サイエンス

冷たい水風呂に入る「冷水療法」は逆に健康に悪影響を及ぼす


運動後に冷たい川や湖を泳いだり氷を浮かべた水風呂に入ったりする「冷水療法」には筋肉痛を軽減して回復を早める効能があるという説があり、実際にスポーツ選手が取り入れているケースもあります。しかし、実際は冷水を浴びることが人体に有害な影響を及ぼす可能性があると、ポーツマス大学のスポーツ健康運動科学部の講師であるヘザー・マッシー氏らが解説しています。

Cold water therapy: what are the benefits and dangers of ice baths, wild swimming and freezing showers?
https://theconversation.com/cold-water-therapy-what-are-the-benefits-and-dangers-of-ice-baths-wild-swimming-and-freezing-showers-203452


「冷水浴には運動後の回復に効果がある」という主張はさまざまな研究で検証されていますが、2014年に発表された研究では「有意な効果は見られず、プラセボ効果以上のものではない」と示されています。

また、2022年の研究では、冷水浴にはむしろ呼吸器損傷、心血管損傷、場合によっては末梢神経血管損傷のリスクが伴うと指摘されており、皮膚温度が急激に低下することによって過呼吸やストレスホルモンの放出、不整脈などを引き起こして呼吸不全となる「コールドショック」を引き起こす可能性もあるそうです。


人は寒さにさらされると、手や足で冷たさと共にしびれを感じ、温まってくるとチクチクした痛みを感じることがよくあります。これは一時的な症状ですが、長い時間低温にさらされると、神経や血管が損傷し、このしびれや痛みが慢性的なものになってしまう可能性があります。また、血管や神経が損傷したことで指先の組織が大きなダメージを受け、壊死(えし)してしまうことも。

こうした冷たさにどれだけ反応感度があるのかは人によって大きな違いがあります。2018年に発表された研究では、アフリカやカリブ海の出身者は低温障害にかかりやすい傾向があるとのこと。また、普段冷たい水の中で泳ぐ水泳選手を対象とした研究だと、水泳選手は寒さに対して敏感である傾向があったそうですが、皮膚の血管損傷のしやすさとは関連していないことが示されました。つまり、寒さに敏感であるかどうかと、低温障害のかかりやすさは関係ないといえます。


マッシー氏らは、冷水療法を試す場合には次の点を考慮するよう呼びかけています。

・事前に主治医に相談して安全性を確認する。
・1人ではないこと、冷水浴をする場所が安全であることを確認する。野外である場合は水の流れや潮の満ち引き、汚染、障害物、危険生物などの可能性を考慮すること。
・寒いと筋肉が機能せず、手や足の感覚が鈍るため、安全に冷水に出入りする方法を事前に計画すること。
・冷水浴を終えた後、タオルや乾いた服、防風具、暖かい飲み物など、体を温める方法を用意する。完全に体が暖まるまでは車や自転車の運転は控えること。
・冷水浴は短時間に抑え、しびれや痛み、震えを経験する前に冷水から出ること。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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