サイエンス

宇宙人はブラックホールを「量子コンピューター」として使っているかもしれない


ブラックホールは巨大な恒星が自身の重力に耐えきれず崩壊してできる、光すら脱出できないほど超高密度かつ大質量の天体だとされています。そんなブラックホールについて、物理学者のジア・ドヴァリ氏とザラ・オスマノフ氏は「進歩した技術を持つ宇宙人は、ブラックホールを量子コンピュータのハードウェアとして使っているかもしれない」と示唆しています。

Black holes as tools for quantum computing by advanced extraterrestrial civilizations | International Journal of Astrobiology | Cambridge Core
https://www.cambridge.org/core/journals/international-journal-of-astrobiology/article/black-holes-as-tools-for-quantum-computing-by-advanced-extraterrestrial-civilizations/08675176C9EF974F0A5A4A1D5AC81C90


SETI Research Say Aliens Could Use Black Holes as Quantum Computers
https://www.inverse.com/science/aliens-black-holes-quantum-computer-seti-hawking-radiation

光さえも逃れることのできないブラックホールには「事象の地平面」と呼ばれる特異な境界が広がっているとされています。そこでは、ブラックホールが「ホーキング放射」と呼ばれる光や熱の放出を行い、ブラックホールの質量が徐々に蒸発していく現象が起こると考えられています。

ホーキング放射によって放出される光や熱には、ブラックホールに取り込まれた物質や光に関する情報が含まれているかについて、物理学者の間で長年議論が行われてきました。一部の物理学者は、これらの光や熱について「紙を燃やした後の灰のようなもので、たしかに情報は含まれているが、その情報を取り出すことは不可能だ」という考えを提示しています。

一方で、一部の物理学者は「ホーキング放射で放出される光や熱の情報を取り出すことは可能」と主張。また、「ブラックホールが放出するホーキング放射の性質は、取り込んだ物質や光の性質に大きく関係しています。つまり、ブラックホールは落下する全ての物質に対して複雑な計算を行い、その結果をホーキング放射として出力している可能性があります」と推測しています。


さらに、ドヴァリ氏とオスマノフ氏は「進歩した技術を持つエイリアンは、量子コンピューターの基盤としてブラックホールを使用している可能性があります」と示唆しています。また、両氏は「高度な文明を持つエイリアンが、ブラックホールを製造した際に使用された高出力の粒子加速器の光を我々は見つけることができるかもしれません」と述べました。

「1」「0」という2進数で情報をコード化する一般的なコンピューターと異なり、量子コンピューターは、量子ビットという単位を用いることで、「1」「0」もしくは「その両方」という条件で情報を保存することで、通常のコンピューターよりもはるかに多くのデータを保存できるほか、より複雑な計算が可能になるとされています。

しかし、量子コンピューターについては実用化に向けた研究などが行われている段階で、実際に量子コンピューターを導入して計算を行っているケースは限られているのが現状です。

ドヴァリ氏とオスマノフ氏は「私たちの太陽系が形成されたのは約46億年前と比較的新しく、より古い恒星系に住む高度に進化したエイリアンは、地球よりも高度な量子技術をすでに使用していると考えることが妥当です」と主張しています。


両氏によると、ブラックホールは通常の物質で作られた量子コンピューターよりもさらに高速な量子コンピューターになるとのこと。理由としては、ブラックホール内の全ての物質が「特異点」と呼ばれる場所で重力が無限大になるまで押しつぶされているためです。ブラックホールは非常に密度が高く、光と量子ビットに関する情報がブラックホールの片側から反対側に移るのにほとんど時間がかからないと考えられています。

そして高度な量子技術を持つエイリアンは、量子コンピューターとしてのブラックホールに対し、量子状態を操作した物質を投入。そのホーキング放射を計算結果として受け取っているとドヴァリ氏らは主張しています。一方で「このようなエイリアンが使用するソフトウェアやプログラムは不明ですが、そのプログラミング能力とアルゴリズムの洗練さは、人間の想像をはるかに超えている可能性があります」と述べています。

by NASA Hubble Space Telescope

さらにドヴァリ氏らは、高度な文明を持つエイリアンが計算を行うために、質量の少ない小さなブラックホールを作成している可能性について言及しています。量子によると、小さなブラックホールは巨大なブラックホールと異なり、より多くのホーキング放射を放出するとのこと。そのため、これらのブラックホールから放出されるエネルギーを観測することができる可能性が示唆されています。

そこでドヴァリ氏らは「IceCubeのような素粒子検出器を用いることで、ホーキング放射の情報を見つけ出し、エイリアンが存在する兆候を発見できるかもしれません」と述べています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が2023年に撮影した劇的な画像トップ15、最も遠いブラックホールや超新星残骸「かに星雲」など - GIGAZINE

ブラックホールを破壊するにはどのような方法があるのか?破壊したらどうなるのか? - GIGAZINE

これまでブラックホールだと思われていたものは「ブラックホールのように見えるが実は異なる存在」である可能性 - GIGAZINE

重力が光に変わることがあるという驚くべき研究結果が報告される - GIGAZINE

重力レンズを使って「星から星へ電力を伝達」する理論が研究で示される - GIGAZINE

ブラックホールや宇宙の始まりの「特異点」とは一体何なのか? - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1r_ut

You can read the machine translated English article here.