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GoogleとMetaのデータセンターが大量の電力を使うせいで石炭火力発電所の閉鎖が先延ばしになっている


主にAI技術の発達に伴って、GoogleやMeta、Amazonなどのテクノロジー企業は相次いで大規模なデータセンターの建設を進めています。こうしたデータセンターの運営には大量の電力が必要であり、アメリカのネブラスカ州オマハではデータセンターの誘致によって電力需要が増加し、閉鎖予定だった石炭火力発電所の稼働を続けざるを得ない状況になっているとのことです。

How Google and Meta data centers are keeping coal alive in Omaha - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/business/2024/10/08/google-meta-omaha-data-centers/


AI datacenters are keeping coal-fired power stations busy • The Register
https://www.theregister.com/2024/10/14/ai_datacenters_coal/

オマハの中でも低所得層や有色人種が多いノースオマハ地区には、1950年代から稼働している石炭火力発電所があります。このせいでノースオマハ地区は特に大気汚染がひどく、ぜん息の発生率も高いとのこと。これに対し地域に電力を供給するオマハ電力公社(OPED)は、かつて「ノースオマハ地区の石炭火力発電所を2023年までに閉鎖する」と約束していました。

ところが石炭火力発電所の閉鎖期限が迫ると、オマハ電力公社は閉鎖に難色を示し、最終的に閉鎖を2026年に先延ばししました。その理由は、ノースオマハ地区に誘致されたGoogleとMetaのデータセンターが大量の電力を消費しており、石炭火力発電所を閉鎖すると電力需要をまかないきれなくなる危険性があるからというものでした。

ノースオマハ地区に50年間住んでいるというシェリル・ウェストン氏は、「約束は交わされたのに、オマハ電力公社はそれを破りました。この責任はハイテク企業にあります。石炭火力発電所がまだ稼働しているのは、成長に大量のエネルギーが必要だからです」と述べ、GoogleやMetaを非難しています。2026年までに石炭火力発電所を閉鎖するという主張についても、ウェストン氏やその他の批評家は懐疑的な目を向けています。


オマハ電力公社側は、ノースオマハ地区の石炭火力発電所閉鎖が遅れた理由について、「風力や太陽光発電のプロジェクトが地方で反対されていること」「規制によって天然ガスへの切り替えや新規プロジェクトの電力網接続に時間がかかっていること」などを挙げています。しかし、オマハ一帯で予測されている電力消費需要の3分の2は、GoogleやMetaのデータセンターによるものだと推定されており、データセンターの存在が大きなボトルネックになっている可能性はかなり高いといえます。

エネルギー業界のコンサルティング企業・Synapse Energy Economicsの代表であるデビ・グリック氏は、「データセンターと電力会社のずさんな計画がなければ、石炭火力発電所の稼働継続を強く求める必要はなかったでしょう。それがこの状況を引き起こしていないと主張するのは不誠実です」と述べています。


Metaと連邦政府のエネルギー開示情報によると、Metaがネブラスカ州に所有するデータセンターが消費する電力は、2023年にノースオマハ地区の石炭火力発電所が生産する電力とほぼ同じだとのこと。この電力消費量は、オマハにある住宅の過半数の消費電力に匹敵するそうです。さらに、オマハでGoogleが消費する電力はMetaを上回っており、アメリカのどこよりもネブラスカ州での電力消費量が多いそうです。

大手テクノロジー企業は新たなデータセンターを建設する土地と電力を求めて、アメリカ全土を探し回っています。そんな中、オマハは比較的地価が安い上に電力も豊富で、トウモロコシ畑を広大な太陽光発電所や風力発電所に変えるチャンスがあることから、データセンターの有力な建設候補地として浮上しました。また、オマハ電力公社も地方の行政府と協力して、2017年に産業用の特別な電気料金を設定しました。当時のネブラスカ州知事であるピート・リケッツ氏は、オマハ電力公社はGoogle誘致の要だったと話しています。


