サイエンス

「よく眠れた」と思うことが実際の睡眠の質よりも幸福度に大きな影響を与えるとの研究結果


自分の健康習慣に対する自信は、時に健康的な取り組みそのものに匹敵する重要性を持つことが知られており、過去には「運動した」と思えることが運動そのものと同じくらい重要であるとの研究結果が報告されています。よく眠れたかどうかの認識と、睡眠をトラッキングしたデータを比較した新しい研究により、睡眠の質に対する主観的な感覚が実際の睡眠の状況よりも幸福度に大きな影響を与えることがわかりました。

The influence of sleep on subjective well-being: An experience sampling study.
https://doi.org/10.1037/emo0001268

Trust Your Feelings: Perception of Sleep Quality Outweighs Tracker Data, New Study Reveals
https://scitechdaily.com/trust-your-feelings-perception-of-sleep-quality-outweighs-tracker-data-new-study-reveals/


イングランドにあるウォリック大学心理学部のアニタ・レニス氏らの研究チームは、18歳から22歳の参加者100人に、2週間にわたって睡眠日記をつけてもらう実験を行いました。睡眠日記には、前の晩の就寝時間や寝る準備をした時間、眠りに就くまでの時間、起床時間、睡眠に対する満足度などが記録されました。

また、参加者は日中のポジティブな感情やネガティブな感情、生活への満足度などを1日5回評価するよう求められたほか、研究チームは参加者に睡眠を追跡するセンサーを内蔵したデバイスであるアクチグラフを装着させ、睡眠パターンの情報を収集しました。


そして、研究チームがアクチグラフのデータと参加者の睡眠に対する認識を分析し、それを翌日の気分と比較したところ、「自分の睡眠をどう評価しているか」が翌日の幸福感や生活満足度を左右することが判明しました。これに対し、アクチグラフで測定された睡眠の質は翌日の幸福度になんら影響を及ぼさなかったとのことです。

この結果について、レニス氏は「例えば、参加者が『前の晩は普段に比べてよく眠れた』と報告した場合、その日はよりポジティブな感情を経験し、生活満足度も高くなりました。一方、アクチグラフが収集した睡眠の効率に関するデータは、翌日の幸福感とはまったく関係ありませんでした。これは、アクチグラフで測定された睡眠効率と、睡眠の質に対する自己認識との間には、幸福度の評価に与える影響に差があることを示唆しています」と説明しています。

また、論文の共著者であるアヌ・レアロ氏は、「今回の研究結果は主観的幸福感、特に生活満足度に対しては、実際の健康状態ではなく自己申告による健康状態のほうが大きな要因であるという、私たちの以前の研究結果と一致しています」と述べました。


アクチグラフがなくても、スマートフォンやスマートウォッチを使えば手軽に自分の睡眠データを収集することが可能です。今回の研究により、よく眠れたという認識の方が、睡眠トラッカーで記録した実際の睡眠の質より幸福度に与える影響が大きいことが示されましたが、だからといって睡眠トラッカーを使っても意味がないというわけではないと専門家は指摘しています。

レニス氏は、「睡眠トラッカーが昨晩はよく眠れていなかったと言っても、自分でよく眠れたと思えればその日は気分よく過ごせるでしょう。また、前日の夜がどうだったか覚えていなくても、睡眠トラッカーがよく眠れていたと言っていれば、眠りの再評価に役立つかもしれません。睡眠トラッカーは、眠っている間は自分ではわからない情報を提供してくれるので、昨夜の睡眠に関する主観的な認識を改善し、それによって次の日の幸福感を向上させるのに一役買ってくれる可能性があります」と話しました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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