サイエンス

「睡眠時の正しい姿勢」は存在するのか?科学者が解説


食生活と睡眠は互いに影響し合っていることが判明したり、睡眠時間が6時間未満の日が連続すると心身へのダメージが悪化し続けることが明らかになったりと、睡眠関連の研究は数多く存在します。そんな睡眠研究の専門家であるボンド大学の科学・医学准教授であるクリスチャン・モロ氏と同大学の博士課程学生であるシャーロット・フェルプス氏が、「睡眠時にとるべき正しい姿勢」や「正しい枕の選び方」などについて解説しています。

What position should I sleep in, and is there a ‘right’ way to sleep?
https://theconversation.com/what-position-should-i-sleep-in-and-is-there-a-right-way-to-sleep-189873

過去の研究から、ほとんどの人は横向きで寝ることを好むことが明らかになっています。仰向けになって寝る人は睡眠不足に陥ったり睡眠時に呼吸困難に陥ったりしやすいことが明らかになっているため、横向きで寝ることは良いことのように思えます。

人間の寝相はとても悪く、睡眠時に体を頻繁に動かすことが知られています。664人の被験者を対象に行われた実験によると、被験者の睡眠時の姿勢は平均すると横向きが54%、仰向けが37%、うつ伏せが7%だったそうで、横向きが圧倒的に多いことが明らかになっています。また、被験者のうち特に35歳未満の男性が睡眠時に頻繁に体を動かしていたことも判明しており、体勢を変えたり腕・太もも・背中上部を動かしたりする割合が高いとのこと。


睡眠時に体を動かすことが悪いというわけではなく、むしろ良いことであると考えられています。睡眠時、人間の体は痛みや不快感を追跡し、それに応じて姿勢を調整します。これにより、日常生活で褥瘡(じょくそう)ができることが避けられるようになっているわけです。

そのため、自身の寝るベッドでは体の左右に動き回ることができるスペースを確保することをモロ氏は推奨しています。また、同じベッドで寝るパートナーやペットがおり、その相手がベッドのスペースを大きく占有してしまっている場合は、「寝る場所を変えてより大きなスペースを確保するか、より大きなベッドの購入を検討してください」とモロ氏は語っています。


また、睡眠時に「快適であること」も重要であるとモロ氏。「万人にとっての最適な睡眠姿勢」を明確に示すような質の高い研究は存在しないとして、年齢・体重・環境・妊娠の有無などが最適な睡眠姿勢に影響すると指摘。

理想は「夜にぐっすり眠れる姿勢を見つけること」だそうです。人は誰もが自分にとってしっくりくる睡眠姿勢を持っているものですが、ある研究では「背骨が回転している姿勢(以下のUnsupported Side Positionという姿勢)」で寝た人は、他の姿勢で寝た人よりも目覚めた際に多くの体の痛みを訴えることが明らかになっています。そのため、背骨をひねるような体勢で就寝しがちな人は、睡眠時の姿勢を変えてみるのもありです。


睡眠時の姿勢が横向きの場合、上記の画像のように姿勢によっては背骨に負担をかけるものも存在しますが、一般的に横向きは仰向けやうつ伏せと比べて優れた睡眠時の姿勢とされています。

さらに、ぐっすり眠るには適切な枕を選ぶことも重要であるとモロ氏。睡眠時の頭と首へのサポートの欠如は背骨に悪影響をおよぼし、首・肩の痛み、筋肉のこわばりなどの問題を引き起こすことが明らかになっています。

枕について明らかになっているのは、枕の素材は脊椎に影響を与えることはないということ。また、枕にとって重要なのは「形状」および「高さ」であり、U字型の枕は睡眠時間を長くするのに役立ちロール型枕は慢性的な痛みに苦しんでいる人の朝の痛みや就寝時の痛みを軽減することに役立つことも判明しています。

なお、科学的に見て最適なマットレスとはどんなものかという問いに答えられるような研究は、記事作成時点では存在しないそうです。ただし、マットレスの中でも硬さがなくなったりバネの音が大きくなったり明らかな摩耗の兆候が見られるものなどは、「交換すべき」とモロ氏は主張しています。マットレスは使用する面を変えることで長持ちし、快適さも増すことが知られているため、少なくとも年に1、2回はマットレスを裏返すことが推奨されています。


この他、良質な睡眠をとるためのアドバイスとして、モロ氏は「室温を低く設定してください」と語っています。睡眠に最適な温度は18.3度(15~19度の範囲)だそうで、室温が高いと睡眠に悪影響をおよぼすことが明らかになっています。

また、寝室は空気の流れを確保することも重要です。空気の流れを確保することは、新鮮な空気をもたらすだけでなく、室内に蓄積された熱を取り除き、快適で涼しい室温を保つことにも役立ちます。

さらに、特定の種類の抗ヒスタミン薬などは、入眠を容易にするケースがあると知られています。一方で、カフェインなどは睡眠の質に大きく影響するため、睡眠のことを考えれば摂取しない方がベターだそうです。

加えて、夜間にトイレのために目を覚ますことも睡眠に影響を与えるため、就寝前にトイレに行っておくことが推奨されています。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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