欧州議会副議長や元議員がカタールから賄賂を受け取っていた汚職疑惑の全容を明かす「カタールゲート文書」が流出

2022年12月に欧州議会のエヴァ・カイリ元副議長を含む数名がカタールを巡る汚職疑惑で逮捕されました。この汚職疑惑に大きく関連する文書「カタールゲート文書」が警察から流出したとのことで、流出文書から明らかになった汚職の実態を海外メディアのPOLITICOがまとめています。

The Qatargate Files: Hundreds of leaked documents reveal scale of EU corruption scandal  – POLITICO
https://www.politico.eu/article/european-parliament-qatargate-corruption-scandal-leaked-documents-pier-antonio-panzeri-francesco-giorgi-eva-kaili/

2022年12月に「カタールが欧州議会の関係者に金品を提供して意志決定に影響を及ぼしていた」という疑惑が浮上し、欧州議会元副議長のエヴァ・カイリ容疑者、欧州議会元議員のピエール・アントニオ・パンツェリ容疑者、パンツェリ容疑者の補佐官だったフランチェスコ・ジョルジ容疑者、国際労働組合総連合書記長のルカ・ビセンティーニ容疑者がベルギーで逮捕されました。この汚職疑惑は欧州議会の信頼を揺るがす大事件と目されており、捜査の進展に注目が集まっていました。

POLITICOによると、「ジョルジ容疑者の住居から欧州されたノートPCに保存されていたファイル」が警察の捜査網から流出したとのこと。流出したファイルには2018年から2022年にカタールから金品を受け取った見返りとして実施された300件以上の活動が記録されており、それらの仕事は欧州議会で働く関係者によって構築されたネットワークを介して実行されていたことが明らかになっています。なお、ファイル内では関係者は「soldiers(兵士)」と呼称されていたとのこと。

流出したファイルから明らかになったパンツェリ容疑者の活動内容は以下の通り。

・カタールとクウェートからEUへのビザなし渡航の推進
欧州議会では2023年12月にカタールおよびクウェートからのビザなし渡航を認める決定が下されました。流出したファイルでは、パンツェリ容疑者が「ビザなし渡航に否定的な議会決議のうち6件を無効化した」と記されています。ただし、汚職疑惑が発覚したことによってこの決定は保留されています。

・カタールの競合に対する政治攻撃
2021年には国際刑事警察機構(ICPO)の新たな代表にアラブ首長国連邦(UAE)の監察長官を務めていたアフメド・ナセル・アル・ライシ氏が選出されました。UAEとの関係が悪化していたカタールはパンツェリ容疑者を介してライシ氏の代表就任を妨害を試みたとのこと。

・カタールと関係の深い国の支援
2021年にスペインの飛び地「セウタ」に8000人のモロッコ人が移動する事態が発生しました。この際、欧州議会はモロッコ政府を非難する決議を採択したのですが、この際にパンツェリ容疑者はモロッコ側に有利な「より温和な文書」を決議案に含めることに成功したとアピールしています。また、奴隷制が残っているモーリタニアのイメージ悪化を防ぐべく、奴隷制に反対する活動家のサハロフ賞受賞を阻止する活動も確認されました。

なお、パンツェリ容疑者は「はるかに重い実刑判決の代わりに禁錮1年と罰金刑を科され、100万ユーロ(約1億5500万円)相当の資金を没収する」という内容の司法取引に応じています。また、流出したファイルからもパンツェリ容疑者が汚職への関与を認めていることが明らかになっています。