花粉症にも効く「ゾレア(オマリズマブ)」が一度に複数の食物アレルギーのリスクを軽減する治療薬として当局から初承認される
アメリカ食品医薬品局(FDA)が2024年2月16日に、食物アレルギー反応の軽減を目的としたゾレア(オマリズマブ)注射を承認したと発表しました。アナフィラキシーやアレルギー反応の緊急治療薬として承認されたわけではなく、また投与されたからといってアレルギーのある食べ物を好きなだけ食べられるようになるわけではありませんが、料理に入っているとは知らずに食べてしまった場合などのリスクを緩和させることが可能になります。
FDA Approves First Medication to Help Reduce Allergic Reactions to Multiple Foods After Accidental Exposure | FDA
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-medication-help-reduce-allergic-reactions-multiple-foods-after-accidental
FDA approves 1st-of-its-kind treatment for severe food allergies | Live Science
https://www.livescience.com/health/medicine-drugs/fda-approves-1st-of-its-kind-treatment-for-severe-food-allergies
FDA expands use of asthma drug Xolair to treat severe food allergies | AP News
https://apnews.com/article/xolair-food-allergy-anaphylaxis-peanut-93448af7cebcc36e2be458cb0c4ef883
ゾレアは、アレルギー反応を引き起こす抗体である免疫グロブリンE(IgE)と結合し、IgEが受容体に結合するのをブロックする「モノクローナル抗体」と呼ばれる種類の薬です。もともとアレルギー性喘息の治療薬として2003年に承認されていましたが、重症の花粉症に対する治療薬としても用いられています。
FDAは今回、成人および1歳以上の小児を対象として、アナフィラキシーを含むI型アレルギー反応、つまりIgEが関与することで引き起こされるアレルギー反応の軽減を目的としたゾレア注射を承認しました。FDAが、複数の種類の食品に対する偶発的なアレルギー反応を軽減する治療薬を承認するのは、これが初めてとのことです。
アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のケリー・D・ストーン博士は、「新しく承認されたゾレアの使用法は、IgE媒介性食物アレルギーを持つ特定の患者に対して、有害なアレルギー反応リスクを軽減する治療の選択肢を提供するものです。食物アレルギーをなくしたり、患者がアレルゲンを自由に摂取したりできるようにするわけではありませんが、繰り返し使用することで偶発的にアレルギー食品に暴露された場合の健康への影響を軽減するのに役立ちます」と話しました。
ゾレアは、アナフィラキシーに対する緊急治療に用いられるエピペン(エピネフリン)とは異なり、アレルゲンに対する耐性を獲得して偶発的に摂取した場合におけるアレルギー反応の重症度を軽減するための予防措置として、2~4週間ごとに注射されます。
承認に先立ち、NIAIDは牛乳、卵、小麦、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、クルミのうち少なくとも1つ以上のアレルギーとピーナッツアレルギー、つまり合計で2つ以上の食物アレルギーを併発している患者168人を対象としたプラセボ対照二重盲検比較試験を実施しました。
その結果、ゾレアを4~5カ月投与された人の68%(110人中75人)が、中等度以上の症状を引き起こすことなくピーナッツプロテイン600g(ピーナッツ2.5個分)を摂取することができたとのこと。
一方、ゾレアを投与された被験者の17%はピーナッツプロテイン100g以上の摂取に耐えられず、許容量に変化が見られなかったことから、「ゾレアによる治療を受けていても、厳格なアレルゲン回避の継続は必要である」と当局は述べています。
伝えられるところによると、アメリカだけで1700万の人々が命にかかわる可能性のある食物アレルギーを患っていると推定されており、患者とその家族はアレルゲンへの不安におびえたり、外食などの人付き合いを諦めたりしています。ゾレアはこれまでも、食物アレルギーに対して適用外で処方されてきましたが、今回の承認でゾレアを必要とする人がより簡単に薬を入手することができるようになりました。
ジョンズ・ホプキンス児童センターの小児アレルギー部門で責任者を務めているロバート・ウッド博士は、「ゾレアでアレルギーからの保護を受けることができれば、アレルギーを持つ多くの人々とその家族の人生が変わるでしょう」と話しました。
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