目に見える情報は感情によってコントロールされている


自分が何を体験したのかや、無意識に感じる人々の感情変化によって、視覚情報に変化がもたらされるとカリフォルニア大学サンフランシスコ校で健康心理学を専攻しているエリカ・ジーゲル氏らの研究で示されました。このため、自身や周囲の人々の機嫌が良い状態であれば、無表情な人で何を考えているかわからないような人であっても、好感を持てる人に感じるそうです。

Seeing What You Feel: Affect Drives Visual Perception of Structurally Neutral Faces - Erika H. Siegel, Jolie B. Wormwood, Karen S. Quigley, Lisa Feldman Barrett, 2018
http://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0956797617741718

The emotions we feel may shape what we see
https://medicalxpress.com/news/2018-04-emotions.html

Is Mona Lisa smiling? Depends on your mood: Study reveals emotions influence how you see it | Daily Mail Online
http://www.dailymail.co.uk/health/article-5608541/Is-Mona-Lisa-smiling-Depends-mood-Study-reveals-emotions-influence-it.html

研究を行ったエリカ・ジーゲル氏は「私たちは、受動的に情報を検知して反応しているのではなく、建築家のように体験を作り出す、つまりどのように世界を認識するかを自分で構築しています。感情は私たちが作り出す体験を決定する重要な要素です」「喜びや不快を感じると、私たちは世界を違ったように認識します」と話しています

ジーゲル氏ら研究チームは、過去の研究において、「人の無意識の感情に影響を与えることがニュートラルな表情に対する第一印象を『好ましい』『好ましくない』『信頼できる』という風に変化させる」ということを示していました。今回の研究ではさらに踏み込み、人の無意識の感情を変化させることが、実際に「ニュートラルな顔の認識」そのものを変えるかどうかを調べています。


研究チームは、両眼視野闘争の現象を使用した実験を行うことを考えました。両眼視野闘争とは、2つの目でそれぞれ異なる図形を見た時、通常どちらか一方の目に映された図形が認識され、時間と共にもう片方の目に映された図形が知覚されるというものです。つまり、両方の目が異なる画像を映し出された場合、脳が知覚する情報は片目の情報のみとなります。

そして、もう一方の目が見ている情報を脳が知覚するタイミングはランダムであるものの、切り替わるタイミングを遅らせる方法があります。研究チームは知覚の変化を抑制する方法として、連続フラッシュ抑制の現象を採用しています。

研究チームは43名の被験者を集めて連続フラッシュ抑制を使った実験を行いました。被験者たちは、利き目にモンドリアン図形と無表情な人の顔を点滅させながら交互に映し、それと同時に、もう片方の目にコントラストの低い「笑顔」「叫ぶ顔」「無表情」の画像のいずれかを表示させました。人は利き目の情報を支配的に認識するので、利き目でない方の目で見た情報は、通常「見た」という意識が持たれずかき消されてしまいます。

By Ally Aubry

実験終了後、モニターに「笑顔」から「無表情」そして「叫ぶ顔」の5段階の表情が映し出され、被験者は実験中に目に映し出された表情はどれか?ということを選択しました。すると、利き目から意識的に被験者が認識したのは全て同じ「無表情」であるにも関わらず、利き目でない方に「笑顔」が映し出されていた人は、より笑っている表情を選択するなど、意識の外に存在していた表情に合わせて回答する傾向があることがわかりました。

また研究チームは被験者の利き目でない方の目が、本当に知覚できない状態であったかも調査しています。実験によると、利き目でない方に映し出された表情が「どの方向を向いていたか?」と被験者に質問し、質問に対し極めて正確に顔の向きを回答した被験者のデータは集計から省いたとのことですが、それでも傾向に変化はなかったそうです。

そして、この研究は何世紀にもわたって、芸術愛好家たちを悩ませてきたレオナルド・ダ・ヴィンチ作の「モナ・リザ」が人や時間によって、違った表情に見えてしまう問題に回答を与えています。ジーゲル氏は「あなたの夫とけんかをした後に、モナ・リザを見た場合、ほほ笑みではなく、別の表情を見ることになるはずです。また、ルーヴル美術館で人生を過ごしている人であれば、モナ・リザは謎めいた笑顔を見せることになるでしょう」と話しています。


ジーゲル氏らによると、「この研究により、人々は感情によって視覚情報がコントロールされており、私たちが見る物は、本当の現実世界を映し出しているものではなく、感情が含まれた精神的な表現であると考えることができます。このため、裁判官や陪審員が被告の反省度合を評価するような場面など、本当に中立的な評価ができているかを検討する必要があります」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1j_ty