サイエンス

定期的な運動が睡眠の質を高める理由とは?


睡眠の質は健康に大きな影響を与えるといわれますが、実際に質の高い睡眠をとるのに苦労している人は多いはず。質の高い睡眠をとるためには、「夜に熱いお風呂に入る」「寝る直前にスマートフォンを操作しない」などの工夫が必要です。ノッティンガム・トレント大学の運動学・栄養学講師を務めるエマ・スウィーニー氏は「運動が睡眠の質を改善するのに役立つ」と述べ、その理由を解説しています。

Exercise really can help you sleep better at night – here's why that may be
https://theconversation.com/exercise-really-can-help-you-sleep-better-at-night-heres-why-that-may-be-192427

2015年に発表された研究によると、短い運動を週に数回定期的に行うことがより質の高い睡眠につながることが示されたとのこと。運動の中でもサイクリングやランニング、ウォーキングなどの有酸素運動が有効的で、有酸素運動を30分行うだけでも入眠までの時間が短縮され、睡眠効率が高まることが示されたそうです。


2018年に発表された研究では、スクワット・腕立て伏せ・ダンベルなど筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動を週に約3回行っている人も睡眠の改善を感じたと答えています。さらに2019年1月に発表された研究では、定期的にレジスタンス運動を行うことで、不眠の傾向にあった人がより早く眠りにつき、睡眠効率が高まったと報告されています。

ただし、スウィーニー氏は「レジスタンス運動が睡眠の質に与える影響はあまり研究が行われていないため、結論を出すには慎重になる必要があります」と述べています。


このように、運動は睡眠の質の改善に大きく役立つことが示されていますが、スウィーニー氏によれば、なぜ運動によって睡眠の質が向上するのかは完全に解明されていないそうです。

一説では、概日リズムとホルモンが影響しているとのこと。人間には「概日リズム」という24時間周期の体内時計が備わっています。この概日リズムは、脳の松果体から分泌されるメラトニンによって調節されています。メラトニンが松果体から放出されると脈拍や血圧が低下するため、睡眠の準備ができたと体が認識し、眠くなるという仕組みです。2019年4月に発表された研究で、日中に運動することでメラトニンの放出が早まることがわかっており、これが運動すると入眠までの時間が短縮される理由ではないかとスウィーニー氏は推測しています。

また、運動をすると、体の内部の温度である「深部体温」が上昇します。そして、運動を終えると深部体温は徐々に下がります。この深部体温の低下も入眠時間の短縮を促すことがこれまでの研究で示されています。また、運動をするとエンドルフィンが分泌され、メンタルヘルスにも良い影響を与えることで、睡眠の質が改善される可能性もあります。


スウィーニー氏は「運動によって睡眠のさまざまな側面に影響を与える理由をはっきりと解明するには、まだ多くの研究が必要ですが、運動が睡眠に有益であることは明白です。毎日30分~60分程度の運動をするだけで寝つきが良くなり、翌朝はすっきりと目覚めることができるようになるかもしれません。1回の運動でも睡眠の質は改善されますが、定期的に運動することで、より大きな改善が期待できます。ランニング、水泳、ウェイトトレーニング、ウォーキングなど、さまざまな運動が睡眠の質の改善と関連しているので、自分が楽しめる運動を選ぶのがよいでしょう」とコメントしました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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