サイエンス

運動後の水風呂は筋肉を回復させるのか?


「激しい運動をした後に水風呂に入ることが筋肉の回復を助ける」という話を耳にしたことがある人は多いはず。運動後、氷を入れて水温を10度前後にした冷水風呂に5~10分ほどつかるという「アイスバス」について、運動生理学の専門家が本当に筋肉を回復させて運動パフォーマンスを向上させる効果があるのかどうかを解説しています。

Do Ice Baths Actually Improve Muscle Recovery? Read This Before You Try It Out
https://www.sciencealert.com/do-ice-baths-actually-improve-muscle-recovery-read-this-before-you-try


◆アイスバスの効果とは?
まず、スウェーデンにあるカロリンスカ研究所のジョアンナ・ラナー氏は、アイスバスが機能するプロセスについて以下のように説明しています。

1:冷却は神経の刺激伝達を減らし、痛みの知覚レベルを減らす。
2:冷却は筋肉のような末梢組織の血管を収縮させ、運動によって引き起こされる急性炎症の原因物質の拡散を減らす。

またオーストラリアにあるグリフィス大学の運動生理学者であるライオン・ロバーツ氏は、冷水につかることが運動によって変化した心拍を元に戻すとも述べています。加えて、オーストラリア、ビクトリア大学の運動生理学者であるジェームズ・ブローチ氏は、アイスバスが筋肉に直接作用するだけでなく心理的にも影響すると主張。ブローチ氏は実験で運動後の被験者に対し、「35度の温浴」「回復オイルが入った35度の温浴」「10度のアイスバス」の3つのお風呂を用意し、実際につからせたところ、35度の温浴に比べて「回復オイル入りの温浴」と「アイスバス」につかった筋肉の回復が早いことが示されました。しかし、実は「回復オイルが入っている」というのはウソで、このウソによってアイスバスには強力なプラセボ効果と同等の力があると認められました。

◆アイスバスは運動後の筋肉回復にどのような影響を及ぼすのか?


ラナー氏によると、アイスバスが効果を発揮するのは「遅発性の筋肉の痛み」に対してとのこと。この遅発性の筋肉の痛みは、通常、激しい運動をした人や運動に不慣れな人が運動から24時間~72時間後に経験する痛みのこと。このため、アイスバスはスポーツ競技後によく利用されます。

◆アイスバスは運動のパフォーマンスに影響するのか?
カロリンスカ研究所のハカン・ウェスターブラッド氏は、アイスバスの運動パフォーマンスへの影響を調べた過去の研究ではその効果が「わずかにいい影響がある」「影響がない」「悪い影響がある」など多岐にわたっていることを説明しています。これは、一言で運動パフォーマンスといっても「持久力」「筋力」など、複数の指標があることが理由です。

ロバーツ氏によると、例えば、筋トレ後のアイスバスは、逆に運動のメリットを損なわせる可能性があるとのこと。具体的にいうと、冷水はトレーニング後の筋肉で起こる細胞応答やタンパク質に対しネガティブに作用し、筋トレ後に期待される「筋肉の増大」「強度の向上」「細胞の改善」といった効果を大きく減らしたり、鈍化させたりするといった可能性が示唆されているそうです。


一方で持久力トレーニングに対する影響は大きく異なります。持久力トレーニングの効果として挙げられるものの1つに「ミトコンドリアの生合成を促す」ということがあります。ミトコンドリアはエネルギーを産生するものであり、細胞中のミトコンドリアの数が増えれば持久力が向上すると考えられています。この点、アイスバスはミトコンドリアの数の増加に役立つ可能性があるとのこと。

上記の内容から総合して、「筋トレ後のアイスバスは注意して行うかそもそも避けるべきであり、持久力トレーニングや1回限りのスポーツイベントの時のみの利用が推奨される」と結論付けられています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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