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Huawei創業者が「Androidサポート終了」や「チップメーカーとの取引停止」など、アメリカ政府によるHuawei排除の動きについて語る

by Open Grid Scheduler / Grid Engine

Huaweiの任正非CEOが中国メディアと行った2時間超の対談の中で、「アメリカで加速するHuawei排除の動き」について回答しています。このインタビュー記事を翻訳し、特にポイントとなる部分をAndreessen Horowitzがまとめています。

Field Notes: Highlights from Huawei – Andreessen Horowitz
https://a16z.com/2019/05/29/field-notes-highlights-from-huawei/

◆アメリカとの貿易について
アメリカのトランプ大統領は中国製品に対する関税引き上げを宣言していますが、これについて任正非CEOは「我々にとっては意味のないことです。我々は既に(制裁に対処するため)準備を進めています。それでも我々はアメリカ企業に非常に感謝しており、彼らが我々に対して行ってくれた多大なる貢献に感謝したい」とコメント。

アメリカによるHuaweiへの圧力について、任正非CEOは「誰かを叱りたいなら、アメリカの政治家を叱ってください。この問題はアメリカ企業に関係するものではありません。アメリカは法律による支配を尊重しています。アメリカ企業は法律を遵守するしかありません。アメリカの政治家たちによる圧力は、我々のビジネスの強さを過小評価したものです」と語っています。


さらに、「アメリカには他のあらゆる国に対して『Huaweiとの取引を止めるように』と促す力はありません。どの国も独自の対外投資計画を持っており、中国メディアは過度に感情的になる必要はありません」と、アメリカ以外との取引については大きな問題は起きないという楽観的な考えを任正非CEOは明かしています。

◆HuaweiがGoogleのAndroidサポートを停止された件について
GoogleがHuaweiのAndroidサポート停止を発表し、今後のHuawei端末ではGoogle製のモバイルOSであるAndroidが採用できなくなりました。

GoogleがHuaweiのAndroidサポートを停止、今後のHuaweiスマホはGoogle PlayなどのGoogleサービスが一切利用できなくなる模様 - GIGAZINE


この問題について任正非CEOは、「Googleは責任ある良き企業です。GoogleとHuaweiはソリューションを実装する方法を共に協議しています。我々は新しいOSを作ることもできますが、それは必ずしも既存のOSの代わりにはなりません」と語り、ウワサされていた独自OSの開発よりも、Androidを再びHuawei端末に取り戻すことを優先しているとしています。

◆マイクロチップ
Googleに続く形で、IntelやQualcommといったチップメーカーもHuaweiとの取引を停止しています。

IntelやQualcommもHuaweiとの取引を停止、Huawei製品のAndroidサポートは8月まで延長 - GIGAZINE


これについて任正非CEOは、「(我々の製品は)アメリカのチップなしでは簡単に機能しません。我々は一緒に成長していきたいと考えていますが、供給が困難な場合のためのバックアップ計画も立てています。これまでの混乱の少ない時期には、(Huawei製品では)アメリカ製チップを半分、もう半分をHuawei製チップで賄ってきました」と語り、チップメーカーとの取引停止が大きな影響を与えることを示唆しています。

続けて、「我々のチップは(アメリカ製のものと比べて)はるかに安いですが、私たちはアメリカ製チップを購入しています。我々は世界に溶け込むべきであり、アメリカ企業は我々に対してとても友好的だと思います。我々がアメリカのものを組み込むことで、Huaweiは存続・繁栄することができました。我々のこれまでの功績は単なるニュース報道では壊すことができません。将来的には、我々はまだまだアメリカ企業と協力していく考えです。しかし、そのためにはまずアメリカ政府の承認を得る必要があります。我々はアメリカ製のものと同等のチップを開発することができますが、それがアメリカ製チップを買いたくないということにはつながりません」と任正非CEOは語り、アメリカ製チップと同等のものを製造できるとしつつ、あくまでアメリカ企業と共に歩んでいく道を模索するとしています。

◆Huaweiと5Gについて

by Anastasia Dulgier

任正非CEOは第5世代移動通信システム(5G)について、「5Gで扱えるデータ容量は4Gの20倍、2Gの1万倍であり、消費電力は従来の10分の1程度で済みます。我々はヨーロッパと非常に綿密に議論を繰り返しており、ヨーロッパでHuawei製の基地局を導入すれば1つにつき1万ユーロ(120万円)も節約することができます」と語り、アメリカから除外されたとはいえ、ヨーロッパではまだまだ勢力を伸ばすことができると予想。

加えて、「5G技術に関しては他の企業が2~3年はHuaweiに追いつくことはできません。この技術に関して、我々はアメリカをリードしているので、この件がHuaweiに打撃を与えることはありません」としています。

◆アメリカ政府によるHuawei排斥の動きについて
「Huaweiは間違いなくお客様にサービスを提供し続けます。先週は中国で5Gネットワークの入札がありました。そして、中国の40都市のうち37都市をHuaweiが獲得しました。我々の生産能力は重要です。アメリカによるHuawei排斥の動きにより部品が足りないということもありません。我々の成長率はあまりにも速く、我々の想像以上です。第1四半期は39%増収で、マイナスの成長を記録したり業界の成長に害を及ぼしたりすることはありませんでした」と任正非CEOは語っています。

中国ファーウェイ、第1四半期は39%増収 - ロイター
https://jp.reuters.com/article/huawei-results-idJPKCN1RY09C

