サイエンス

「階段を上る」「家事をする」「バスの停留所まで歩く」など1日3~4分の日常的な運動でがんのリスクが減少する


定期的に運動することでさまざまな健康リスクを減らせることは多くの人が知っていますが、ランニングや筋トレのためにまとまった時間を確保するのが難しいという人は多いはず。オーストラリア・シドニー大学のエマニュエル・スタマタキス教授が主導した新たな研究では、まとまった運動をする余裕がなくても、「階段を上る」「バスの停留所まで歩く」といった日常的な活動でがんのリスクを軽減できることが判明しました。

Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity and Cancer Incidence Among Nonexercising Adults: The UK Biobank Accelerometry Study | Cancer Screening, Prevention, Control | JAMA Oncology | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jamaoncology/fullarticle/2807734


Climb the stairs, lug the shopping, chase the kids. Incidental vigorous activity linked to lower cancer risks
https://theconversation.com/climb-the-stairs-lug-the-shopping-chase-the-kids-incidental-vigorous-activity-linked-to-lower-cancer-risks-210288

スタマタキス氏らは、「構造化された運動には時間がかかり、かなりのコミットメントが要求され、多くの場合は財政的支出やジム通いが必要です。これらの実際的な問題により、多くの成人にとって構造化された運動は実行不可能になることがあります」と述べています。


その一方で、日常生活における偶発的な身体活動によりがんのリスクが減るかどうかについての研究は、これまでほとんど行われてこなかったとのこと。ここで取り上げられている偶発的な身体活動には、「バスの停留所やコンビニまでの短い距離を歩く」「階段を上る」「買い物の後で重い荷物を運ぶ」「家事をする」「子どもたちと遊ぶ」といった余分な時間や特別な機器を必要としないものが含まれます。

そこでスタマタキス氏らの研究チームは、イギリスの大規模バイオバンクであるUKバイオバンクから「これまでにがんと診断されたことがなく、余暇に構造化された運動をしていない2万2398人の被験者」のデータを分析しました。被験者のうち約55%が女性で平均年齢は62歳となっており、被験者らは1週間にわたり手首にアクティビティトラッカーを装着して活動レベルを測定しました。

その後、研究チームは約7年間にわたって収集された被験者のがんに関連する健康記録と、身体活動やさまざまな情報をリンクさせて分析を行いました。乳がん・肺がん・肝臓がん・大腸がんなど13の部位ごとに偶発的な運動によるリスク変動を個別分析し、年齢・喫煙・飲酒・食生活といったがんリスクに関連する要因についても考慮したとのこと。


分析の結果、被験者は構造化された運動こそしていなかったものの、約94%が活発で短い偶発的な運動をしていたことが判明。また、約92%の運動は最大でも1分間ほどの非常に短いものだったそうです。

偶発的な運動の時間は1日分を合計しても非常に短かったにもかかわらず、がんリスクを低下させることがわかりました。研究チームは、1日最低3.5分以上偶発的な運動をする人は、こうした活動を行わない人と比較してトータルのがんリスクが17~18%減少し、偶発的な運動が1日4.5分以上の人はがんリスクが20~21%減少したと報告しています。

また、乳がん・肺がん・大腸がんなど、その人の運動量がリスクに影響を及ぼすことがわかっているがんではさらにリスク軽減効果が顕著でした。1日あたり3.5分以上の偶発的な運動により、これらのがんのリスクは28~29%減少し、1日あたり4.5分以上でリスクは31~32%減少したとのことです。

研究はあくまで観察的なものであり、被験者らの行動に介入を行って因果関係を突き止めたわけではなく、偶発的な運動によりがんリスクが低下する生物学的メカニズムを説明することもできません。しかし、過去の研究ではこの種の運動が心臓や肺の健康状態を改善させることがわかっているほか、「研究の初期段階から不健康でがんになるリスクが高かった人」を除外した分析でも、同様の結果が得られたとスタマタキス氏らは述べています。


今回の研究結果は、ランニングやスポーツなどを行うまとまった時間が確保できなくても、日常生活の中で発生する1日3~4分程度の運動を積み重ねることで、がんリスクを軽減できることを示すものです。

スタマタキス氏らは、「活発な偶発的身体活動は、余暇に運動できないまたは運動する気力がない人々にとって、がん予防のための有望な手段です。私たちの研究はまた、テクノロジーの可能性を強調しています。今回の結果は、ウェアラブルデバイスと機械学習(活発で短い運動を特定するために使用された)を組み合わせることで、生活の知られざる側面における健康上の利点を明らかにできることを示しています。このような技術が将来、がんや他の多くの疾患を予防するためにもたらす潜在的な影響は、非常に大きなものになる可能性があります」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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