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Huawei制裁緩和にはチップメーカー各社のロビー活動が大きく影響している

by DocChewbacca

Huaweiへの制裁に関して、アメリカ政府が「安全保障に影響しないローテク製品に限って輸出を認めること」「半導体は年10億ドル(約1080億円)未満の小規模であればHuaweiに販売可能」だとすることを発表しました。この制裁緩和はアメリカ国内のチップメーカーのロビー活動の結果だということが、関係者の情報から明らかになっています。

How U.S. Chipmakers Pressed Trump to Ease China’s Huawei Ban - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-07-02/how-u-s-chipmakers-pressed-trump-to-ease-huawei-export-controls

2019年5月にアメリカのトランプ大統領が「情報通信上のリスクがある外国製品の取引を禁止する」という大統領令に署名したことで、Huawei製スマートフォンにOS・Android提供するGoogleや、スマートフォン向けチップセットなどのパーツを製造するIntel・Qualcommが相次いでHuaweiとの取引停止を発表しました。また一時的ではあるものの世界最大の学会が「Huaweiの科学者による論文査読を禁止する」と発表するなど、アメリカ国内外のさまざまな産業が大統領令の影響を受けましたが、7月2日、ピーター・ナヴァロ大統領補佐官がHuaweiに関して「安全保障に影響しないローテク製品」に限って輸出を認めると明らかにしました。限定的ではあるものの、制裁緩和が行われることになったわけです。

ニュースメディアBloombergの記者であるJenny Leonard氏とビジネス・コラムニストのIan King氏がこれに対し、「制裁緩和はアメリカのチップメーカーのロビー活動が功を奏したものである」と記しています。2人によると、アメリカの半導体産業は、制裁がアメリカの経済をいかに傷つけ国家的危機に結び付くかを、アメリカ商務省に対しミーティングや書簡を通して主張し続けたとのこと。

半導体産業の業界団体・Semiconductor Industry Association(SIA)はIntel・Broadcom・Qualcommといった企業が代表する団体です。Bloombergによると2019年5月、チップメーカーの代表がアメリカ商務省のウィルバー・ロス氏やスティーブン・ムニューシン氏と会合し、輸出禁止対象企業一覧である「エンティティリスト」にHuaweiを記載することは、アメリカを危機にさらすと述べたことが関係者の情報から明らかになっています。

by Kārlis Dambrāns

Huaweiを中心とする貿易戦争によって、アメリカのチップメーカーは厳しい状況に置かれることになりました。というのも、中国はチップメーカーの売上全体の3分の1を占める、最も大きな市場だからです。SIAは、Huaweiやその関連企業に対する輸出の全てがセキュリティ的に危険であるわけではなく、またHuawei自体はアメリカ以外の企業によってコンポーネントを補うことが可能であることを強調したとのこと。チップは多大なコストを支払って研究開発が行われており、収益が失われることでアメリカの競争力自体が損なわれてしまう可能性があります。

Bloombergが入手した書簡の中で、SIAは「過度に広範な規制はアメリカの半導体企業が世界でビジネスを行うことを困難にするだけではなく、アメリカ企業を『危険で信頼できない』というポジションに置き、そのインパクトは国家安全保障にまで及ぶでしょう」と記しています。この交渉に関わる人々によると、チップ産業の関係者は「チョークポイントがある」という点、つまり、エンジニアのサポートやデバイスにチップを統合するソフトウェアをのぞいてチップだけを輸出する状態でも、Huaweiをスローダウンさせることはできると主張しました。あくまで業界団体が求めたのは「制裁をやめること」ではなく「範囲を限定すること」だったとみられています。

このロビー活動が功を奏したためか、2019年6月29日に行われた習近平国家主席との会談後、トランプ大統領はアメリカの企業に対してHuaweiとの一部取引を認める意向を発表。

その後、7月2日にナバロ氏は、Huaweiの5Gネットワークへの関与は依然として「国家安全保障上の懸念」としたものの、中国が貿易交渉に応じるならば「低レベルのチップを少量」販売することについては問題ではないと示しました。

by Christoph Scholz

一方で、依然としてトランプ政権の目指すところは不明です。トランプ大統領は「貿易交渉が最終段階になった時にHuaweiについて何をすべきかという決断を下す」と述べています。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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