AmazonのiRobot買収について「市場の競争を制限する可能性がある」とEUの規制当局が発表
2022年8月、Amazonが約17億ドル(約2500億円)でロボット掃除機「ルンバ」を開発するiRobotの買収を発表しました。そんなAmazonによるiRobot買収に対して、EUの政策執行機関である欧州委員会が「競争上の懸念」と正式に買収に反対する声明を発表しています。
Amazon Statement of Objections
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_5990
Amazon’s iRobot purchase sucks up formal competition concerns in EU | TechCrunch
https://techcrunch.com/2023/11/27/eu-amazon-irobot-statement-of-objections/
2022年8月、Amazonは約17億ドルでiRobotを買収すると発表しました。
Amazonが約2300億円でロボット掃除機「ルンバ」開発のiRobotを買収へ - GIGAZINE
買収当初から、AmazonはAstroやEchoといった家庭用ロボットやIoT製品を販売しているため、iRobotの買収が成立すればAmazonにとって最大のライバルを市場から排除することにつながることが指摘されていました。
Amazonによるルンバ開発元の買収は「最も危険で脅迫的な買収になる可能性がある」と有識者が警告 - GIGAZINE
その後、イギリスの競争・市場庁がAmazonによるiRobotの調査を開始し、それに続く形でEUの欧州委員会も買収が独占禁止法違反につながる可能性があるとして、調査を開始しています。当初、欧州委員会はAmazonがiRobotを買収することで、ロボット掃除機市場における競争を制限してしまう可能性を挙げていました。なお、世界中の規制当局が買収に待ったをかけた結果、iRobotの負債が増加し、Amazonは買収額を15%引き下げています。
Amazonによるロボット掃除機「ルンバ」開発元のiRobot買収が独占禁止法違反の可能性があるとして欧州委員会が調査開始 - GIGAZINE
数カ月におよぶ綿密な調査を経て、欧州委員会はAmazonによるiRobot買収について「競争上の懸念がある」と正式に発表しました。この声明はEU側がAmazonに対して正式に買収中止を求めるものではありませんが、欧州委員会の抱く競争上の懸念を払拭するための解決策をAmazonとiRobotに提示するよう求める可能性があります。
欧州委員会はiRobot買収が成立すると、Amazonは競合他社がマーケットプレイスでロボット掃除機を販売することを阻止する戦略を取ったり、マーケットプレイスにおけるオーガニック検索結果や広告でiRobotのライバル企業製品の表示頻度を意図的に下げたり、ライバル製品の広告・販売コストを意図的に引き上げたりする可能性などを懸念しています。
欧州委員会はAmazonのマーケットプレイスについて、フランス・ドイツ・イタリア・スペインにおいてロボット掃除機を販売する上で特に重要な販路となっているとして、AmazonがiRobotを買収することに成功すれば、意図的にライバルを市場から締め出すことが可能となってしまうと言及。欧州委員会は「これらの国のロボット掃除機ユーザーは、製品の発見という点でも、最終的な購入決定という点でも、特にAmazonに依存しています」と指摘しました。
これに加えて、欧州委員会は「マーケットプレイスでiRobotのライバル企業製品の販売数が減少することで失う収益よりも、iRobotのロボット掃除機の販売台数が増えることで得られる収益の方が多くなる可能性があります。この収益にはiRobotユーザーから収集されるユーザーデータによる収益も含まれます」とも言及しています。
上記の理由からAmazonがサードパーティー製ロボット掃除機の販売をマーケットプレイスで制限するようなことがあれば、ロボット掃除機市場の競争が制限され、製品の価格高騰や品質低下、消費者のためのイノベーションの減少につながりかねないと欧州委員会は懸念しています。なお、これらの懸念はAmazonとiRobotが欧州委員会に提供した内部文書を分析し、ロボット掃除機市場やその他のスマートホーム機器のサプライヤー、オンライン販売チャネルのプロバイダーといった市場参加者の意見を収集しながら「市場と取引の潜在的な影響を理解するための広範な調査」を実施した結果出されたものだと、欧州委員会は説明しています。
この報道を受け、iRobotの株価は20%近く下落しました。
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