サイエンス

なぜ人はホラーをこんなにも愛してしまうのか?

by Rob

ホラー映画を見ると恐怖が頭に染み付いて暗闇が怖くなったり寝られなくなったりするとわかっていながら、それでもホラー映画を見てしまう……という人も多いはず。デンマーク、オーフツ大学のMathias Clasen氏もその1人で、ホラー好きが転じて「なぜ人はホラー映画を愛してしまうのか?」ということを研究しています。Clasen氏の研究では、「ホラー好きであることと好奇心の強さとの関連性」、そして「人は自分の認知や行動によって恐怖度を意図的に最適化している」ということが示されています。

Horror, Personality, and Threat Simulation - Research - Aarhus University
https://pure.au.dk/portal/en/persons/mathias-clasen(3c9b0961-b1e9-4084-867f-d8b959ba40e5)/publications/horror-personality-and-threat-simulation(86bb3f4e-5ca5-4ffb-873d-d8c0f8028890).html

Adrenaline junkies and white-knucklers: A quantitative study of fear management in haunted house visitors - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0304422X18301517?via%3Dihub

Danish haunted-house studies seek to reveal the seductive appeal of horror | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2019/02/danish-haunted-house-studies-seek-to-reveal-the-seductive-appeal-of-horror/

Clasen氏は、ペンシルバニア州立大学の心理学者であるJohn A. Johnson氏らと協力して、1000人以上の北米在住者を対象としたテストを行いました。研究者は、まず被験者にビッグ・ファイブと呼ばれる性格診断テストを受けてもらった上で、それぞれの被験者のホラーを好む/好まないという性質とビッグ・ファイブの関連性を調べたとのこと。この結果、「経験への開放性」と「ホラーを好む傾向」の間にポジティブな関連性が見つかったそうです。経験への開放性は、好奇心・想像力・審美眼といった特徴を持つことから、ホラー好きは好奇心が強く想像力が豊かであると推察できます。

またClasen氏の別の研究では、デンマーク・バイレにあるお化け屋敷「Dystopia」を使っての実験が行われました。このお化け屋敷は参加者をホラー物語の主人公に仕立てるもの。Clasen氏は「もしお金を払ってお化け屋敷に入り、これから起こることに『投資している』という意識を持つならば、コンピューターゲームをプレイしている時のように、人の感情反応は強くなります」と語っています。

Dystopia
https://dystopia.dk/


Dystopiaにはひと月の間で300人が訪れ、このうち研究への参加に同意したのは280人だったとのこと。この参加者はお化け屋敷に入る前に「恐怖を最大化することを考える」あるいは「恐怖を最小化することを考える」という2つの戦略から1つを選ぶようにいわれました。研究者は前者を選んだ参加者を「アドレナリンジャンキー」と、後者を「ホワイトナックラー」と呼んでいます。

参加者に対する自由回答のインタビューとアンケートのデータの分析から、アドレナリンジャンキーとホワイトナックラーの「恐怖の制御」「恐怖度の自覚」「消費者満足度」などが調査されたところ、初めにどのような戦略を選ぶかで恐怖度の自覚が異なることがわかりました。両者ともに消費者満足度は同じくらいだったのですが、アドレナリンジャンキーはホワイトナックラーに比べてより強い恐怖体験を報告していたのです。

この研究によって明らかになったのは「没入」という感覚が恐怖のカギとなっているということ。ホワイトナックラーたちは「これはチェーンソーを持った殺人鬼ではなくて猫が歩いている音……」などと自分に言い聞かせることで恐怖を最小化することが研究では示されました。「没入」の感覚を妨害することで恐怖感を制御していたのです。しかし、だからといって恐怖が全て消えてしまうわけではありません。 統計的確率で自分をごまかすことはできても、人間を生存させるための「恐怖」そのものを消し去ることは不可能とのことです。

by it's me neosiam

そして、それぞれの取る戦略によって恐怖度の自覚が異なりながらも、消費者満足度が同じということはつまり、消費者が故意に恐怖度を上げ下げすることによって自分に最適化した「恐怖度のスイートスポット」を見つけ出しているということだと研究者たちはみています。

Clasen氏はお化け屋敷研究の追跡調査を行っているところであり、今回は参加者に心拍モニターを取り付け、お化け屋敷に赤外線カメラを設置しているとのこと。これにより、行動・表情・心拍数を関係させたより詳細な分析が可能になるとみられています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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