サイエンス

新型コロナワクチンを筋肉注射から皮下注射に変えるだけで効果は維持しつつ副反応を軽減できるかもしれない


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大や病床圧迫を避けるためには、可能な限り大勢の人々がCOVID-19ワクチンを接種することが重要です。ところが、COVID-19ワクチンには接種部位の痛みや発熱、疲労、関節痛といった副反応が出る人が多いため、「副反応がつらいから3回目の接種(ブースター接種)は受けたくない」と考える人もいます。そんな中、シンガポールのデューク-NUSメディカルスクールの研究チームが、「注射の方法を変えるだけでワクチンの副反応を軽減できる可能性がある」とする研究結果を発表しました。

Adverse effects following anti–COVID-19 vaccination with mRNA-based BNT162b2 are alleviated by altering the route of administration and correlate with baseline enrichment of T and NK cell genes | PLOS Biology
https://doi.org/10.1371/journal.pbio.3001643


Changing the way we jab might help stop post-vax fatigue - Scimex
https://www.scimex.org/newsfeed/changing-the-way-we-jab-might-help-stop-post-vax-fatigue

A Tiny Change in Jab Strategy Might Reduce COVID-19 Vaccine Fatigue, Mouse Study Finds
https://www.sciencealert.com/different-technique-could-reduce-covid-19-vaccine-fatigue-mouse-study-suggests

COVID-19ワクチン接種後の副反応は人々がワクチン接種をためらう要因になっており、記事作成時点では日本で2回接種を完了した人は全人口の80%に達している一方で、ブースター接種を完了した人は60%弱にとどまっています。実際、「3回目の副反応はつらい」という体験談はインターネットやSNSで多数報告されており、副反応を軽減する方法は接種率向上の助けになると考えられます。

そこでデューク-NUSメディカルスクールのウイルス学教授であるEng Eong Ooi氏らの研究チームは、ファイザーワクチンの接種を受けた175人の医療従事者から採取した血液サンプルを分析しました。これにより、ワクチン接種後に中度~重度の副反応を経験した人々では、免疫系における主要な細胞であるT細胞ナチュラルキラーT細胞の活性化に関する遺伝子が多く発現していることが判明したとのこと。免疫応答が強いということはワクチン接種後の炎症反応が強く、副反応が重いことを意味しています。

続いて研究チームは、「ワクチンの接種方法によって副反応の重度が変わるのかどうか」を調べるため、マウスを用いた実験を行いました。COVID-19ワクチンを含むほとんどのワクチンは、皮下脂肪の奥にある筋肉組織へワクチンを注射する筋肉注射を採用しています。これは、病原体を認識する多くの免疫細胞が筋肉組織に存在しており、物質輸送に役立つ血管も豊富に存在しているためです。筋肉の免疫細胞はワクチン中の抗原を素早く取り込み、最も近いリンパ節(肩への接種であれば脇の下)へ送達することが可能です。

一方、皮下の脂肪層には免疫細胞や血管が少ないため、皮下注射では免疫細胞が素早く抗原を取り込むことができず、リンパ節への供給も遅くなるため、ワクチン接種の効果が筋肉注射と比較して弱いと考えられています。実際にB型肝炎狂犬病などのワクチンで皮下注射を行うと、十分な効果が得られないとの研究結果があります。


研究チームはマウスを「ファイザーワクチンを筋肉注射するグループ」と「ファイザーワクチンを皮下注射するグループ」に分けて、それぞれ接種後の免疫応答やCOVID-19からの保護効果について分析しました。

その結果、皮下接種を受けたマウスでも筋肉注射を受けたマウスと同等かそれ以上の保護効果が確認された上に、炎症反応を示す遺伝子発現が少ないことが判明しました。つまり、COVID-19ワクチンを筋肉注射から皮下注射に切り替えることで、ワクチンの効果を維持しつつ副反応を減らせるかもしれないというわけです。

Ooi氏は、「この研究はmRNAワクチン接種後に多くの人々が経験した副反応の分子的基盤について、初めての知見を提供するものです。この発見がワクチン接種に伴う副反応の裏付けとなるメカニズムを理解するためのさらなる研究を推し進め、より忍容性の高いワクチン開発に貢献することを期待しています」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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