ノースオマハ地区の石炭火力発電所が閉鎖を見送る事態になっているにもかかわらず、ハイテク企業側は「ネブラスカ州のデータセンター運営は環境に優しい」と主張しています。これは、遠方の再生可能エネルギー開発業者と契約を結ぶことで、温室効果ガスの排出量を「ネットゼロ」に抑えているという理論に基づいています。

しかし、実際にノースオマハ地区に住んでいる人にとっては、遠く離れた場所でクリーンな電力を購入してもほとんど意味がありません。2023年に発表された調査によると、有色人種が人口の68%を占めるノースオマハ地区のぜん息率は国内で最も高い部類に入り、石炭火力発電所がその原因ではないかと示唆されているとのこと。

地元の活動家たちは、オマハで引き続き化石燃料が使用されていることに対し、ハイテク企業の反応が鈍いことに失望しています。ノースオマハ地区の地域活動家であり、民主党からアメリカ上院議員選挙に立候補しているプレストン・ラブ氏は、「ハイテク企業は傍観しているだけです。彼らはゲームに参加していません。これは恥ずべきことです。彼らは声を上げるべきです」と訴えています。

ハイテク企業はデータセンターで1ワットを使用するごとに、それと同じ分のクリーンエネルギーを「地域の電力網」から購入していると説明しています。しかし、「地域の電力網」にはルイジアナ州だけでなく14州が含まれており、多くの専門家や活動家はハイテク企業が契約を結ばなくてもクリーンエネルギーは生産されただろうと指摘しています。


また、オマハ電力公社によるクリーンエネルギー導入の試みに対しても批判の声が上がっています。オマハ電力公社が開発中の太陽光発電プロジェクトは、オマハから100マイル(約160km)離れたヨーク郡の農地に2800エーカー(約11.3平方キロメートル)の太陽光発電所を建設するというもの。これに対し地元住民は、プロジェクトの規模や農業への影響、騒音などについて懸念を表明しており、オマハ電力公社との緊張が高まっています。

オマハ電力公社とヨーク郡の住民が対立する背景には、オマハがデータセンターを誘致して税収や雇用を得ている一方で、必要な電力を供給するための施設は遠く離れた農村部に建設するという不公平な構図があります。地元住民のジム・ジャクソン氏は2024年6月の会議で、「このプロジェクトに賛成している人たちも、自分の家の裏庭には施設を置いてほしくないはずです」とコメント。ヨーク郡議会には、他人の土地から半マイル(約0.8km)以内に大規模な太陽光発電施設を設置することを禁止する条例の草案が提出されています。

その一方でオマハ電力公社は、クリーンエネルギー推進派によるバッテリープロジェクトに反対もしています。2024年4月には、エネルギー開発企業のEolianがオマハに設置予定の巨大バッテリーを電力網に接続することを承認しないと結論付けました。オマハ電力公社は、ネブラスカ州は「公営電力」の州であるため、民間企業が電力網に接続することを認めるわけにはいかないと主張しています。

Eolianのアーロン・ズバティCEOは、「オマハのデータセンターのフットプリントが大きく成長していることを考えると、地元の電力会社が意図的に長時間バッテリーによるエネルギー貯蔵資源の追加を妨げていることは不可解です」と述べました。


こうした論争が続く中でノースオマハ地区の住民は、電力会社とハイテク企業はノースオマハ地区を「犠牲地帯」にしていると非難しています。ノースオマハ地区の平均世帯収入は4万7300ドル(約700万円)で、市の他の地域よりもはるかに低く、住民はデータセンター誘致による恩恵もほとんど感じていないとのこと。

ノースオマハ地区の活動家であるアンソニー・ロジャース・ライト氏は、「裕福な白人コミュニティでは絶対に許されないことが起きています。ここの人々は消耗品と見なされています。電力会社がクリーンエネルギーを提供する準備ができていないなら、オマハにデータセンターを誘致するべきではありませんでした」と述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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