サイエンス

アルコールには睡眠導入効果があるが睡眠の質を下げる


アルコールを摂取すると眠気が生じるため、眠りにくいときにアルコールを摂取するという人もいます。しかし、ノッティンガム・トレント大学でスポーツ科学や睡眠を研究しているエマ・スウィーニー氏とフラン・ピルキントン=チェイニー氏は「アルコールは眠りに落ちる時間を早めるが、睡眠の質を低下させる」と主張し、アルコールと睡眠の関係を解説しています。

Alcohol may help you fall asleep faster, but it leads to a worse night’s rest overall – here’s why
https://theconversation.com/alcohol-may-help-you-fall-asleep-faster-but-it-leads-to-a-worse-nights-rest-overall-heres-why-246841

アルコールの摂取によって眠りにつくまでの時間が短くなることは科学的にも確かめられています。しかし、アルコールの摂取量と睡眠の関係性を調査した研究では、アルコールによる睡眠導入効果を得るには「就寝3時間前にワインをグラス3~6杯飲む」という比較的大量のアルコール摂取が必要であることが示されています。

一方で、「就寝3時間前にワインをグラス2杯飲む」という少量のアルコール摂取でも睡眠への悪影響は生じてしまいます。具体的には、「レム睡眠に入るタイミングを遅らせる」「レム睡眠の時間が短くなる」「夜中に頻繁に目覚める」「後半の眠りが浅くなる」といった悪影響が現れるとのこと。レム睡眠が妨げられると記憶の定着が損なわれたり、感情のコントロールに支障をきたすことがあります。また、睡眠が妨げられることで翌日の疲労感が増すことにもつながります。


アルコールが睡眠の質を低下させる原因は、一部が解明されています。アルコールは鎮静作用に関連している神経伝達物質であるGABAの働きを強めるほか、眠気に関わっているとされるアデノシンの分泌量も増やして眠気を感じやすくします。しかし、体内でアルコールの分解が進むと、アルコールによって生じた体内の変化を元に戻そうとする「リバウンド効果」が生じ、GABAの働きやアデノシンの分泌量が通常時と同等になって睡眠が妨げられてしまいます。

また、アルコールはメラトニンの生成にも影響与えます。メラトニンには「疲労感を感じさせて眠気を誘導する」という効果があるのですが、アルコールによってメラトニンの生成量が変化すると睡眠リズムに変化が及ぶことがあります。

さらに、アルコールには「気道の筋肉を緩めていびきを悪化させる」「利尿作用によってトイレのために起きる回数が増える」といった効果もあります。これらの効果が合わさって睡眠に悪影響を及ぼしているというわけです。


スウィーニー氏とピルキントン=チェイニー氏はアルコールに頼らずに睡眠に入るための手法として、以下の行動を推奨しています。
・毎日同じ時間に就寝・起床することで体内時計を整える
・涼しく、暗く、静かな部屋で眠る
・寝る前に読書や入浴などのリラックスできる活動を実施し、習慣化する
・午後にカフェインを摂取しないようにする
・身体活動を増やすことで、一日の終わりに疲れを感じるようにして概日リズムを調整する。朝の日光を浴びながら運動するとさらに効果的

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in サイエンス, Posted by log1o_hf

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