超軽量でありながら約1000秒間も飛行できる小型ドローンをMITが開発、人工授粉に役立つ可能性も

近年は昆虫のようなサイズと機動性を持ったドローンの開発が進められていますが、重量1g未満のmicro–aerial vehicles(MAV:マイクロ・エアリアル・ビークル)は、記事作成時点ではほとんどが10秒未満のホバリングや低速飛行しかできません。新たにマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、超軽量ながら約1000秒間も飛行が可能な小型ドローンを開発しました。
Acrobatics at the insect scale: A durable, precise, and agile micro–aerial robot | Science Robotics
https://www.science.org/doi/10.1126/scirobotics.adp4256

This fast and agile robotic insect could someday aid in mechanical pollination | MIT News | Massachusetts Institute of Technology
https://news.mit.edu/2025/fast-agile-robotic-insect-could-someday-aid-mechanical-pollination-0115
Tiny insect-like robot can flip, loop and hover for up to 15 minutes | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2464538-tiny-insect-like-robot-can-flip-loop-and-hover-for-up-to-15-minutes/
MIT builds swarms of tiny robotic insect drones that can fly 100 times longer than previous designs | Live Science
https://www.livescience.com/technology/robotics/mit-builds-swarms-of-tiny-robotic-insect-drones-that-can-fly-100-times-longer-than-previous-designs
野菜や果物の栽培では雄花で作られた花粉が雌花に付着する受粉が重要ですが、近年は花粉媒介者である昆虫の減少が大きな問題となっています。昆虫を介した受粉が期待できない場合、人間の手による人工授粉を行う必要があり、この人工授粉に昆虫サイズのドローンを使用するというアイデアが提案されています。
しかし、これまでに開発された昆虫サイズのドローンは、持久力や飛行速度、空中での機動性といった点で本物の昆虫に劣っており、実用性に欠けていたとのこと。そこでMITの研究チームは小型ドローンの設計を全面的に見直し、以前のバージョンよりはるかに機動性が高く飛行時間も長い小型ドローンを開発しました。
MITが過去に開発した小型ドローンは、2枚の翼を持つ4つのユニットを組み合わせたものでしたが、この構造では翼が羽ばたいた時に送り出される空気が互いに干渉し、生成される揚力が減ってしまうという問題がありました。そこで今回の小型ドローンは、それぞれ1枚の翼を持つ4つのユニットを組み合わせることで、翼の安定性と揚力を向上させているとのこと。
実際にMITが開発した小型ドローンが飛行する様子は、以下のYouTube動画で見ることができます。
Tiny insect-inspired robot can perform death-defying acrobatics - YouTube

飛行する小型ドローン。重量はわずか750mgで、4枚の翼を羽ばたかせて飛行する仕組みとなっています。

機動性が高く、安定性を失わないまま空中で回転するなど、アクロバティックな飛行も可能です。



「MIT」の字を描くように飛行するなど、精密な操作もできます。

研究チームによると、この小型ドローンは約1000秒間にわたりホバリングすることが可能で、これは従来のバージョンよりも100倍以上長い時間だとのこと。また、設計の変更により十分な空きスペースが確保できたことから、小型のバッテリーやセンサーを搭載することもできるそうです。電気工学およびコンピューターサイエンス学部の准教授であるケビン・チェン氏は、「このロボットの寿命と精度の向上により、人工授粉の支援などの非常にエキサイティングなアプリケーションに近づいています」と述べています。

さらに研究チームは、羽ばたきの動作を生み出すアクチュエーターに翼を接続する複雑なトランスミッションを作成。これにより、過去のバージョンよりも機械的な負担を軽減し、翼の耐久性を高めることに成功しました。

研究チームは今後、1万秒以上の飛行を達成するという目標に向けて設計の改善を進めていくほか、小型ドローンの操縦精度を向上させ、「花の中心に着地する」ことを可能にしたいとしています。チェン氏は、「この新しいロボットプラットフォームは私たちのグループの主要な成果であり、多くのエキサイティングな方向性につながります。たとえば、このロボットにセンサー、バッテリー、コンピューティング機能を組み込むことは、今後3年から5年で中心的な焦点となるでしょう」と述べました。
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