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メモ

アメリカの廃れた街にも仮想通貨マイニング企業が進出している


Bitcoin(ビットコイン)などの仮想通貨では、マイニングが規模の大きな「事業」として行われています。マイニングで利益を上げるマイナーにとって最も重要なことはマイニングにかかる電力コストを抑えること。そのため、マイナーは中国やアイスランドなど電気代の安い地域を求めて世界中をさまよいますが、先進国であるアメリカの一部の街にもマイニングに適した「開拓地」があり、目ざといマイナーが進出しているようです。

Bitcoin Miners Flock to New York’s Remote Corners, but Get Chilly Reception - The New York Times
https://www.nytimes.com/2018/09/19/nyregion/bitcoin-mining-new-york-electricity.html

ニューヨーク州北部のマシーナ一帯は、古くは鉄鋼業やアルミ精錬、航空機産業が栄えた街ですが、地域の賃金上昇とともにそれらの産業がすべて域外へ移転したため、今ではニューヨーク州最大の失業率を持つ寂れた地域となっています。

しかし、この活気を失った地域に、2016年ころからCoinmintを中心とする仮想通貨マイナーが進出し始めています。Coinmintがマシーナに目を付けたのは電気料金が圧倒的に安いため。カナダ国境近くのマシーナでは、セントローレンス川のダムを使った水力発電により電気料金がアメリカ屈指の安さとなっていることから、かつては大量の電気が使われるアルミ精錬産業が栄えたという経緯があります。


アルミ産業がなくなってできた「ぽっかり空いた穴」に目を付けたCoinmintのプリアー・リアリー氏は、空前のビットコイン相場上昇の中、マシーナ付近にマイニング拠点を構えることを決意し、プラッツバーグという街を探し当てたとのこと。まだビットコインが世間一般に認知されていないころに典型的な冷蔵庫の2倍の電気を食うマイニング向けマシンを工場跡地に次々と運び込み、マイニングがはじまりました。


ビットコイン市場が成長し続けると、リアリー氏はかつてマンガ本の流通用倉庫だったスペースを買い上げて事業規模を拡大させ、マイニング工場は13メガワットの電力を消費するようになりました。これは、1万軒の家庭用電力需要に匹敵し、プラッツバーグの総電力の10分の1に匹敵する規模だったそうです。


プラッツバーグでは冬の寒さを安い電力を使った暖房器具でしのいできましたが、2017年は大量の電力を消費したCoinmintのマイニング工場のせいで、電力需要が供給を上回り、比較的高価な追加電力の購入が必要となった結果、電気料金が跳ね上がるという結果をまねきました。プラッツバーグで500人の労働者を抱える最大の企業であるMold-Rite Plasticsによると、同社の電気料金は30%も増加したとのこと。Mold-Rite Plasticsのトーマス・ロックニー氏は「彼らがプラッツバーグにいるたった一つの理由は、異常に安い電気料金です。しかし、従業員がたった2人の企業が総合病院よりも多くの電力を消費している」と述べ、困惑を隠しません。


Coinmintはビットコイン相場の上昇のおかげもあって、すでに5000万ドル(約55億円)以上の利益を上げていると推測されています。一部のマイニング事業者が大量の電力を消費することで利益を上げるのに対して、他の住民や企業が電気料金上昇というコストを支払わされている状況について反発は強く、プラッツバーグのコリン・リード市長は2018年3月にCoinmintに対して事業停止処分を下しました。リード市長は仮想通貨が非常に将来有望なビジネスだということは認めつつも、仮想通貨の価値をまだ知らない一般市民が一方的な損失を受けるべきではないと考えています。


プラッツバーグでの操業を一時的にストップされているCoinmintですが、2018年初めにニューヨーク電力公社と交渉して、15メガワットの補助電源の供給契約締結で合意しました。これはかつてマシーナにあったアルミニウム工場とゼネラルモーターズの工場に対して締結された安価な電力供給契約にならったものだとのこと。ただし、契約には「マシーナで150人の雇用を行うこと」という条件が付帯されています。

匿名のオンライン取引のために利用できるデジタル通貨産業の是非ついては、「そもそも電気をマイニングのために消費することが本当に適切かどうか」については疑問の声も上がっています。しかし、マシーナには、「仮想通貨の仕組みについてよくわからないが、歓迎する」という姿勢の住民も少なくないそうです。最大雇用者は刑務所とカジノというマシーナでは、大量の電力を消費して二酸化炭素を排出してデジタル通貨という目に見えないものを生み出す新しい仮想通貨マイニング産業とはいえども、多くの雇用を生み出し街を復興してくれる救世主として期待する声もあるようです。

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