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Appleは間もなくリリース予定の複合現実(MR)ヘッドセットで「独自の厳格なルールを破った」


Appleは今後数週間以内に、同社史上最も実験的で型破りな製品となるであろう複合現実(MR)ヘッドセットの「Reality Pro」を発表するとウワサされています。そんなAppleのMRヘッドセットについて、「MRヘッドセットでAppleは独自の厳格なルールを破った」と報じられました。

Apple Is Breaking Its Own Rules With a New Headset - WSJ
https://www.wsj.com/articles/apple-is-breaking-its-own-rules-with-a-new-headset-80c9b36c

Apple anticipates 'some production issues' for inbound headset
https://appleinsider.com/articles/23/05/13/apple-bracing-for-potential-mixed-reality-headset-production-issues


情報筋によると、Appleが開発中のReality Proは拡張現実(AR)と仮想現実(VR)の両方をひとつの端末で楽しむことができるMRヘッドセットです。例えば、ゲーマーであればMRヘッドセットのスクリーンを通してゲームの世界に没入することが可能。また、端末には周囲の環境を捉えるためのカメラが搭載されているので、ユーザーはヘッドセットを装着したまた現実世界を認識することもできます。

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Appleのエンジニアと幹部は2023年6月に開催予定の年次開発者向け会議であるWWDCの中でReality Proのデモンストレーションを披露するために、プレゼンテーションの準備を何カ月もかけて進めてきた模様。しかし、Appleのサプライチェーンに詳しい情報筋によると、Reality Proがユーザーの手元に届けられるのは「早くても2023年秋頃」となるそうです。

また、Appleの製品開発に詳しい人物は、「Appleの従業員やサプライヤーの中には、MRヘッドセットを新しいソフトウェアと統合し、より広範な市場に投入することを考慮すると、製品開発を遅らせる必要があるのではと疑問視する人もいます」と語っており、社内でもReality Proの完成について懐疑的な声が存在することを明かしています。そのため、ウォール・ストリート・ジャーナルは「AppleのMRヘッドセットのリリーススケジュールが変更される可能性は十分にあります」と指摘しました。


AppleのReality Proについて、ウォール・ストリート・ジャーナルは「製品が完全な形で世に送り出される他のApple製品とは対照的に、Reality Proは未完成のプロダクトを暫定的に市場に投入するようなものです」と指摘。なお、Reality Proを「未完成のプロダクト」と指摘する理由のひとつは、同デバイスはバッテリーを本体と一体型にしておらず、有線ケーブルで本体と接続するように設計しているとウワサされているためです。この点について、ウォール・ストリート・ジャーナルは「Apple製品における典型的な『洗練された最小限のプロダクトデザイン』に沿わない、デザインにおける大きな譲歩のひとつ」と指摘しています。

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この他、Reality Proの販売価格が3000ドル(約40万円)程度と見込まれる点について、「多くの消費者にとって手の届かない価格である」とウォール・ストリート・ジャーナルは指摘。加えて、AppleはすでにReality Proの生産時に問題が発生すると予測しているとも報じています。

Appleの幹部や技術アナリストによると、同社は「理想的なMRヘッドセットの開発」にあまりにも多くの時間がかかり過ぎていると感じており、競合他社がすでに複数の製品をリリースしており、MRヘッドセットの開発にすでに多額の資金を投入していることを踏まえて、「MRヘッドセットの発売をこれ以上延期することはできない」と判断した模様。

一部の投資家などの間では、消費者がVRヘッドセットやMRヘッドセットを用いてメタバースにお金と時間を費やすかどうかについては懐疑的な見方が広がっているそうです。一部のアーリーアダプタ―がこの技術に幻滅しているとも指摘されています。

また、複数のVRヘッドセットをリリースしており独自のメタバース構築に奔走するMetaについて、「最新のVRヘッドセットの売上を維持することに苦心している」とウォール・ストリート・ジャーナルは指摘。ディズニーも独自のメタバース戦略を進めていたものの、この部門を閉鎖したことが明らかになっています。Microsoftは2017年に買収したソーシャル仮想現実プラットフォームを閉鎖し、アメリカ軍とのプロジェクトの一環として開発を進めていたヘッドセットの製造チームを解散しました。上記の事例からもわかるように、Appleが新規参入しようとしている市場は、まだまだ安定して成長を続ける市場とは言い難い、厳しい市場です。


ただし、Appleにはこれまで世間の懐疑的な見方を覆し、消費者に自社製品を迅速に広めてきた数々の実績があります。iPod以前のデジタル音楽プレイヤー市場は非常に小さなもので、iPhone登場前のスマートフォン市場も物理的なキーボードを備えた不格好なものでした。さらに、Apple Watch登場前のウェアラブル端末市場も、ハイテク業界で働く人々以外にはあまり興味関心を抱かれないニッチな市場でした。しかし、いずれの市場もAppleが参入したことで急速に拡大しています。

業界関係者の中にはAppleのMRヘッドセットがメタバース関連市場全体を活性化させる可能性があると期待する人もいます。AppleのMRヘッドセットを試用した人の中には、その性能は他社製品をはるかに上回り、より高いレベルのパフォーマンスと没入感を得られると語る人もいるそうです。

IDCのリサーチマネージャーであるジテッシュ・ウブラニ氏は、「大衆向けのVRでは、ゲーム以外のキラーアプリがまだまだ欠けています」と言及。iPodには音楽が、iPhoneにはデジタルカメラや電話機能、ウェブブラウザ機能などがありましたが、MRヘッドセットではどういったアプリがユーザーの購買意欲をそそることになるのか、まだまだ明確になっていないというわけです。


情報筋によると、AppleのMRヘッドセットの量産は、製造の遅れにより2023年9月以降になると見込まれています。Apple関連情報に詳しいアナリストのミンチー・クオ氏は、2023年の出荷台数を20万台から30万台程度と見積もっており、これはiPhoneやApple Watchの初期モデルの初年度生産台数よりもはるかに少ない数字です。

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in ハードウェア, Posted by logu_ii

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