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EUの新規制をめぐって繰り広げられている「デジタルロビー活動」の実態とは?


EUではGoogle、Apple、Facebook、Amazonなどの大手IT企業を対象に「デバイスに自社アプリだけをプリインストールすること」などを禁止する強力な新規制の制定が進行中です。EU一般データ保護規則(GDPR)以来の大型規制とみられるこの動きに対し、大手IT各社はすでにロビー活動を展開しており、その内容もインターネットの普及や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策を踏まえた「デジタルロビー活動」に様変わりしていると、政治に特化したニュースサイト・Politicoが報じています。

Big guns and Zoom cliques: Inside Silicon Valley’s digital lobbying playbook – POLITICO
https://www.politico.eu/article/europe-digital-lobbying-platforms/

Politicoによると、欧州委員会(EC)ではデジタルサービス法(DSA)とデジタル市場法(DMA)という2つの大型規制の制定を目指した議論が進められているとのこと。その具体的な内容は記事作成時点では不明ですが、大手IT企業らに対して欧州事業の分割多額の罰金を迫るような極めて強力な規制になるとみられています。

GDPRが制定された時と同様に、今回のDSA・DMA両法制定に際しても活発なロビー活動が展開されており、2020年3月頃からは特に対面での会議がWeb会議サービスZoomや、メッセンジャーアプリのWhatsAppなどを用いた「デジタルロビー活動」に変わりつつあるとのこと。


水面下で行われてきたロビー活動が、これまで以上に不透明で市民の目に届きにくいものになっていることから、Politicoはその実態を明らかにすべく数十人のロビイストやEUの要人に対する取材を実施。その結果から判明した「デジタルロビー活動」の模様を、以下の5点にまとめています。

・会議の回数ではGoogleがリードしている
ロビー活動の監視機関であるCorporate Europe Observatory調べでは、これまで通算160回開催された会議の内、最も多くの会議に出席したのがGoogleのロビイストで、MicrosoftとFacebookがこれに続いていることが分かっています。

・CEOロビイストの台頭
新規制に携わっているというフランス人実業家のティエリー・ブルトン氏は、自身も大企業の元CEOであることから、「自分はトップクラスの幹部としか話さない」と公言しています。こうした流れの結果、豊富な人脈を持つ大企業は政策立案者と接触しやすくなった一方で、小規模な企業や市民団体は苦戦を強いられているとのことです。

・巨大企業同士が公然と争っている
IT企業は通常、協力してロビー活動を行い影響力を最大化させる戦略を取ります。しかし、目下ECが見直しを進めている独占禁止法をめぐっては互いに意見が割れており、その対立はFacebookがApp Storeの不正でAppleを非難する傍らで、Microsoftが他企業が持つような大規模プラットフォームの規制を提言するといった形で表面化しています。

・主戦場が途中で場所を変えた
GoogleやFacebookらは当初、コンテンツのモデレーションに関する規制に焦点を当てていましたが、2020年の夏ごろからはオンライン市場への新規参入に関する競争規定に主眼を移したとのことです。

・1つの大失態が明るみに出た
Googleが5月に公共政策チームの編成を進めていた際、ブルトン氏の弱体化を狙った内部的な「ロビー活動計画」が流出してしまい、Googleはブルトン氏への謝罪を余儀なくされました。Politicoに情報を提供したEU当局者2人は、この一件でEC内でのGoogleの立場が厳しいものになったと話しています。

by GuillermoJM

またPoliticoによると、EUのIT企業の競争力を高めることを目的にしているDSAに関する議論が、COVID-19の影響で停滞しているとのこと。DSAが大手IT企業らの脅威ではなくなった一方で、独占禁止法の見直しを骨子としたDMAが存在感を増しており、その影響でデジタル著作権に関する運動家や非営利団体が蚊帳の外に置かれてしまっているそうです。

さらに、COVID-19により対面での議論がWhatsAppやZoomを駆使したものに変化した結果、ロビー活動がロビイストの個人的な人脈に依存したものとなりつつあるなど、COVID-19の影響は広範に及んでいます。

こうした「デジタルロビー活動」の実態について、Politicoは「ヨーロッパにおけるデジタル業界のルールブックを書き換える動きにより、ほぼ完全にバーチャルな領域で行われる新しい種類のロビー活動が誕生し、これまでにない戦術や派閥が生まれることとなりました」と述べました。

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in ネットサービス, Posted by log1l_ks

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