Amazon・Apple・Google・Microsoftなど大手テクノロジー企業7社がEUのデジタル市場法における「ゲートキーパー」であることを認める
現地時間の2023年7月4日、Googleを傘下に持つAlphabet、Amazon、Apple、TikTokを傘下に持つByteDance、FacebookやInstagramを傘下に持つMeta、Microsoft、Samsungといったテクノロジー業界の大企業が、大企業の市場支配力の乱用を防ぎ新規参入を可能にするために欧州連合(EU)が設けたデジタル市場法(DMA)における「ゲートキーパー」に当たることを認めました。
Here are the first 7 potential “Gatekeepers” under the DMA
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/STATEMENT_23_3674
Amazon, Apple, Google, Microsoft, and TikTok identify as big tech “gatekeepers” - The Verge
https://www.theverge.com/2023/7/4/23783790/eu-digital-markets-act-gatekeepers-apple-google-amazon-meta-tiktok
EUがデジタル市場における独占を防ぐために作成したDMAは、2022年11月1日に発効したばかりの新しい法律です。DMAはアプリストア、検索エンジン、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、メッセージングサービス、ビデオ共有プラットフォームサービス、仮想アシスタント、ウェブブラウザ、クラウドコンピューティングサービス、オペレーティングシステム(OS)、オンラインマーケットプレイス、広告サービスなどのオンライン仲介サービスを「コアプラットフォームサービス」と定義しており、これを提供している企業は「ゲートキーパー」としての資格を有しているとしています。
DMAによるゲートキーパーの基準は以下の3つ。
1:国内市場に影響を与える規模
企業が欧州経済領域(EEA)で一定の年間売上高(「過去3会計年度の欧州での年間売上高が少なくとも75億ユーロ(約1兆2000億円)」あるいは「過去3会計年度の公正市場価値が少なくとも750億ユーロ(約12兆円)」)を達成しており、少なくとも3つのEU加盟国でコアプラットフォームサービスを提供している場合。
2:ビジネスユーザーから最終消費者への重要なゲートウェイの制御
企業がEU内に設立または拠点を置く月間アクティブエンドユーザー4500万人以上、およびEU内に設立された年間アクティブビジネスユーザー1万人以上にコアプラットフォームサービスを提供する場合。
3:確立された永続的な立場
企業が過去3年間で2つ目の基準を満たした場合。
なお、DMAはゲートキーパーが「やるべきこと」と「やってはいけないこと」を定義しており、その具体例が以下です。
◆やるべきこと
・特定の状況において、サードパーティーがゲートキーパー自身のサービスと相互運用できるようにする。
・ビジネスユーザーがゲートキーパーのプラットフォームを使用する際に生成したデータにアクセスできるようにする。
・プラットフォーム上で広告を掲載する企業に対し、広告主やパブリッシャーが、ゲートキーパーがホストする自社広告を独自に検証するために必要なツールと情報を提供する。
・ビジネスユーザーが自社のオファーを宣伝し、ゲートキーパーのプラットフォーム外で顧客と契約を締結できるようにする。
◆やってはいけないこと
・ゲートキーパー自身が提供するサービスや製品を、ゲートキーパーのプラットフォーム上でサードパーティーが提供する同様のサービスや製品よりもランキングにおいて有利に扱うこと。
・消費者がプラットフォーム外の企業にリンクするのを防ぐ。
・ユーザーが希望する場合であっても、プリインストールされたソフトウェアまたはアプリをアンインストールできないようにする。
・有効な同意を得ることなく、ターゲットを絞った広告を目的として、ゲートキーパーのコアプラットフォームサービスの外でエンドユーザーを追跡すること。
なお、このルールに違反した場合、企業は全世界売上高の最大10%、違反を繰り返した場合は最大20%の罰金を科せられる可能性があります。さらに、欧州委員会は違反を繰り返した場合には「市場調査を行い、必要に応じて行動的、あるいは構造的な罰則を科す可能性もある」とも説明しています。
The Digital Markets Act: ensuring fair and open digital markets
https://commission.europa.eu/strategy-and-policy/priorities-2019-2024/europe-fit-digital-age/digital-markets-act-ensuring-fair-and-open-digital-markets_en
EUは現地時間の2023年7月3日を「大規模な組織的プラットフォームがDMAに基づくゲートキーパーとしての資格を得る基準を満たしていると欧州委員会に通知することができる期限」としていました。
この期限内にゲートキーパーの基準を満たしていると宣言したのが以下の7社だったとEUが発表しています。
・Alphabet
・Amazon
・Apple
・ByteDance
・Meta
・Microsoft
・Samsung
今後、EUは上記の7社からの提出書類を確認し、2023年9月6日までに特定のプラットフォームサービスにおけるゲートキーパーを指定する予定です。なお、ゲートキーパーに指定された企業は、DMAに従うために6カ月の猶予期間を与えられることとなります。
EUは「これにより消費者はより多くのサービスの中から自分に合ったサービスを選択できるようになり、これによりプロバイダーを切り替える機会が増え、より良い価格とより高品質なサービスの恩恵を受けることが可能になります。そして、革新的な企業が新たな顧客を獲得することを妨げられることはなくなります」と記しています。
ロイターの報道によるとByteDanceはDMAの基準を満たすと通達しているものの、リストへの掲載には異議を唱えています。一方で、Booking.comは2024年にはリストに掲載される予定であるとEUに通達したそうです。
U.S. Big Tech says it meets EU gatekeeper status, TikTok criticises label | Reuters
https://www.reuters.com/technology/amazon-google-apple-meta-microsoft-say-they-meet-eu-gatekeeper-status-2023-07-04/
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