ものすごくゆっくりと筋トレをする「スーパースロー筋トレ」にはどのような効果があるのか?
by bruce mars
通常の筋トレよりも一度の運動に長い時間をかける「スーパースロー筋力トレーニング」は反復回数が少なくていいぶん時短が可能であり、かつ大きな効果を発揮できる方法です。そんなスーパースロー筋トレのやり方や科学的効果を筋トレをこよなく愛すBrock Armstrong氏が熱く語っています。
How to Do Super Slow Resistance Training
https://www.quickanddirtytips.com/health-fitness/exercise/how-to-do-super-slow-resistance-training
スーパースロー筋トレは新しいものではなく、1962年に出版された「Strength and Health」という雑誌の記事で既に言及されていました。この記事で示されていた方法は「10秒かけて重りを上げ、10秒かけて下ろす」というもの。
運動機器メーカー・Nautilusの標準プロトコルによると、筋トレは、「体の部位を体の中心に近づけていく『求心性の動き』を2秒かけて行い、1秒の静止を挟んで、その後、体の部位を体の中心から遠ざけるという『遠心性の動き』を4秒かけて行う」という一連の動作を8~12回反復するのが一般的です。この方法を行うと1つのトレーニングを行うために必要な時間は56~84秒となります。一方で、スーパースロー筋トレは求心性の動きを10秒、遠心性の動きを10秒かけて行うという動作を4~6回行うとのこと。
スーパースロー筋トレを広めたKen Hutchins氏は1980年代に骨粗しょう症を患う高齢の女性を対象に研究を行いました。Hutchins氏は、標準的な筋トレは誤動作が起こりうることから「スーパースロー筋トレは通常の筋トレよりも安全である」と考えていました。実際に高齢女性にスーパースロー筋トレを行ってもらったところ、被験者の筋力は劇的に上がったそうです。
Hutchins氏のスーパースロー筋トレの独特なところは、それまでのような4~6回の反復を必要とするものではなく、筋トレが1セットでよいということ。ただしトレーニングは筋肉が限界を迎えるまで行う必要があり、回数が少なくてよいからといって、トレーニングが楽だというわけではないとのこと。
by bruce mars
スーパースロー筋トレの目的は、筋肉に強い緊張状態を生み出すことです。筋肉中の緊張は収縮する繊維の量と直接的な関係があります。筋繊維はタンパク質の一種であるミオシンとアクチンから構成される数千もの筋原繊維から生み出されます。筋肉はミオシンとアクチンが互いに行き交うことで収縮と伸張を行いますが、ゆっくりとした動きで両者の接触が増えれば、その分筋肉の緊張が生み出されます。この緊張が、筋肉の発達に必要な刺激を促進するとのこと。
スーパースロー筋トレについて実験した研究結果は2007年にも発表されました。この研究では65~79歳の被験者を「週に1回のトレーニングを行うグループ」と「週に2回のトレーニングを行うグループ」の2つに分けて、上半身・下半身のスーパースロー筋トレを行ってもらったとのこと。この結果、2つのグループに実験後の筋力差は見られませんでした。一見するとこの研究結果は「スーパースロー筋トレには効果がない」という風に読み取れそうですが、「週1回でも週2回に相当する筋力をつけることができる」と考えれば、スーパースロー筋トレが時短に役立つといえます。
スーパースロー筋トレを行うために特別な運動機器は必要はありません。「スクワット」「腕立て伏せ」「プルアップかプルダウン」という3つの運動について基本的なやり方を知っていれば、家で行うことも可能。
by Sabel Blanco
◆スクワット
必要があればバランスを取るためにドアの取っ手あるいは頑丈な家具を持った状態で、腰幅で立ち、10秒かけて太ももが床と水平になるまでゆっくりとしゃがみこんでいきます。太ももと床が水平になった状態で2秒静止し、その後、10秒かけて元の状態に戻ります。呼吸を忘れずに、この方法を筋肉に限界がきてフォームが崩れ出すまで行います。
◆腕立て伏せ
肩の下に手首が来る形で手の平を床につきプランクの姿勢になったら、ゆっくりと10秒かけて、胸と肩が床ギリギリのところに来るまで肘を曲げていきます。そこで2秒静止し、今度は10秒掛けてもとのプランクの姿勢に戻ります。この時のスクワットと同様に、呼吸が止まらないようにしてフォームが崩れるか、腕立て伏せができなくなるまで繰り返しましょう。
◆プルアップかプルダウン
自宅に懸垂バーがある人はプルアップやプルダウンを行うことも推奨されています。部屋のドアに引っかけるタイプの懸垂バーもあり、初めて使用する際にはバーの下にイスを置いて安全を確保すればOK。バーのグリップを握り、ゆっくりと腕を引き10秒かけてアゴがバーを超えるところまで持っていきます。そこで2秒静止し、その後ゆっくりと10秒かけて元の位置にまで戻ります。これも呼吸しながらフォームが崩れるか物理的に行えなくなるところまで続ければOKです。
さらに本格的に運動を行いたい人は、上記のセットの前に太陽礼拝のような有酸素運動を組み合わせることが推奨されています。
STEP BY STEP SURYA NAMASKAR FOR BEGINNERS | Learn Sun Salutation In 3 Minutes| Simple Yoga Lessons - YouTube
スーパースロー筋トレと従来の筋トレの違いは科学研究によってまだ十分に明らかになっていない部分ですが、いずれのトレーニングも筋力アップに役立つのは確か。ゆっくり動くのが苦手な人はスーパースロー筋トレを苦手だと感じる可能性もありますが、時短ツールにもなるので、十分な運動時間が取れない時などに挑戦する価値がありそうです。
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