サイエンス

「ワクチンを接種する腕を毎回変えること」が新型コロナワクチンの効き目をブーストするという研究結果


ワクチンはさまざまな感染症の発症や重症化を防ぐために用いられており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時も迅速にワクチンが開発され、多くの人々の命を救いました。ワクチンを接種する方法が効果に及ぼす影響を調べた新たな研究で、「ワクチンを接種回ごとに異なる腕に投与すると効き目が増す」という可能性が示されました。

JCI - Contralateral second dose improves antibody responses to a two-dose mRNA vaccination regimen
https://www.jci.org/articles/view/176411


Switching arms improves effectiveness of two-dose vaccinations, OHSU study suggests | OHSU News
https://news.ohsu.edu/2024/02/06/switching-arms-improves-effectiveness-of-two-dose-vaccinations-ohsu-study-suggests

One Simple Change May Dramatically Boost The Effect of COVID-19 Vaccines : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/one-simple-change-may-dramatically-boost-the-effect-of-covid-19-vaccines

ワクチンは無毒化あるいは弱毒化した抗原や病原体の遺伝子を持つタンパク質を投与することで、体内で病原体への抗体を産生させる医薬品です。18世紀末に天然痘のワクチンである種痘が作られて以降、人類はさまざまな感染症のワクチンを開発してきました。

また、投与するワクチンが最大の効果をもたらすように、研究者らは投与する量やワクチンの種類、投与する方法についてさまざまな研究を行ってきました。ところが、「ワクチンを接種する腕」が効き目に及ぼす影響については、これまでほとんど研究されてこなかったとのこと。

そこでオレゴン健康科学大学の研究チームは、ワクチンを接種する腕を接種回ごとに変えると、効き目にどのような影響が出るのかを調査しました。論文の共著者でオレゴン健康科学大学の感染症専門医であるマルセル・カーリン博士は、「この質問はあまり詳しく研究されていなかったので、調べてみることにしました」と語っています。


研究チームはCOVID-19のパンデミック初期に実験を開始し、947人の被験者を「1回目と2回目で同じ腕にワクチン接種を受けるグループ」あるいは「1回目と2回目で別の腕にワクチン接種を受けるグループ」へ無作為に割り当てました。そして2回のワクチン接種が完了した後、研究チームは定期的に被験者の血液サンプルを採取して、体内の抗体がどれほど上昇しているのかを分析しました。

実験の結果、2回目接種から2週間後の時点では、2つのグループに現れた免疫反応に違いはありませんでした。ところが、2回目接種から4週間後の時点では、2回目で別の腕にワクチン接種を受けたグループの方が、新型コロナウイルスの抗体が1.4倍も多くなりました。また、この影響は2回目接種から13カ月以上も持続したことも報告されています。


一体なぜ接種回ごとに異なる腕にワクチンを接種することで抗体が増えるのかは不明ですが、研究チームは各腕の異なるリンパ節で免疫反応が活性化されることが、免疫反応を強化しているのではないかと推測しています。

カーリン氏は、「これは私たちが発見した中でも重要なもののひとつであることが判明しました。おそらく、COVID-19ワクチンに限った話ではないでしょう。私たちは重要な免疫学的機能を見ているのかもしれません」とコメントし、ワクチンを接種する腕を毎回変えることで人命を救える可能性があると主張しました。


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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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