サイエンス

「激しい運動」が体にもたらす潜在的なデメリットとは?


適度な運動は睡眠の質を高めたり心臓病のリスクを減少させたりと、さまざまなメリットが確認されています。一方で、過度なトレーニングなどの激しい運動を行うと、ウイルス性の呼吸器感染症にかかりやすくなる可能性が報告されています。

Elucidating regulatory processes of intense physical activity by multi-omics analysis | Military Medical Research | Full Text
https://mmrjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40779-023-00477-5

Vigorous Exercise, Rigorous Science: What Scientists Learned from Firefighters in Training | Feature | PNNL
https://www.pnnl.gov/news-media/vigorous-exercise-rigorous-science-what-scientists-learned-firefighters-training


Study Finds a Potential Downside to Vigorous Exercise We Didn't Know About : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/vigorous-exercise-may-have-a-concerning-effect-we-didnt-know-about

パシフィック・ノースウェスト・ナショナル・ラボラトリー(PNNL)の生物医学者であるエルネスト・ナカヤス氏らは、激しい運動を行った直後の11人の消防士から血液や尿、だ液を採取し、タンパク質や脂質、代謝物などの分析を行いました。消防士らは、日中に耐火服や手袋、ヘルメット、ゴーグルなどの装備を着用の上、約20kgの荷物を運びながら45分間走り回るという過酷なトレーニングを行いました。

研究チームのクリスティン・ジョンソン氏は「今回の研究の目的は、激しい運動を行った後の体内で何が起こっているのかを詳細に分析することで、疲労による危険をすぐに発見できるかどうかを確認することでした。もしかしたら、消防や救急隊員、アスリート、軍人などの激しい運動による健康リスクを減少させることができるかもしれません」と述べています。


研究チームによる分析の結果、激しい運動を行った消防士では、血管を拡張する効果を持つ「オピオルフィン」が増加していることが確認されました。研究チームによると、このオピオルフィンは、運動中の筋肉への血流を増加させ、効率良く酸素と栄養素を供給できる可能性があるとのこと。また、だ液からは体内での炎症反応やウイルスを撃退するために重要なシグナル伝達物質が減少していることも確認されています。

炎症反応が低下すると、空気をよりたくさん吸い込むことが可能になり、激しい運動をする際に多くの酸素を体内に取り入れやすくなります。また、激しい運動を行っても呼吸が安定したり、血流が改善したりといった効果が現れます。

一方で、炎症反応が低下すると、体はインフルエンザや結核、新型コロナウイルス感染症などのウイルス性呼吸器感染症に対して脆弱(ぜいじゃく)になります。これまでの研究では、激しい運動を行った数日後のウイルス性呼吸器感染症にかかる可能性は通常時と比べて最大2倍まで増加することが報告されています。ナカヤス氏は「健康な人でも、激しい運動をした直後はウイルス性呼吸器感染症にかかりやすくなっている可能性があります。理由として、激しい運動によってウイルスを撃退するための免疫が低下していることが考えられます」と述べています。


研究チームは、火災の際に化学物質を浴びて免疫反応が変化する可能性のある消防士を被験者としたことや、被験者が全員健康な男性であったことを挙げ、さまざまな属性を持ったより多くの被験者での分析を行う必要があると指摘しています。それでもナカヤス氏は「今回の研究が、激しい運動を行うことによるウイルス性呼吸器感染症のリスクを高めることについての一つの知見となることを期待しています」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1r_ut

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