Googleがメディアの記事をAI「Gemini」のトレーニングに使用した件で約410億円もの罰金を競争当局から科される
フランスの独占監視当局であるフランス競争委員会が2024年3月20日に、Googleに2億5000万ユーロ(約410億円)もの罰金を科したことを発表しました。この罰金は、GoogleがマルチモーダルAI「Gemini(旧Bard)」のトレーニングでメディアの記事を使ったにもかかわらず、メディアへの通知や報酬の交渉を適切に行わなかったことで以前の取り決めに違反したためだとのことです。
Related rights: the Autorité fines Google €250 million for non-compliance with some of its commitments made in June 2022 | Autorité de la concurrence
https://www.autoritedelaconcurrence.fr/en/press-release/related-rights-autorite-fines-google-eu250-million-non-compliance-some-its
Un accord afin de régler un différend qui dure depuis trop longtemps
https://blog.google/intl/fr-fr/nouvelles-de-lentreprise/chez-google/accord-regler-differend-qui-dure-depuis-trop-longtemps/
Google (GOOGL) Fined €250 Million in French Clash With News Publishers - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-03-20/google-fined-250-million-in-french-clash-with-news-publishers
Google fined €250m in France for breaching intellectual property deal | Google | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2024/mar/20/google-fined-250m-euros-in-france-for-breaching-intellectual-property-rules
EUでは、大手テクノロジー企業によってメディアの記事がインターネットなどで配信される際、メディア側が「著作隣接権」に基づいた報酬の支払いを求めることが認められています。フランスでは2019年の法改正で著作隣接権に基づく報酬請求が可能となっており、2021年にはフランス競争委員会が「Googleがメディアと誠実な交渉を行わずに命令に違反した」として、Googleに対して5億ユーロ(当時のレートで約650億円)の罰金を科しました。
Googleに650億円の罰金、報道機関とのライセンス交渉に失敗 - GIGAZINE
そしてGoogleは2022年、報道機関と公正な報酬交渉を行うための(PDFファイル)コミットメントをフランス競争委員会に提案し、そのコミットメントの実施を監督する監視受託者としてフランス競争委員会を任命しました。
今回フランス競争委員会は、Googleが自社のAIであるBardおよびGeminiの開発において、2022年のコミットメントを破ったと非難しています。フランス競争委員会によると、GoogleはAIのトレーニングにメディアのコンテンツを使用したにもかかわらず、それをメディアやフランス競争委員会に通知していなかったとのこと。また、他のGoogleサービスにおけるコンテンツの表示に影響を与えることなく、メディアがコンテンツの使用を拒否する技術的解決策を提示しなかったことも問題視されています。
AI開発に関するこれらの行動により、Googleは「透明性・客観性・非差別的な基準に基づいて誠実にメディアと交渉する」「3カ月以内に誠実な報酬オファーを提示する」「メディアが自分たちの権利に対する報酬を適切に評価するために必要な情報を透明性をもって提供する」「交渉がGoogleとメディアのその他の経済関係に影響を与えないように必要な措置を講じる」といった4つのコミットメントに違反したとフランス競争委員会は主張しています。
フランス競争委員会はGoogleが2022年のコミットメントに違反したと結論付け、Google側も事実関係に異議を唱えないことを約束したため、和解手続きの一環として2億5000万ユーロの罰金を科しました。また、Googleはフランス競争委員会によって特定されたコミットメント違反に対処するため、一連の是正措置も提案しているとのことです。
Googleは今回の件に関するブログで、「Googleは欧州著作権指令に基づき、フランスのニュース出版社280社とライセンス契約を結んだ最初で唯一のプラットフォームです。これらの契約は450以上の出版物をカバーし、年間数千万ユーロ(数十億円)を出版社に支払っています。このような進展があったにもかかわらず、フランス競争委員会はGoogleの交渉に関して2億5000万ユーロの罰金を科しました」と述べています。さらに、今回の罰金はフランス競争委員会が提起した問題に不釣り合いに高額であり、AIと著作権を巡る議論の先行きが不透明な中でGoogleが行ってきた努力も十分に考慮されていないと主張して、Googleは罰金について不満があることを表明しました。
・関連記事
文字・音声・画像を同時に処理して人間以上に自然なやりとりができるGPT-4を超える性能のマルチモーダルAI「Gemini」がリリースされる - GIGAZINE
GoogleがBardをGeminiに名称変更&高性能AIモデル「Ultra 1.0」を搭載した「Gemini Advanced」を発表&「Gemini」をスマホで使えるアプリも発表 - GIGAZINE
GoogleがGemini 1.5をリリース、最大100万トークンを処理できて1時間のムービーや70万語のテキストを扱うことが可能 - GIGAZINE
GoogleがマルチモーダルAI「Gemini」の画像生成で間違いが起こった理由を説明 - GIGAZINE
Googleが生成AIのトレーニングに自分のウェブサイトが使われないようにするオプションを発表、もう遅いという指摘も - GIGAZINE
GoogleがチャットボットAI・Bardのトレーニングに携わったデータ会社との契約を終了、データ会社は「事前に知らなかった」 - GIGAZINE
GoogleがRedditの投稿内容をAPIでリアルタイム取得してAIのトレーニングに活用へ、Redditは新規株式公開目前 - GIGAZINE
Googleに650億円の罰金、報道機関とのライセンス交渉に失敗 - GIGAZINE
・関連コンテンツ