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内部告発者のほぼ全員が嫌がらせを受けており70%はすぐに解雇されるか辞職を余儀なくされる、最悪の場合は殺害されることも


企業や組織における不正を世に広く知らしめる内部告発者は、権力の腐敗や世の中の不平等を是正する上で重要な役割を果たしています。しかし、権力に逆らった内部告発者は厳しい逆風にさらされることも多く、解雇されるか辞職を余儀なくされることも多いとのこと。そこで、2021年にApple社内にはびこる性差別や安全面の問題を告発し、「無期限の休職」を求められた元エンジニアリングプログラムマネージャーのAshley Gjøvik氏が、さまざまな資料に基づいて「内部告発者がどれほど厳しい境遇に置かれるのか」を説明しています。

Whistleblowers Are the Conscience of Society, Yet Suffer Gravely For Trying to Hold the Rich and Powerful Accountable For Their Sins | CovertAction Magazine
https://covertactionmagazine.com/2023/04/25/whistleblowers-are-the-conscience-of-society-yet-suffer-gravely-for-trying-to-hold-the-rich-and-powerful-accountable-for-their-sins/


Gjøvik氏は、「不正行為を発見した現代の内部告発者は『笛を吹いて』その脅威を世間に知らせます。内部告発者は公益の早期警戒信号として、または防御壁として機能します」と述べ、内部告発の多くは人権侵害や環境破壊など社会的に重要な事柄と関係していると指摘しています。

これまでに「情報漏えい者になりやすい人の傾向にはどんなものがあるのか」といった点に注目した研究が複数行われ、教育レベルや誠実さ、スピリチュアルなものへの信仰、道徳心などとの関連が指摘されています。しかし、Gjøvik氏はこれらの研究が内部告発に至る原因を無視したナンセンスなものであり、内部告発は誰もが直面しうる道徳的な課題だと主張しています。

Gjøvik氏によると、人が内部告発を実行するのは上司に問題を報告しても対処されず、組織内で解決できる可能性がなくなってしまった場合が多いとのこと。「一般的に、労働者は深刻な問題や意図的な不正行為について内部告発する可能性が最も高いと言われています。内部告発者が規制当局に告発したケースの3分の2は告発が会社に無視されたためで、10%のケースでは問題が隠ぺいされたために名乗り出ています」とGjøvik氏は述べました。


多くの内部告発者は正式な手続きと正義を信じており、敵対的な反応が寄せられることを予想していないそうですが、実際には「情報漏えい者」「密告者」などの汚名を着せられ、個人情報が広まってしまうケースも多いとのこと。

アメリカでは内部告発者を保護するための法律と保護措置が存在していますが、実際には内部告発者を強制的に排除しようとする組織的な行為をなくす役に立っていないとのこと。Gjøvik氏は、「内部告発に直面すると、組織は本能的に自分たちの責任と損害を最小化しようと反応します。一般的な管理職の戦術は、同僚による暴徒化を扇動し、内部告発者に対する曖昧な苦情を作り上げることです。そして内部告発者の信用を傷つけ、人格を攻撃するための調査が行われて文書化され、内部告発者はデタラメな調査を『保護』するために組織から隔離されます」と述べています。


2017年の調査によると、内部告発者の99%は告発後に嫌がらせを受けているそうで、94%は恐怖を感じるほどのいじめを、89%は法的な対立と脅迫を、14%は身体的・性的な暴行を受けたと報告しています。経営陣は積極的に内部告発者への迫害を扇動しないにしても、同僚による報復を許容し続けることが多いそうで、内部告発者の約50%が自殺を考えたとの研究結果もあります。

Gjøvik氏は2014年の研究を基に、「最終的に、社外に問題を持ち出した内部告発者の約7割が解雇や退職を余儀なくされています。内部告発者に対する報復は一般的かつ深刻であり、外部に問題を報告して不利な評判を引き起こす人は、『包括的な報復』に遭うことが予想されます」と述べました。


内部告発者に対する報復として最も一般的なものは、ガスライティングと呼ばれるものです。企業は自らの不正行為から世間の評判をそらすため、内部報告者の品位を落とすような評判を流し、証人としての信頼性を損なおうとします。「この内部告発者は信頼に値しない」と思わせることができれば、企業は内部告発者は不合理で過剰反応を起こしていると反論することが可能となります。

この心理操作によって、内部告発者は自分自身の記憶や正気を疑うことになります。こうなれば、外部の人々に対して内部告発者の言動は一貫性が欠けており、不安定な存在だと見せかけることができるとのこと。

2018年の研究では、内部告発者はその他の人々と比較してはるかにうつ病や不安障害、睡眠障害などのリスクが高いことが示されています。内部告発者の88%が望ましくない思考が非自発的に生じる侵入思考や悪夢を報告し、89%が自身の現状に屈辱を覚え、87%が組織的な敵対者がいると感じているとのこと。内部告発による心理的な悪影響は、愛する人を失って悲しんでいる人や、大規模な自然災害を経験してから2~3週間後の人に匹敵するとされています。

また、内部告発者は収入を依存していた組織や会社を追い出されることにより、経済的な苦境にも追い込まれます。2021年の研究によると、内部告発者の多くは収入が激減する中で引っ越しや訴訟の費用を負担しなければならず、年間平均で3万ドル(約400万円)以上の赤字になるとのこと。また、解雇されるなどして収入が完全になくなれば、赤字額は年間7万6000ドル(約1000万円)以上に上り、仕事に戻ったとしても収入は内部告発以前の水準を大幅に下回るそうです。


さらに、内部告発者は最悪の場合殺されることすらあり、アメリカでも内部告発者の殺害事例がいくつか報告されています。2017年には、樹木管理会社で働いていたEliud Montoya氏が「会社が不法就労者を雇用して数億円以上を不当に搾取している」と連邦規制当局に告発した数日後、会社の従業員に雇われた殺し屋によって射殺されました。2019年には、飲食店の上司が給与税をごまかしていることをニューヨーク州労働局に告発しようとしていたAllyzibeth Lamont氏が、上司に雇われた殺し屋に撲殺される事件が起きています。

もちろん、内部告発者に暴力的な報復を行うことは企業にとってリスクが高い行為であり、身体的な危害ではなく精神的な嫌がらせを行って辞職に追い込むなどの報復が一般的です。しかし、内部告発者に及ぶ精神的な悪影響は大きく、Gjøvik氏はアメリカの内部告発者保護法は内部告発者の保護に失敗していると指摘。内部告発者は、最終的に企業を罰する規制当局にとっての証人かつ情報提供者となり得る存在であり、犯罪捜査において司法省を支援する情報提供者と同等の保護措置が必要だとGjøvik氏は主張しました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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