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イーロン・マスクが消費者金融保護局を「削除」したいと主張するも「狂気にもほどがある」など賛否両論

by Daniel Oberhaus

消費者金融商品を管轄するアメリカの消費者金融保護局(CFPB)について、次期大統領ドナルド・トランプ氏から「政府効率化省」のトップに任命されたイーロン・マスク氏が、「重複する規制機関が多すぎるので削除すべき」と発言しました。CFPB内の腐敗や権力乱用疑惑などが騒がれる一方で、CFPBの成果を引用してマスク氏に意を唱える人もいます。

Trump ally Elon Musk calls to ‘delete’ US consumer protection bureau | Donald Trump News | Al Jazeera
https://www.aljazeera.com/news/2024/11/28/trump-ally-elon-musk-calls-to-delete-us-consumer-protection-bureau

Musk Wants to Abolish Consumer Agency That Has Been a 'Model of Efficiency' | Common Dreams
https://www.commondreams.org/news/elon-musk-cfpb

Marc Andreessen tells Joe Rogan that Silicon Valley is split in half following Trump’s win  | Fortune
https://fortune.com/2024/11/27/marc-andreessen-joe-rogan-silicon-valley-split-trump-democrats-republicans/

マスク氏がCFPBの廃止を訴えたきっかけは、著名なベンチャーキャピタル会社「アンドリーセン・ホロウィッツ」の共同創設者であるマーク・アンドリーセン氏の発言でした。アンドリーセン氏は人気司会者ジョー・ローガン氏のポッドキャストに出演し、「バイデン政権下のCFPBや証券取引委員会、商品先物取引委員会、連邦取引委員会などが、さまざまな方法で私のビジネスをつぶそうとした」と主張。「彼らの目的は少数の大企業だけが生き残れるようにすることで、すべての企業を政府によって完全に規制し、管理しようとすることです。CFPBの目的は金融機関へ恐怖を与えることです」などと述べ、こうした政府機関は腐敗しているとの持論を展開しました。


アンドリーセン氏は、バイデン政権は特に新興企業への当たりが強く、仮想通貨やAI企業の創設者を真っ向からつぶそうとしたと指摘。実際、アンドリーセン・ホロウィッツが投資した融資スタートアップについて、2021年にCFPBが「違法かつ欺瞞的なマーケティング行為に従事した疑いがある」として業務停止を命じています

これとは別に、CFPBが議会の承認なしに権限を拡大しようとして訴訟を起こされた点にもマスク氏は反応しています。


2022年3月、CFPBは審査マニュアルを更新し、金融機関による差別行為を「不公平な行為」として認定する権限を監督官に付与する内容を加えました。CFPBはこの変更で、金融機関による宗教的・政治的な理由に基づいた銀行口座の提供拒否、手数料の引き上げといった差別が検査の対象となると主張しましたが、全米商工会議所や銀行業界団体は「議会の明確な承認なしに権限を拡大しようとしている」として提訴。2023年9月、連邦地裁判事は「『不公平』の基準が曖昧で、CFPBがこうした重大な政治的・経済的影響を伴う行動をとるには議会による承認が必要だ」として更新の永久差止め命令を出しました

アンドリーセン氏の発言と、それにまつわる上記審査マニュアルの話題が出たことを受け、マスク氏は「CFPBを削除します。重複する規制当局が多すぎます」と発言しました。


CFPBは2011年に設立された組織で、消費者金融商品を管轄し、消費者を不当な利息や搾取から保護するという目的で運営されています。発足のきっかけは2007年のサブプライムローン問題から始まった金融危機で、同じような危機の再発を防ぐため、アメリカ議会は金融規制システムを抜本的に見直すドッド・フランク法を成立させました。CFPBは金融システムの健全性を監視・維持する責務を負うことになりました。

CFPBは消費者からの苦情を集め、調査し、「不公正、欺瞞的、乱用的」な慣行を洗い出しており、同局は2024年5月時点で「207億ドル(約3兆1400億円)以上の補償金、債務の帳消し、その他の金銭的救済が国民にもたらされた」と報告しています。

ところが、CFPBはその発足以来、共和党議員らから「過度に強引な規制がある」として反発を受けていて、その活動の正当性が常に問われていました。例えば、シンクタンクのヘリテージ財団は「CFPBは高度に政治化され、有害で、まったく説明責任を果たさない連邦機関であり違憲である」として即時解体を訴えています。

マスク氏も共和党側に立っていることに加え、マスク氏が以前からX(旧Twitter)を金融取引もできるアプリケーションに改革しようとしていることなどから、ヤフーファイナンスのレポーターであるジョーダン・ワイスマン氏は「本質的に、マスク氏は自分のビジネスの障壁となり得る規制当局を排除しようとしているのです」と指摘しています。

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マスク氏は、トランプ氏直々に政府効率化省のトップに選ばれて以来、X上で無駄だと思われる政府省庁やその職員を名指しし始めています。

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by Steve Jurvetson

消費者擁護団体パブリック・シチズンの共同代表を務めるロバート・ワイズマン氏は「幅広い事業に直接の利害関係を持つ人物に、連邦政府の業務全体を見直すプロジェクトの実行を依頼するのは不合理であり、根本的に腐敗しています。今回の問題はまさにその理由を浮き彫りにしています」と述べ、マスク氏の発言を非難しました。

消費者擁護団体アメリカン・エコノミック・リバティー・プロジェクトのヘレイン・オレン代表は「現時点では、CFPBは金融システムに完全に組み込まれており、私の考えではCFPBを廃止するのは狂気にもほどがある」と指摘しました。

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in Posted by log1p_kr

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