◆アメリカの技術について
任正非CEOはアメリカについて、「アメリカの技術の深さと幅は、まだまだ感心すべき価値のあるものです。多くの中小企業は高度で正確な製品を持っています。我々は5Gビジネスでは最前線に立っていますが、中国の全体的な技術と比較すれば我々の技術はアメリカからかなり遅れをとっています」と述べています。

◆スペアタイヤプラン
Huaweiはアメリカからのチップ供給が完全に停止した場合に備えて、マイクロチップを安定供給するためのバックアッププランとして「スペアタイヤプラン」なるものを計画しています。

任正非CEOは「すでに多くの部品が生産に入っていますが、まだ注文中のパーツも存在します。スペアタイヤプランには含まれない重要なプロダクトもありますが、これらの製品は悪影響を及ぼす可能性があるため、遅かれ早かれ製造が中止となります。なお、製造中止の可能性が我々の最も先進的な分野に影響を及ぼすことはありません」と語り、スペアタイヤプランが完璧なものではないことを認めつつ、Huaweiのコアビジネスに影響を与えることはないとしています。

また、「Huawei製の自家製チップをスペア部品として使用することは、我々が生き残るためには論理的な考えです。確かに、アメリカによる制裁は我々のような長い事業の歴史を持つ企業であっても大きな問題となるような出来事です。そのため、我々は状況によってはスペア部品を使用しなければいけなくなります。そして、チップの準備が出来ていなかったとしても、状況によってはチップを使わざるを得ません」と説明しています。

by Alexandre Debiève

◆Appleについて
「私の家族はApple製のスマートフォンを使用しています。Appleのエコロジーはとても良いものです。家族が海外に旅行する場合、私も家族にApple製品を贈りたいと思います。あなたがHuaweiを愛しているからといって、『あなたはHuawei製のスマートフォンだけを使用しなければいけない』といった心の狭いことを考えることはありません。現時点で、Huaweiに対する一般の感情は2つあります。1つは『愛国者ならばHuawei製品を買うべき』というもので、もう1つは『Huaweiが中国人の愛国心を利用している』というものです。結局のところ、私の子どもたちはHuawei製品を愛しておらず、Apple製品を愛しています」と語り、自身の親族がHuawei製品よりもApple製品を好んでいることを明かしています。

◆その他
任正非CEOは「我々は2000年頃にチャレンジを経験しました。当時、我々はアメリカ企業に100億ドル(約1兆円)で会社を売却する準備をしていました。すべての契約が調印され、すべての手続きが完了したかに思えましたが、彼ら(買収企業)の取締役会が承認するのを待つ必要がありました。承認を待つ間、我々はカラフルな水着に身を包み、ビーチを走り、サッカーに興じて過ごしました。しかし、結局は買収企業の取締役会はメンバーが変更され、買収は拒否されてしまいました」と、2000年頃に一時は企業を売却しようとしていたことを明かしています。

続いて、「我々はアメリカ企業にHuaweiを売却する予定だったため、アメリカ人が中国でビジネスを進める手助けをしようと考えていました。その後、我々の社内の若い世代は企業売却に反対していたことがわかったため、私は『我々は最終的にアメリカ人と競争することになるので、何かに備える必要があります』と語り、何でも準備するように言いました。そして、その日以来我々は準備を続けてきたわけです」とコメント。

また、「我々の最大の社会的責任は人間とのつながりを築くことです。世界中で30億人が我々とつながっており、西欧諸国がそれほど注視しないアフリカとも強いつながりを持っています。ある意味、Huaweiが存在しなければ、世界はより多くの脅威と課題を抱える場所になると言えます」とも語っています。

by Toa Heftiba

そのほか、任正非CEOは「過去の中国の政策は大規模な金銭的投資を行うことでしたが、お金を生み出すには多額の資金を投じるだけでは十分ではありません。我々は中国で数学者や物理学者を教育することに焦点を当てるべきですが、それでは中国で大学に進学している人は何人いるのでしょうか。単一の国に頼ることが不可能であることは明らかで、中国にはたくさんの才能が存在するものの、世界中から才能を見す必要があります。中国の物理学者や化学者によりイノベーションのみに頼ることは不可能です。中国で起こる技術革新だけに頼ることは不可能です。なぜ我々この世界を受け入れ、世界中で起こるイノベーションに頼ることができないのでしょうか。我々は他国から学ぶべきです。最高の技術革新が存在するところこそ、我々がいるべき場所です」と語り、多くの技術革新が起こるテクノロジー業界を生き残るには、中国以外の国々にも目を向けるべきであるとしています。

そして、「我々(中国)は世界を受け入れるための政策を考え出さなければいけません。東ヨーロッパの国々は比較的貧弱と思われがちですが、アメリカの多くのアイデアは東ヨーロッパに広がっています。そして、東ヨーロッパの人々が中国にやって来て、彼らの故郷として中国を使っています。中国は産業技術、化学、神経学、脳科学、そしてその他の重要な分野を学ばなければいけません。そうして初めて、我々はこの世に立ち上がることができるのです」ともコメントしています。

by chuttersnap

なお、中国メディアによるHuaweiの任正非CEOへの2時間にもおよぶインタビューの全文は以下からチェックできます。

网易创业Club
https://mp.weixin.qq.com/s/BkPvcbVU-ogZcWwFkKQqEw

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in モバイル,   ソフトウェア,   ハードウェア, Posted by logu_ii

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