクセスを提供する有望な手段だとのこと。
Loonは大量の気球を打ち上げる規制上のハードルや機器のメンテナンスの困難さにより、2021年に完全にシャットダウンされました。しかし、Loonの精神を受け継いだTaaraは着々と成果を上げ、2021年にはコンゴ川を挟んで隣り合うコンゴ共和国の首都・ブラザヴィルとコンゴ民主共和国の首都・キンシャサ間で、約5kmの距離で700TBものデータを20Gbpsで送信することに成功しました。
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そして2025年3月17日、ベンチャーキャピタルファンドのSeries X Capitalが主導する資金調達ラウンドでの資金調達に成功し、TaaraがXから独立することが発表されました。Alphabetは少数の株式を保有することが明らかになっていますが、詳しい資金調達の内訳や財務目標については開示されていません。
Google本社に近いカリフォルニア州サニーベールに拠点を置いているTaaraは、記事作成時点で20人のスタッフを擁しており、積極的な採用活動を行っているとのこと。すでにインドやアフリカの12カ国で事業を展開しており、カリフォルニア州の砂漠地帯で開催される音楽フェスのコーチェラ・フェスティバルでは、過負荷になる携帯電話ネットワークを補完するサービスも提供しています。
TaaraのゼネラルマネージャーであるMahesh Krishnaswamy氏は開発の次の段階として、システム端末に搭載された多数のミラーやレンズを不要にするシリコンフォトニクスチップを掲げています。将来的にはTaaraの光学ベースのチップユニットが、無線ベースのWi-Fi通信に取って代わる可能性もあるとのこと。
なお、インターネット接続を提供するサービスとしては、人工衛星による衛星通信を展開するStarlinkが連想されますが、TaaraはStarlinkのように直接消費者と契約するのではなく、T-Mobileなどの大手通信会社と提携してサービスを展開しています。Krishnaswamy氏は、「Taaraは既存のインフラストラクチャーを強化および加速するのに役立つバックボーンだと考えてください」と述べ、Starlinkとは異なるものだと説明しています。
その上で、Starlinkは限られた量の帯域幅を一定のエリアに送信するシステムであり、同じエリアの利用者が増えると全体的な速度が低下する問題があるため、都市部での展開には向いていないと指摘。また、Taaraのデバイスは数時間でポールや樹木、建物などに取り付けて使い始めることができ、人工衛星を打ち上げる必要があるStarlinkと比較して技術的な優位性があると主張しました。
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in メモ, Posted by log1h_ik
You can read the machine translated English article Project 'Taara', which provides Internet….