新型コロナの影響でアメリカの平均寿命が1年以上も縮むとの研究結果
アメリカは新型コロナウイルスの感染者数が最も多い国であり、記事作成時点での感染者数は2396万人に達し、死亡者数は40万人近くに上っています。2021年1月14日に米国科学アカデミー紀要に掲載された論文では、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって2020年のアメリカにおける平均寿命(0歳時点での平均余命)が1年以上減少する」と予測されました。
Reductions in 2020 US life expectancy due to COVID-19 and the disproportionate impact on the Black and Latino populations | PNAS
https://www.pnas.org/content/118/5/e2014746118
COVID-19 reduced U.S. life expectancy, especially among Black and Latino populations - Press Room USC
https://pressroom.usc.edu/covid-19-reduced-u-s-life-expectancy-especially-among-black-and-latino-populations/
Study projects coronavirus pandemic will reduce US life expectancy in 2020 - CNN
https://edition.cnn.com/2021/01/15/health/coronavirus-us-life-expectancy/index.html
COVID-19はアメリカ全土で猛威を振るっており、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は「COVID-19は2020年のアメリカにおける3番目に多い死因となった」と発表しています。CDCによると、2020年は例年と比べて死亡者数が31万6252人~43万1792人多いそうです。
そこで、南カリフォルニア大学で博士研究員を務めるTheresa Andrasfay氏とプリンストン大学のNoreen Goldman教授は、COVID-19のパンデミックが発生しなかった場合のシナリオと、ワシントン大学の保健指標評価研究所が発表したCOVID-19の死亡予測に関するシナリオを分析し、「2020年のアメリカにおける65歳の平均余命および平均寿命」を算出しました。分析の結果、COVID-19の影響によって2020年のアメリカでは65歳の人の平均余命が0.87年減少し、平均寿命は1.13年減少して77.48歳になるという予測になったとのこと。
アメリカの平均寿命は20世紀後半から大幅に増加しており、1959年には69.9歳だったのが2016年には78.9歳になりました。ところが、近年では平均寿命の増加が頭打ちになっているそうで、2014年~2017年にかけて薬物の過剰摂取や自殺、アルコール関連の病気、肥満といった要因によって平均寿命は0.1年ずつ縮んでいます。
しかし、COVID-19のパンデミックによる1.13年という平均寿命の低下は過去40年で最大のものであり、アメリカの平均寿命は2003年以来最悪の水準になるとのこと。今回の研究では平均寿命の低下率が人種によって違うことも示されており、黒人の平均寿命は2.10年減少して72.78歳、ラテン系では3.05年減少して78.77歳となった一方、白人では0.68年減少して77.84歳という結果になりました。
研究チームは平均寿命の低下における人種差について、「黒人とラテン系の人々における平均寿命の低下は、白人の3~4倍と推定されています。その結果、COVID-19は平均寿命のギャップを埋めるための過去10年の進歩をひっくり返します」と述べています。また、ラテン系の平均所得と教育レベルが白人よりも低いにもかかわらず平均寿命が白人より長いことは「ラテン系のパラドックス」として知られてきましたが、COVID-19によってラテン系の平均寿命が大幅に減少したことで白人との差が縮んでいる点も指摘しました。
黒人とラテン系アメリカ人の平均余命がCOVID-19により過度な影響を受けていることについて、Andrasfay氏は「職場や大きな家族との接触を通じたより多くの曝露(ばくろ)と、より貧弱な医療を受けていることが、多くの感染と悪い結果につながっている可能性があります」とコメント。黒人とラテン系アメリカ人は社会経済的な不平等により、COVID-19の感染および重症化リスクが高いと主張しました。
Goldman氏は、「黒人とラテン系アメリカ人における平均余命の大幅な短縮の一部は、これらのグループにおける若年齢層の死亡率が高いことに起因しています」と指摘し、COVID-19のリスクに対して自覚がない若者に対する保護プログラムの重要性を訴えました。
なお、2020年末には欧米諸国で新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されていますが、研究チームは「2021年になれば平均余命が元通りになる」とは予想していません。「私たちは死亡率を悪化させかねない健康と経済への影響が今後数年にわたって続くと予想しており、2021年の平均余命にも引き続き影響があるだろうと予想しています」と、Andrasfay氏は述べました。
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