GoogleがチャットボットAI・Bardのトレーニングに携わったデータ会社との契約を終了、データ会社は「事前に知らなかった」
Googleが、大規模言語モデルをベースにしたチャットボットAI「Bard」の学習に携わっていたオーストラリアのデータ企業・Appenとの契約を終了しました。Appen側は、オーストラリア証券取引所に提出した書類で「Googleが契約を終了することにしたとは知らなかった」と書いていました。
Customer update and FY23 preliminary results - Appen Limited (ASX:APX) - Listcorp.
https://www.listcorp.com/asx/apx/appen-limited/news/customer-update-and-fy23-preliminary-results-2984290.html
They scored a raise for Google AI ‘raters’. Then they were terminated.
https://www.fastcompany.com/90906492/google-bard-ai-raters-fired
Google cancels contract with an AI data firm that’s helped train Bard - The Verge
https://www.theverge.com/2024/1/23/24048429/google-appen-cancel-contract-ai-training-bard
AppenはGoogleと契約し、検索結果や広告等の品質を評価する業務に携わっていました。近年、AppenはGoogleの開発するBardを初めとする生成AIツールの評価業務も行っており、従業員に対してもっと働くように懇願するようなメールを送っていたそうです。
さらに、AppenはMicrosoftやMeta、AmazonのAIモデルのトレーニングにも協力しているとのこと。Appenの2023年における収益は、全体が2億7300万ドル(約400億円)である中で、Googleだけで8280万ドル(約123億円)を計上。全体収益のおよそ3分の1がGoogleもといAlphabetによるもの。
しかし、Appenで働く従業員は決して高い給料が支払われているわけではなく、従業員の中には時給がわずか10ドル(約1480円)で働いている者もいたそうで、たびたびその労働環境が問題となっていました。
Googleの親会社であるAlphabetの労働組合は2023年1月に、GoogleとAppenに対して、従業員への給料を最低時給15ドル(約2200円)に上げるように請願しています。これを受けて、実際にAppenの従業員の時給は14ドル(2070円)~14.5ドル(約2150円)にまで引き上げられたとのこと。
また、Appenは2023年6月に、職場環境への不満を公の場で口にした契約社員6人を解雇した疑いで、アメリカの労働規制当局から告訴されています。
今回GoogleがAppenとの契約を更新しなかったことは、Appenにとってかなり大きな痛手となります。Googleの広報担当者であるコートネイ・メンシーニ氏は「契約終了は、ベンダーの業務が可能な限り効率的であることを保証するため、Alphabet全体の契約の多くを見直し、調整するための継続的な努力の一環として決定されました」とコメントしています。
ただし、Appen側は提出書類の中で「Googleによる契約解除の決定については事前に知らなかった」と述べており、Googleが契約更新しなかったという事実は寝耳に水だった様子。Appenは「私たちは、Googleとの契約終了の通知を受けて直ちに戦略的優先事項を調整し、2024年2月27日の2023会計年度通期決算でさらなる詳細を発表する予定です」と記しています。
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