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「1万円以上の報酬で偽レビューを投稿」「星1レビューを付けたユーザーを脅迫」などの行為をはたらく不正グループと戦う女性の記録


ネット通販で商品を購入したり街中でレストランを探したりする際、オンラインに投稿されたユーザーレビューを参考にするという人も多いはず。しかし、「オンラインのレビューは最大3割がフェイク」とも言われており、悪質な店のオーナーや企業はオンラインのレビューを捏造(ねつぞう)して自分たちの評価をつり上げています。そんなオンラインの偽レビューやレビューグループについて「Fake Review Watch」というウェブサイトやYouTubeチャンネルで発信しているケイ・ディーン氏を、カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とするニュースサイトのSFGATEが取り上げています。

Bay Area woman on a crusade to prove Yelp reviews can't be trusted
https://www.sfgate.com/tech/article/yel-review-fraud-kay-dean-18150617.php


2004年にサンフランシスコで設立されたレビューサイトのYelpには、さまざまな店や企業についてのユーザーレビューが投稿されています。Yelpには膨大な数のユーザーレビューが日々投稿され、Appleマップをはじめとするサービスともパートナーシップを結んでおり、今やアメリカの消費者習慣に深く根付いています。ところが、Yelpに投稿されるレビューは必ずしも役に立つものばかりではなく、組織的に投稿された「フェイクレビュー」も存在しているそうです。

カリフォルニア州サンノゼに住むケイ・ディーン氏は2017年のある日、Yelpに星1レビューを投稿したSavantCareという精神科クリニックから、「否定的なレビューを削除しなければ訴える」という手紙を受け取りました。かつてアメリカ合衆国教育省の監察官として勤務していたディーン氏は、SavantCareから受け取ったこの手紙を不審に思って調査に乗り出したとのこと。

ディーン氏はSavantCareに投稿されたさまざまなレビューをチェックしました。その結果、「Melissa R.」という人物が「私はSavantCareから肯定的なレビューを残すために金銭を提供されました。怪しい会社に違いありません」と、証拠のスクリーンショット付きで投稿した星1レビューを発見しました。


さらに調査を進めたところ、SavantCareに肯定的なレビューを投稿しているレビュアーは、Facebookでつながっている「レビューグループ」のメンバーであることがわかりました。こうしたフェイクレビューを投稿するFacebookグループは複数存在しており、ポジティブな偽レビューをYelpやGoogleに投稿する代わりに金銭を受け取っているとのこと。

実際にディーン氏がFacebook上で偽アカウントを作成してグループに参加したところ、「SavantCareについて肯定的な150語程度のレビューを投稿する代わりに報酬を渡す」というオファーが送られてきました。


ディーン氏はSavantCareに肯定的なレビューを投稿したレビュアーをリスト化し、その他の投稿したレビューに「疑わしいパターン」があるかどうかを調べました。その結果、SavantCareにレビューを投稿した17人のうち10人はロサンゼルスの同じ歯科医院のレビューを投稿しており、9人はカリフォルニアの同じDJ会社の、5人がマウンテンビューの同じタトゥーショップの、さらに5人がフロリダの同じ引っ越し業者のレビューを投稿していることが判明しました。

ディーン氏はこれらの証拠をまとめてサンタクララ郡地方検事局に送付すると共に、脅迫的な手紙を受け取った件でSavantCareに対して少額訴訟を起こし、2018年3月には「過失による精神的苦痛の侵害」で275ドル(当時のレートで約3万円)の慰謝料を受け取ることに成功しました。なお、手紙に記されていた弁護士に連絡を取ったところ、弁護士自身はその手紙に署名した覚えはなく、SavantCareが勝手に名前と署名を借用したことも発覚したとのこと。

そして2020年3月、サンタクララ群地方検事局はSavantCareの元CEOであるヴィカス・ケディアを、「個人情報の無断使用」「無許可の法務行為」といった3つの重罪と2つの軽犯罪で告発しました。2023年6月21日に次の公聴会を控えているケディアは、SFGATEの問い合わせに返答しませんでした。


ディーン氏はフェイクレビューやレビューグループの問題について啓発するため、SavantCareの問題が解決した後も市民調査員としての活動を続けています。Facebookのレビューグループに潜入したディーン氏は、ビジネスオーナーやブローカーが、質の高いレビューを投稿しているとYelpに認定された「Yelp Elites」のユーザーから100ドル(約1万4000円)で肯定的なレビューを購入していることも確認しました。Yelp Elitesのレビューはプラットフォームの推奨アルゴリズムによって優先表示されやすく、レビューとしての効果が高いとのこと。

Yelp Elitesのユーザーが投稿したフェイクレビューをチェックしたところ、トリップアドバイザーなどその他のウェブサービスから転載したものだったり、建築業者のレビューに添付した写真がストックサイトのものだったりするケースもあったとディーン氏は指摘しています。

ディーン氏と話をしたあるビジネスオーナーは、Yelpユーザーから「あなたの店に偽の星1レビューを投稿したが、お金を支払えば星5レビューに書き換える」という脅迫を受けたとのこと。ビジネスオーナーは「Yelpにレビューを掲載されないようにする」という選択肢を選べないため、脅迫のために偽の星1レビューを投稿されたとしても非表示にすることはできません。


Yelpもある時点で、ディーン氏が動画で紹介した偽レビューや疑わしいユーザーを大量に削除するなどの対策を取りましたが、依然として活動を続けている不正ユーザーは数多く残っています。ディーン氏はYelpの対処が場当たり的なものであり、10億ドル(1400億円)規模のテクノロジー企業の責任として、偽レビューを積極的に取り締まるべきだと批判しました。

Yelpの広報担当者はSFGATEに対し、同社は偽レビューを取り締まる業界のリーダーであると主張。「Yelpはプラットフォーム上のコンテンツの整合性と品質を保護するために、テクノロジーと人間のモデレーションに多額の投資を行っており、ユーザーを欺く試みを積極的に調査します」と述べました。しかし、企業に対するポジティブなレビュー自体がYelpの価値を高める可能性があるため、Yelpはあえて偽レビューの取り締まりを回避している可能性もあるとディーン氏は指摘しています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴う偽レビューの急増やAIが生成したレビューの登場により、今やオンラインのレビューは信頼できないものとなりつつあります。ディーン氏は、「オンラインレビュープラットフォームは本当に巧妙な技術革新であり、最初は消費者にとっての恩恵として始まりました。しかし、私はハイテク企業が本当のフランケンシュタインのモンスターを作成してしまったと思っています。それはまさに制御不能です」と述べました。

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in ネットサービス, Posted by log1h_ik

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