シンガポールがお金持ちな国になった理由

シンガポールは観光立国として有名なほか、世界中の大企業のアジア支社が集まる商業拠点としても影響力を発揮しています。そんなシンガポールが現在のような経済立国になれた経緯をBloombergが解説しています。

How Singapore Got So Crazy Rich - YouTube

以下は、シンガポール(赤)、アメリカ(オレンジ)、フランス(青)、イギリス(紫)の1人当たりGDPを比較するグラフです。シンガポールはアメリカやフランスといった先進国と比べて1人当たりGDPが大きいことが分かります。

独立時から1990年まで首相を務めたリー・クアンユー氏は国内の製造業の強化に努めました。シンガポールには天然資源が乏しいため、製品を製造して他国に輸出することで資産を確保しようとしたわけです。

シンガポールはマラッカ海峡、インド洋、南シナ海に面しており、重要な海運拠点となっています。この立地条件がシンガポールの輸出政策に有利に働きました。

GDP全体に占める製造業の割合は急速に増加し、1980年には全体の27％を占めるまでに成長しました。

また、リー・クアンユー氏は製造業だけでなく「公共交通機関の整備」「医療レベルの向上」「安定した法制度の整備」などにも取り組みました。

さらに、シンガポールは金融の自由化も重視したほか、法人税を非常に低く設定することで外国企業の支社を誘致することに成功しました。シンガポールの法人税はわずか17％で、条件を満たせば13.5％にまで引き下げられます。

2代目首相のゴー・チョクトン氏もリー・クアンユー氏の政策を維持し、大企業の誘致に力を注ぎました。

さらに、リー・クアンユー氏の息子で3代目の首相となったリー・シェンロン氏は統合型リゾート(IR)やF1サーキットの誘致を進め、シンガポールの観光面での魅力を大きく高めることに成功しました。

中国やインドの好景気もシンガポールに有利に働き、数多くのリゾート施設が立て続けに建設されました。これにより、シンガポールは金融面でもレジャー面でも富裕層にとって魅力的な国となりました。

シンガポールの運用資産は2004年時点では4200億ドル(約66兆円)でしたが、2022年には3兆6000億ドル(560兆円)にまで増加しています。

一方で、シンガポールには「言論や表現における監視が強い」という一面もあります。1971年にリー・クアンユー氏は「報道や報道機関の自由はシンガポールの団結という最優先事項に従属しなければならない」と公の場で発言し、報道の制限を公然と実施していました。

さらに、経済成長のために外国人労働者を大量に受け入れた結果、シンガポール国民の間で「外国人に良い仕事を奪われている」という懸念が広がっているそうです。

2024年5月にはローレンス・ウォン氏が独立以来4人目の首相となりました。新たな首相がシンガポールの成長を維持し、問題を解決できるのかに注目が集まっています。