AmazonがiRobotの買収を中止、iRobotは従業員の31%を解雇&CEO辞任
ロボット掃除機「ルンバ」のメーカーであるiRobotをAmazonが買収しようとしていた件について、規制当局からの承認を得られなかったことで、AmazonとiRobotの両社は買収計画を中止することで合意したことを発表しました。さらにiRobotの創業者で取締役会長兼CEOであるコリン・アングル氏の辞任と従業員約350人の解雇が発表されました。
Amazon-and-iRobot-Agree-to-Terminate-Pending-Acquisition
https://press.aboutamazon.com/2024/1/amazon-and-irobot-agree-to-terminate-pending-acquisition
iRobot Announces Operational Restructuring Plan to Position Company for the Future | iRobot Corporation
https://investor.irobot.com/news-releases/news-release-details/irobot-announces-operational-restructuring-plan-position-company
Amazon terminates iRobot deal, Roomba maker to lay off 31% of staff
https://www.cnbc.com/2024/01/29/amazon-terminates-irobot-deal-vacuum-maker-to-lay-off-31percent-of-staff.html
AmazonはiRobotを約17億ドル(約2500億円)で買収することを2022年8月に発表しました。
Amazonが約2300億円でロボット掃除機「ルンバ」開発のiRobotを買収へ - GIGAZINE
しかし、AmazonによるiRobot買収計画に対し、EUの欧州委員会が「Amazonが検索結果などで競合製品の知名度を下げたり、上場を廃止したりする可能性がある」として待ったをかける見通しであることが報じられました。EUがAmazonによるiRobot買収を阻止するというニュースと事前報道を受けて、iRobotの株価が急落し、企業時価総額が4億ドル(約590億円)未満にまで下がったと経済メディアのCNBCは報じています。
Amazonがロボット掃除機ルンバのメーカー「iRobot」を2500億円で買収する計画をEUが阻止するとの報道 - GIGAZINE
欧州委員会のマルグレーテ・ベステアー執行副委員長は「我々の綿密な調査により、AmazonがiRobotを買収することで、iRobotの競合企業をAmazonから締め出す可能性があるということが事前に示されました。Amazonによる市場支配は、ロボット掃除機市場での競争を制限し、価格の上昇、品質の低下、消費者にとってのインベーションの減少につながった可能性があります」と述べました。
Amazonのシニアヴァイスプレジデント兼法務顧問であるデビッド・ザポルスキー氏は「AmazonによるiRobot買収が進められなかったことを残念に思います」と述べ、「不当で不釣り合いな規制は、買収を成功への道の1つと考える起業家の意欲をそぎ、まさに規制当局が保護しようとする消費者と競争の両方に悪影響を及ぼします」と、規制当局を非難するコメントを発表しました。
iRobotの創設者であるアングル氏は「Amazonとの契約終了は残念ですが、iRobotは生活をより良くし、世界中の顧客に愛される思慮深いロボットとインテリジェントホームイノベーションを構築し続けることに重点を置き、未来に向かって取り組んでいきます」と述べています。
AmazonとiRobotの合併計画が終了するにあたり、Amazonは以前に合意した9400万ドル(約138億5000万円)の手数料を支払うことになります。また、AmazonとiRobotが買収計画の終了を発表した直後、iRobotの株価は10%下落しました。
そして、iRobotはAmazonによる買収計画の終了を受けて業務再構築計画の実施を発表。アングル氏は取締役会長兼CEOを辞任し、執行副社長兼最高法務責任者であるグレン・ワインスタイン氏が暫定CEOに、筆頭独立取締役であるアンドリュー・ミラー氏が取締役会長に任命されました。
また、iRobotは研究開発費を約30%削減し、記事作成時点で進めている製品ロードマップのうち、空気清浄機・ロボット芝刈り機・教育関連などフロアケア以外の製品やサービスの開発を一時停止すること、さらに全従業員の31%に相当する約350人を2024年3月30日付けで解雇することを明らかにしました。
アンドリュー・ミラー取締役会長は「iRobotはこれからも、消費者が自宅をより手入れしやすくより健康に暮らせる場所にするための最先端のロボット・フロアケア・ソリューション群を構築し続けることができると、取締役会と私は信じています。しかし、これを実現させるためには、独立企業としての将来を見据え、事業モデルとコスト構造を迅速に整える必要があります。従業員に影響を与える決断は難しいものですが、より持続可能なビジネスモデルを構築し、収益性に改めて重点を置いて前進しなければなりません。本日発表する措置により、持続可能な価値創造のための新たな戦略的道筋を描くことができると確信しています」とコメントしました。
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