天文学者が「目障りな宇宙広告」の全面禁止を求める

2025年1月初旬に開催されたアメリカ天文学会第245回大会のブリーフィングにおいて、地上からの天文観測に支障をきたす可能性があるとして、アメリカ天文学会が「目障りな宇宙広告」の世界的な禁止を求める声明を発表しました。
AAS Statement on Obtrusive Space Advertising | American Astronomical Society
https://aas.org/about/governance/society-resolutions/space-advertising
Astronomers seek global ban on space advertising - SpaceNews
https://spacenews.com/astronomers-seek-global-ban-on-space-advertising/
広大な宇宙空間を有効に活用するべく、民間企業の中には宇宙空間に広告を出して地上から見られるようにする試みを模索するところがあります。実際に、ロシアの研究チームはこの「宇宙広告」が実現可能かどうかを探るべく、太陽光を人工衛星で反射させて広告の表示を試みる「宇宙広告ミッション」を発表しています。
ロシアの研究チームが「宇宙広告」を発表、小型の人工衛星で宇宙から地上に広告を表示 - GIGAZINE

企業にとっては間違いなく利益をもたらす宇宙広告ですが、天体を観測する天文学者にとっては観測の邪魔になりかねません。アメリカなど一部の国では法律により宇宙広告が禁じられていますが、このような禁止規定は各国によりばらつきがあるとして、アメリカの天文学者らは世界的に「目障りな宇宙広告」を禁止するよう各国に呼びかけています。
「目障りな宇宙広告」とは、アメリカの法律では「望遠鏡やその他の技術的装置の助けを借りずに、地表にいる人間が認識できる宇宙空間での広告」と定義されています。
アメリカ天文学会・宇宙環境保護委員会のメンバーであるジョン・バレンティン氏は、「宇宙広告は非常に魅力的なので、商業的な価値を考えれば誰かがやろうとするでしょう。知る限りは差し迫った宇宙広告の試みはありませんが、ロシアのAvant Space社は2024年4月、レーザーを照射して広告ロゴや画像を形成できるよう設計した小型人工衛星を打ち上げています。他国の企業が目障りな宇宙広告を打ち上げることへの懸念が高まっています」と述べました。

アメリカ天文学会は、以下の声明を発表しています。
・アメリカ天文学会の使命は、多様で包括的な天文コミュニティとして、人類の宇宙に対する科学的理解を高め、共有することである。
・人類の宇宙に対する科学的理解を深めるには、宇宙を明瞭に、妨げられることなく眺めることが不可欠である。
・その事業は現在、宇宙での特定の活動に脅かされている。その活動とは、大型衛星群の拡散、既存のスペースデブリ、将来的にデブリを発生させる衝突の可能性、高周波干渉、意図しない電磁放射などである。
・加えて、さまざまな国家や民間の商業団体が宇宙へのペイロードの打ち上げに関心を表明しており、その目的は光を発することで地上から見える広告を表示することであると公言されている。
・このような宇宙空間の利用は、地上の施設を利用した天文学の追求にとって、現時点では未知であるが、潜在的に深刻な脅威となる。
天文学は宇宙条約第1条が意図する「宇宙空間の探査と利用」の一形態であり、また第9条では、締約国に対し、宇宙空間の平和的探査および利用を行う他の締約国に配慮して潜在的に有害な干渉を制限することを求めている。
・目障りな宇宙広告に代表されるような活動は、間違いなく、地上の天文学に対する「潜在的に有害な干渉」となる。
・緩和策を適用して目障りな宇宙広告との平和的共存を可能にすることはできない。
以上の観点からアメリカ天文学会は、適切な国際条約、条約、または法律により、目障りな宇宙広告を世界的に禁止することを求め、国連宇宙空間平和利用委員会のアメリカ代表団に対し、このような禁止を支持するよう促しました。
バレンティン氏は「国連宇宙空間平和利用委員会において、アメリカがこの問題を積極的に推進し、国際社会における規範として、このような形態の広告に関与しないことを確立するよう望みます」と述べました。
なお、この声明発表の数日後、天文学者が発見した小惑星がテスラの車だったことが発覚し登録が取り消される事態が起こりました。今後は「目障りな宇宙広告」に加え、「目障りな車」も規制する必要があるのかもしれません。
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in Posted by log1p_kr
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