「夏の夜に光るホタル」をヒントに発光しながら空を飛ぶ極小ロボットが開発される
ホタルの成虫は、夏になると水辺を飛び回りながら発光器官を光らせ、異性をひきつけようとします。このホタルの発光器官からヒントを得て、アクチュエーターで空を飛ぶ昆虫サイズのロボットに発光粒子を埋め込むことで、光りながら飛び回る超小型ロボットの開発に成功したと、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が発表しました。
FireFly: An Insect-Scale Aerial Robot Powered by Electroluminescent Soft Artificial Muscles | IEEE Journals & Magazine | IEEE Xplore
https://doi.org/10.1109/LRA.2022.3179486
Robotic lightning bugs take flight | MIT News | Massachusetts Institute of Technology
https://news.mit.edu/2022/robotic-actuator-fly-0621
ホタルのお尻には発光器官が備わっており、ホタルルシフェリンという物質がホタルルシフェラーゼという酵素によって酸化されることで黄色に化学発光します。ホタルは成虫が生殖的アピールとして発光を行うほか、幼虫にも発光器官が備わっており、捕食者への警戒を促す意味で発光するとされています。
MITの電気工学およびコンピューターサイエンス学科のケビン・チェン助教はこれまでに、エラストマーとカーボンナノチューブ電極の極薄層を交互に巻き付けたアクチュエーターで翼を動かし、空を飛ぶマイクロロボットを開発していました。チェン助教はホタルの発光する様子から、このマイクロロボットのアクチュエーターに、電気が流れると発光を示すエレクトロルミネセント硫酸亜鉛粒子を組み込むことを思いついたそうです。
どういうロボットなのかは以下のムービーを見るとわかります。
Robotic lightning bugs - YouTube
これが開発されたマイクロロボットです。
暗闇の中で、羽根の付け根にあるアクチュエーター部分に「MIT」の文字が光っています。
エレクトロルミネセンス硫酸亜鉛粒子が組み込まれたエラストマーと、カーボンナノチューブ電極を重ねて、クルクルと巻き……
ロボット用のアクチュエーターができあがります。
アクチュエーターに電圧をかけると、アクチュエーターが動いて羽ばたくと同時に、組み込まれたエレクトロルミネセンス硫酸亜鉛粒子が発光します。
チェン助教が率いる研究チームによれば、エレクトロルミネセンス硫酸亜鉛粒子から発せられた光をアクチュエーター自身が遮らないように設計する必要があったとのこと。そこで、わずか数ナノメートルの厚さで光を透過させるような透明度の高いカーボンナノチューブ電極を開発したそうです。また、エレクトロルミネセンス硫酸亜鉛粒子は非常に強力な高周波の電場がないと発光しません。そのため、高電圧を用いてアクチュエーター内に強い電解を作り出すことで、粒子を明るく光らせることに成功しました。
さらにエレクトロルミネセンス硫酸亜鉛粒子を加えることでアクチュエーターの品質が低下する問題もあったそうですが、一番上のエラストマー層だけに混ぜて厚みを数マイクロメートル厚くすることで、アクチュエーターの重量をわずか2.5%増やしただけで、マイクロロボットは飛行性能を劣化させることなく発光できるようになったそうです。
研究チームによれば、発光システムによって、ロボットの位置をカメラで正確に認識することができるとのこと。実験ではiPhoneのカメラを使って、光をもとに2mmの精度でマイクロロボットの位置と姿勢を追跡することができたそうです。また、発光パターンを利用して通信を行うことも検討されています。
香港城市大学生物医学工学部のPakpong Chirarattananon准教授は「発光するアクチュエーターはアクティブマーカーとして機能し、モーションキャプチャーシステムに代わって、安定飛行のためのリアルタイムフィードバックを提供する可能性があります。エレクトロルミネセンスによって、高度な装置を使わずに離れた場所からロボットを追跡できるようになります。これは驚くべきブレークスルーでしょう。チェン助教の研究チームが次に何を成し遂げるかが楽しみです」とコメントしました。
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