サイエンス

ホラー映画のBGMを聴くと普通の笑顔でさえ不気味で恐ろしいと感じやすいとの研究結果


ホラー映画やドラマには、不協和音や不穏なメロディで恐怖をかき立てるBGMがよく利用されており、そのBGMを聴くだけで恐ろしい気持ちになることもあります。新たな研究により、ホラー映画のBGMを聴くと普通の笑顔でさえ不気味で恐ろしいと感じやすいということがわかりました。

The Sound of Fear: How Horror Soundtracks Shape Threat Perception of Emotional Faces - Li Fun Lua, Xuan Nee Kong, Jasmine K. W. Lee, Shumetha Kaur Sidhu, 2026
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/17470218261447279

Horror soundtracks can make friendly smiles feel eerie and threatening, study finds
https://www.psypost.org/horror-soundtracks-can-make-friendly-smiles-feel-eerie-and-threatening-study-finds/

人間社会において相手が脅威になるのかそれとも安全なのかを見分ける際、多くの人々は相手の表情を利用しています。この際、背景に流れている音が感情的な文脈を生み出し、その後の情報処理に影響を与える場合があるとのこと。そのため、ホラー映画のBGMには急激な音量変化や耳障りな音程、人間の叫び声を模倣した音響パターンなどが組み込まれ、人々の不安感や恐怖を喚起するように作られています。


今回、マレーシアのレディング大学で心理学講師を務めるシュメザ・シドゥ氏らの研究チームは、ホラー映画のBGMが表情に基づいた評価に及ぼす影響を調べる実験を行いました。シドゥ氏は以前から、先入観やその他の要因が知覚に及ぼす影響を研究しており、今回の研究は学生が感情的な顔の知覚に興味を持ったことがきっかけになっていると説明しています。

研究チームは実験のため、18~25歳のマレーシアの大学生45人を募集しました。被験者は中国系・マレー系・インド系など多様な民族的背景を持っており、女性が42人で男性は3人でした。被験者は一定の音量に固定されたオーバーヘッドイヤホンを装着し、視線追跡スクリーンから60cm離れた場所に座って実験に臨みました。

実験では、15秒間にわたりホラー映画『インシディアス』の恐ろしいBGMか中立的なホワイトノイズのいずれかを聴いた後、「怒り」「中立的」「幸福」を表す表情を浮かべた若い中国人モデルの写真を1秒間見せました。その後被験者は、表情がどれほど脅威的に見えたかについて「0(まったく脅威的ではない)」~「100(非常に脅威的)」の尺度で評価しました。

また、被験者の自律神経系の活動と注意力の高まりを示す指標として、被験者の瞳孔径についても測定が行われました。なお、被験者には脅威度だけでなく、その顔が「どれほど刺激的か」「どれほどリラックスできるか」についても評価してもらい、実験が恐怖や脅威に関するものだと見分けられないようにしたとのこと。


データを分析したところ、ホラー映画のBGMとホワイトノイズではあらゆる表情において、知覚される脅威度に顕著な変化が生じました。顔の種類による平均的脅威度スコアはホワイトノイズ時が「18.90」でしたが、ホラー映画のBGMを聴いた時は「41.65」に上昇し、ベースラインスコアの2倍以上となりました。

表情ごとに見てみると、「怒り」の平均スコアはホワイトノイズの時が「34.92」でホラーBGMの時が「52.93」、「中立的」はホワイトノイズの時が「14.18」でホラーBGMの時が「39.62」、「幸福」はホワイトノイズの時が「7.58」でホラーBGMの時は「32.41」でした。

いずれの場合でも「怒り」が最も脅威度が高く、それに続いて「中立的」、最後に「幸福」となる傾向は変わりませんでしたが、ホラーBGMの時は「中立的」と「幸福」の差は統計的に有意ではなくなりました。笑顔(幸福)に対する反応の変化は研究チームにとって予想外だったそうで、シドゥ氏は「恐怖を誘発する音楽が、笑顔に対する脅威認識を高めるとは予想していませんでした!」と述べています。

平均瞳孔径の測定では、ホワイトノイズを聴いた時(2.93mm)とホラーBGMを聴いた時(2.94mm)で有意差はみられませんでした。しかし、被験者がホラーBGMの後に「中立的」な表情を見た場合(2.94mm)とホワイトノイズの後に「中立的」な表情を見た場合(2.91mm)では、統計的に有意な差がありました。


今回の実験結果は、ホラーBGMが人々の表情解釈を変化させ、中立的な表情や笑顔でさえどこか不気味で恐ろしいものに感じさせる可能性を示唆するものです。しかし、中立的な表情や笑顔で示された30点台という脅威度スコアは極度の恐怖ではなく、あくまで軽度の不安感や曖昧さを示しているという程度です。そのため、ホラーBGMが本格的なパニックを引き起こしたり、普通の顔でさえ極度の恐怖をもたらしたりするという意味ではありません。

さらに研究チームは、今回の実験では被験者のほとんどが女性であり、東南アジアの人々で占められていたことから、結果が他の人口統計学的特性にも当てはまる保証はないとしています。研究チームは今後、なぜ恐怖を誘発する音楽を聴くとポジティブな表情が不気味に感じられるのかを解明する予定だとのこと。

シドゥ氏は「予想外の発見は、恐怖を誘発する音楽を聴かされた際に、人々が幸せそうな表情をより脅威的に感じたことでした。この現象のひとつの解釈としては、笑顔とこのようなサウンドトラックが組み合わさることで、邪悪な意図が伝わるということが考えられます。私たちは今後、この点についてさらに詳しく調査していく予定です」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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