ワクチンの副反応が「良いもの」である理由とは?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が一部の国でスタートしており、日本でも医療従事者向けの早期接種が2021年の2月中旬頃から始まります。ワクチン接種には熱が出るなどの副反応が存在しますが、これは「良いものである」とニュースメディアVoxのYouTubeチャンネルが解説しています。
Vaccine side effects are actually a good thing - YouTube
ワクチンを一般消費者に届けるには、製薬会社がワクチンを開発し、その効果を試験で調べ、認証機関からの承認を受け、実際に市場に届けるものを製造する……といった複数のプロセスを経ます。この中で最も重要なのが「ヒトによる試験」です。
ヒトを対象にしたワクチンの試験には、3つのフェーズが存在しています。3つのフェーズは、まず初めにワクチンの副反応を研究する第I相試験、次にワクチンの有効性を精査する第II相試験、最後にワクチンの有効性と安全性について大規模な調査を行う第III相試験と続きます。
ワクチン試験における最初のステップである第I相試験は、治験薬や医薬品などの薬物を投与された被験者・患者に生じる好ましくない、または意図しないあらゆる医療上の事柄を指す「有害事象」を調査するというプロセスです。
アメリカの製薬大手であるファイザーとバイオテクノロジー企業のBioNTechが開発した新型コロナウイルスワクチンの「BNT162b2」における第I相試験を主導したKirsten Lyke博士によると、「どのようなワクチンにも副反応は存在する」とのこと。
しかし、一般的にはワクチンの副反応について「何も恐れることはない」というのがLyke博士の意見です。例えばもっとも一般的なワクチンであるインフルエンザワクチンの場合、痛み・疲労・頭痛など複数の副反応を引き起こす可能性があります。
これに対して、新型コロナウイルスワクチンでも同じような副反応が生じます。
そして、これらの副反応が生じる可能性は2度目のワクチン接種時の方が高い模様。新型コロナウイルスワクチンの副反応としては、「腕の痛み」「疲労」「頭痛」などが挙げられています。
当然、副反応が起こることはまったくもって普通のこと。「ワクチンの副反応がなぜ起こるのかを理解すれば、ワクチンを接種して『良かった』と思えるかもしれません」とVoxは語っています。
ワクチンの副反応について語るには、まず初めに人体の免疫システムについて話をしなければいけません。免疫システムは、「体内の様々な細胞やタンパク質の巨大なネットワーク」と言い換えることができます。
免疫システムには、体内に侵入してきたウイルスやバクテリアと戦う白血球、反応を整理する細胞間コミュニケーション、人体にとって害となるものを識別する抗体などが含まれます。
例えばウイルスが人体に侵入した場合、免疫システムがウイルスに反撃します。体は血流を増やし、ウイルスを攻撃するための免疫システムをより多く循環させます。これにより体温が上昇する可能性がありますが、これは体内に侵入したウイルスを排除するために免疫システムが機能していることを示す反応のひとつであるため、心配する必要はありません。
白血球はウイルスを破壊したあとに、抗体を産生します。これは将来的に再びウイルスが体内に侵入した際に、ウイルスを識別して攻撃するための免疫力を得るプロセスの一環です。
この反応が風邪を引いた際に感じる多くの症状を引き起こします。つまり、風邪を引き起こすウイルスが「熱」「鼻水」「体の痛み」といった症状を引き起こすのではなく、免疫システムがウイルスと戦っているためこれらの反応が出るわけです。
そして、感染症を発症しない程度にウイルスに感染して免疫システムを作動させようというのが、ワクチンです。ほとんどのワクチンは弱った病原体や死んだ病原体、またはその一部でできています。新型コロナウイルスワクチンの場合は、ウイルスの一部の遺伝情報をDNAやmRNAに代えて使用します。
ワクチンに使用されるこれらの遺伝情報は人体には無害ですが、免疫システムはこれらを検出し、実際のウイルスに対して起こすのと同じような反応を示します。
つまり、新型コロナウイルスワクチンは体内に新型コロナウイルスに対する抗体を産生し、実際のウイルスに感染した際と同じような免疫力を獲得できるように設計されているわけです。
中でもmRNAを用いた新型コロナウイルスワクチンは特に優れており、免疫系を刺激するのに非常に優れています。そのため、mRNAを用いた新型コロナウイルスワクチンである「BNT162b2」は、95%という非常に高い有効性を示しているわけです。
mRNAは免疫システムを活性化させるのに非常に優れているため、ワクチンを接種した部位の血流が増加します。これが注射を挿した部分が痛む理由です。
体温が上昇したり悪寒を感じたりといった副反応について、専門家は「良いこと」だと考えるべきと強調しています。ワクチン接種でよくある反応としては、「発熱」や「倦怠感」などが挙げられますが、こういった症状は軽度のものから中度のものがほとんどです。こういった副反応は保健当局により、最も症状の軽い副反応としてカテゴリ分けされており、1日か2日程度で治るもの。重度の副反応として分類されるものは、病院にかからなければならないようなレベルのものです。
新型コロナウイルスワクチンの場合、第I相試験と第II相試験では重度の疲労感や筋肉痛が数件確認された程度で、重度の副反応はほとんど確認されていません。
2度のワクチン接種の場合でもそれは同様。そもそもこの種のワクチンの場合、危険性があるものが一般向けに使用されることはありません。
ワクチンによる恒久的な重篤症状は受け入れられないものであり、受け入れるべきものではありません。「新型コロナウイルスワクチンを2度接種したあとに死亡した」というニュースや……
「重篤なアレルギー反応の既往歴を持つ人が新型コロナウイルスワクチンを接種して、重度のアレルギー反応を起こした」といったニュースも報じられていますが、こういった症状はワクチン以外が原因であったことが明らかになっています。
実際、治験の中で何百万回もワクチン接種が行われていますが、その中で死亡者は1人も出ていません。同じように、何千人もの人々を対象とした対照研究の中でも、ワクチン接種による死亡例は報告されていません。
そもそも、新型コロナウイルスワクチンによって「COVID-19を発症して入院した」「COVID-19を発症して死亡した」といった事例もこれまで一切報告されていないという点を認識しておくことが重要です。
ウイルスを減らしたいと考える場合、できるだけ多くの人々がワクチンを接種する必要があります。ワクチン接種はCOVID-19のパンデミックから脱出するための方法です。BNT162b2に限らず、ワクチンを接種すれば1日か2日ほど副反応に苦しめられる可能性がありますが、「ワクチンについて研究してきた研究者や科学者たちは、最も熱心にワクチンの接種を望んでいます。このことこそが新型コロナウイルスワクチンが安全である何よりの証明のはずです」とLyke博士は語っています。
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