理想的な睡眠をしていると寿命が延びる可能性がある
人間は一生の3分の1近くを睡眠に充てており、睡眠の質が人生の質を左右するということは多くの人が実感しています。アメリカのベス・イスラエル・メディカルセンターに勤務する医師のFrank Qian氏らが、5つの「有益な睡眠パターン」に当てはまる人ほど死亡リスクが低く、寿命が長いという研究結果を発表しました。
LOW-RISK SLEEP PATTERNS, MORTALITY, AND LIFE EXPECTANCY AT AGE 30 YEARS: A PROSPECTIVE STUDY OF 172 321 US ADULTS | Journal of the American College of Cardiology
https://doi.org/10.1016/S0735-1097(23)02119-8
Getting Good Sleep Could Add Years to Your Life - American College of Cardiology
https://www.acc.org/About-ACC/Press-Releases/2023/02/22/21/35/Getting-Good-Sleep-Could-Add-Years-to-Your-Life
Qian氏らの研究チームは、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)と国立衛生統計センターが毎年実施している国民健康聞き取り調査のデータから、2013年~2018年に参加した17万2321人の回答を抽出。さらに、2019年12月31日までの全国死亡統計のデータと照合し、被験者を中央値で4.3年にわたり追跡した結果を用いて分析しました。
国民健康聞き取り調査に回答した被験者は約3分の2が白人で、14.5%がヒスパニック、12.6%が黒人、5.5%がアジア人だと自己申告したとのこと。データには被験者の健康および睡眠パターンに関する質問が含まれており、追跡期間中に死亡した被験者の死因と睡眠パターンの関連を調べることが可能でした。被験者のうち8681人が追跡期間中に死亡しており、うち2610人(30%)が心血管疾患、2052人(24%)ががん、4019人(46%)がその他の死因で死亡したそうです。
研究チームは被験者の回答に基づいて、質の高い睡眠をもたらす以下の「5つの要因」について評価しました。
1:1日あたりの睡眠時間が7時間~8時間である。
2:なかなか寝付けない日が週に2日以下である。
3:眠り続けられず中途覚醒してしまう日が週に2日以下である。
4:睡眠薬を使用していない。
5:少なくとも週に5日以上は起きた後に「しっかり休息できた」と感じる。
それぞれの要因には0または1ポイントが割り当てられ、研究チームは被験者の睡眠パターンを0~5ポイントで評価しました。研究チームは、死亡率に関連していることがわかっている社会経済的地位、喫煙やアルコール消費、その他の病状といったリスク要因も考慮に入れ、睡眠パターンと死亡率の関連を分析しました。
分析の結果、睡眠パターンのスコアが「0~1」だった被験者と比較して、スコアが「5」だった被験者はあらゆる要因で死亡する可能性が30%低いことが判明しました。具体的には、心血管疾患で死亡する可能性が21%、がんで死亡する可能性が19%、それ以外の死因で死亡する可能性が40%低かったとのことです。
Qian氏は、「これらすべての理想的な睡眠パターンに当てはまっていた場合、その人は長生きする可能性が高くなります」「睡眠の質が高いほどすべての死因と心血管系疾患の死亡率が段階的に低下するという、明確な用量反応関係が見られました。この結果は、十分な睡眠時間を確保するだけでは不十分なことを強調していると思います。安らかな眠りを得て、入眠や睡眠の維持に支障を来さないことが必要なのです」と述べています。
また、スコアが「5」だった被験者の平均余命をスコアが「0~1」だった被験者と比較すると、男性の場合は4.7年、女性の場合は2.4年長いこともわかりました。同じ睡眠スコアであっても男女で平均余命に差が生じる理由を知るには、さらなる研究が必要だそうです。
Qian氏は、「若い頃から十分な睡眠時間を確保し、気を散らさずに眠ることや、睡眠衛生に配慮することなどの良い睡眠習慣を身につけられれば、長期的な健康維持に大きく貢献することができます」と述べ、人々はもっと睡眠について活発に会話し、評価するべきであると主張しました。
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