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新型コロナワクチンに関する「気にしなくていい4つの懸念事項」とは?


ファイザーとBioNTech、そしてModernaが開発した新型コロナウイルスワクチンはすでにアメリカやヨーロッパで接種が行われており、日本でも2月下旬から医療従事者を優先して接種が始まると想定されています。その一方でワクチンに対するさまざまな懸念の声も上がっており、西オーストラリア大学のArcha Fox准教授が、新型コロナウイルスワクチンに関する「気にしなくていい4つの懸念事項」について解説しています。

Not sure about the Pfizer vaccine, now it's been approved in Australia? You can scratch these 4 concerns straight off your list
https://theconversation.com/not-sure-about-the-pfizer-vaccine-now-its-been-approved-in-australia-you-can-scratch-these-4-concerns-straight-off-your-list-153719

すでに接種が行われている新型コロナウイルスワクチンは、体内でタンパク質に翻訳される情報を持ったメッセンジャーRNAを使用したmRNAワクチンです。これはヒトを対象にした初のmRNAワクチンであり、一部の人々は以下のような懸念をSNSなどで表明しているとのこと。

◆1:ワクチンが人々のDNAに入り込んでゲノムを変えてしまうのではないか?
ゲノムは細胞が機能するために必要な遺伝情報であり、人間ではDNA上に保存されています。RNAとDNAは異なるタイプの分子であるため、mRNAワクチンを接種してもRNAがゲノムの一部になることは不可能です。

Fox氏は「mRNAワクチンを接種するとゲノムが書き換えられるのではないか?」という懸念が生じた理由について、自身のRNAから逆転写酵素を用いてDNAを合成し、宿主細胞のDNAに組み込むことで増殖するレトロウイルスが元で発生した可能性があると指摘。確かにレトロウイルスは自身のRNA情報を宿主細胞のDNAに挿入できるものの、新型コロナウイルスはレトロウイルスではない上に、新型コロナウイルスワクチンはウイルスを使わないワクチンであるため、DNAが書き換えられることはありません。


◆2:ワクチン接種により人体がインターネットに接続されるのではないか?
ファイザーとBioNTech、Modernaが開発したワクチンに含まれるmRNAは脂質の液滴でコーティングされており、このコーティングによってmRNAが細胞に入り込みやすくなっています。一方、mRNAワクチンを開発するいくつかの企業ではワクチンをヒドロゲルで包むことで、ゆっくりと細胞に分散させる方法を模索しています。

陰謀論の中には、「ヒドロゲルを使用して人体をインターネットに接続する電子インプラントが作成されている」というものがあり、これがmRNAワクチンと結びついて「ワクチン接種によって人体がインターネットに接続される」という説が生まれたとのこと。なお、既存のmRNAワクチンはヒドロゲルを用いておらず、たとえヒドロゲルを使っていてもワクチン接種で人体がインターネットに接続される危険はありません。


◆3:ワクチン接種は自己免疫疾患を引き起こすのではないか?
関節炎や多発性硬化症などの自己免疫疾患は、免疫系が自分の細胞を攻撃する慢性疾患です。mRNAワクチンによって自己免疫疾患が引き起こされる可能性を示す証拠はない上に、mRNAは細胞内において非常に短命であるため、慢性的な自己免疫反応を引き起こすとは考えにくいとFox氏は指摘。また、「mRNAワクチンの接種によって自己免疫疾患が引き起こされるのではないか?」という懸念とは裏腹に、mRNAワクチンは自己免疫疾患を治療する有望な手法とみられています

◆4:ワクチン接種によって不妊になるのではないか?
Twitter上では「新型コロナウイルスへの抗体が交差反応し、免疫系が胎盤内のタンパク質を攻撃して不妊になってしまう」という説が議論されているとのこと。この説の根拠となるのが、新型コロナウイルスワクチンが標的としているスパイクタンパク質と人間の胎盤に存在するsyncitin-1というタンパク質が、類似するアミノ酸配列を持っているという点です。

しかし、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質とsyncitin-1の類似領域は非常に短く、せいぜいアミノ酸3~4個分だそうで、人間の免疫系はこの程度の類似を無視する仕組みになっています。もし新型コロナウイルスのスパイクタンパク質とsyncitin-1で交差反応が生じるならば、かぜの原因となるさまざまなウイルスに感染しただけで、多くの女性が不妊になってしまうとFox氏は指摘しました。


なお、新型コロナウイルスワクチンの接種によって得られる免疫は少なくとも8カ月間は持続するとみられており、感染力や致死率が高い可能性があるイギリスの変異種についても、Modernaは対応するワクチンを開発すると発表しています

新型コロナウイルス感染症によってアメリカの平均寿命が1年以上も縮まるとの研究結果もあることから、多くの人々がワクチンを接種することは非常に重要です。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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