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エボラ出血熱の画期的な治療薬が2種類も開発される、低ウイルス量で90%近い生存率

by freestocks.org

エボラ出血熱は発熱や筋肉の痛み、おう吐、下痢などの症状をもたらすウイルス性の感染症で、致死率が非常に高いことから、世界中で危険視されています。そんなエボラ出血熱の新しい治療薬が実験において高い効果を発揮し、エボラ出血熱が流行しているコンゴ民主共和国での治療に役立てられると報じられました。

Ebola Is Now Curable. Here’s How the New Treatments Work | WIRED
https://www.wired.com/story/ebola-is-now-curable-heres-how-the-new-treatments-work/


Regeneron’s Ebola Drug Saves Lives in Heart of Congo Outbreak - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-08-12/ebola-drug-shows-promising-results-in-heart-of-congo-outbreak

2019年7月、世界保健機構(WHO)がアフリカ中部・コンゴ民主共和国でのエボラ出血熱の流行について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)を宣言しました。コンゴ民主共和国では2018年8月以来エボラ出血熱の感染が拡大しており、記事作成時点では2800人以上が感染し、1800人以上が死亡したとみられています。

エボラ出血熱の死者が1600人を超えたコンゴでの流行について緊急事態宣言、国際的な感染拡大が懸念される - GIGAZINE


そんな中、コンゴ民主共和国ではWHOやアメリカ国立衛生研究所の協力のもと、医師や研究者らがエボラ出血熱に対する新薬の臨床実験を行っています。臨床実験は2018年11月から、エボラ出血熱の感染が深刻なコンゴ民主共和国東部にある4つの治療センターで行われ、さまざまな種類の治療薬を患者に投与して生存率などのデータを取ってきました。

臨床実験に使用された薬は、従来のエボラ出血熱治療薬であるZmappremdesivirの2種類と、比較として用意されたRegeneron Pharmaceuticalsという製薬会社が開発したREGN-EB3アメリカ国立アレルギー・感染症研究所が開発したmAb114という2種類の新薬でした。

合計で681人の患者に投与した実験データによると、従来の治療薬であるZmappが投与された患者の死亡率は49%、remdesivirを投与された患者では53%の死亡率。これは治療を受けなかった患者の死亡率75%を大きく改善するものでした。ところが、REGN-EB3で治療された患者の死亡率は29%、mAb114では34%と、2つの新薬がZmappよりもはるかに高い治療効果を発揮することが判明したとのこと。

さらに、体内のウイルス量が少なく感染後間もない段階の患者に対しては、REGN-EB3による治療を受けた患者の死亡率がわずか6%、mAb114では11%にまで低下。本来は725人の患者に対する臨床実験が計画されていましたが、REGN-EB3とmAb114にはすでに十分な効果が確認されたとして、今後の患者には2種類の新薬を用いて治療にあたると説明しています。

by Pixabay

もともとエボラ出血熱は死亡率の高い感染症でしたが、近年では感染者に治療を施さなかった場合の死亡率がさらに上昇しており、多くの患者は地域社会の中で治療を受けずに死亡しているとのこと。mAb114の開発を行ったアメリカ国立アレルギー・感染症研究所で所長を務めるアンソニー・ファウチ氏は、「少し前までは治療のしようがなかった病気に対し、私たちは治療法を手に入れました」「エボラ出血熱患者の生存意欲を高めることができるかもしれませんし、治療に対する意欲を高めるかもしれません」とコメントしています。

コンゴ民主共和国の国立生物医学研究所の所長であり、臨床実験の監督を務めたジャン・ジャック・ムエンベ氏は、「この進歩は過去であれば致命的だった何千人もの命を救う影響があります」と述べ、すでにエボラ出血熱は治らない病気ではないと主張しました。

by bhossfeld

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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