ドラッグと暴力の間には実は関係がない

by Giuseppe Bognanni

「ドラッグを服用すると暴力的になる」「ドラッグを扱うマーケットには暴力がはびこっている」というように、一般的にドラッグは暴力と関係のあるイメージを持たれることが多いのですが、近年の研究によってドラッグと暴力の間には確固たるつながりがないことが明らかになっています。では、そもそもなぜ「ドラッグと暴力の間に関係がある」と思われるようになったのか、そして、実際のところドラッグ中毒者が暴力をふるう割合とはどのくらいなのかを、ユタ大学で法律を研究するシャイマ・ボーマン教授が解説しています。

The Drug-Violence Myth | Casetext
https://casetext.com/posts/the-drug-violence-myth

1991年に行われたアメリカ・ミシガン州の裁判で「ドラッグの服用による生理機能・認識能力・気分の変化により、ドラッグ中毒者は犯罪に関わる可能性がある」「ドラッグ中毒者はドラッグを購入する金銭を求めて犯罪と関わる可能性がある」「ドラッグ・ビジネスやドラッグ文化から暴力犯罪が生まれる可能性がある」という風に述べられたことからも分かるように、「ドラッグと暴力は関係する」という考えは司法上の判断に基づいていることが多々あります。また、アメリカではドラッグ犯罪が「暴力犯罪」として定義されているように、法律的にもドラッグと暴力はセットであるため、例え暴力とは無関係の生活を送っている人がドラッグ所持で捕まったとしても、危険だと見なされ勾留されることとなります。

by Keith Allison

なぜ裁判や法律でドラッグと暴力の関係が認識されているのかというと、捜査をスムーズにするため、という側面が少なからずあります。つまり、ドラッグと暴力の間に強いつながりがあるのならば、「ドラッグ中毒者の家には火器や武器などがあるはず」ということで、家宅調査や差し押さえ・押収の許可が下りやすかったり、正当性が認められやすくなったりするわけです。

しかし一方で、ドラッグを服用していた被告による「ドラッグの影響で暴力的になった」という主張はしばしば認められません。また「敵対する組織のドラックディーラーが火器を持って来た」と主張してもドラッグと暴力の間の関連が認められないことがあります。このことからも、「ドラッグと暴力の関係」は被告の権利を守る根拠としてではなく、権利を制限するために使われるものと考えられるわけです。

もちろん、ある特定のドラッグ中毒者が犯罪と結びついている、という見方は可能ですが、現実にはドラッグ犯罪者の多くは暴力とは無縁であり、一概に「ドラッグと暴力にはつながりがある」という結論を出せるほど状況は簡単ではありません。

by Mauro Sartori

また、ボーマン教授が逮捕されたり過料を命じられたドラッグ犯罪者の公判前の事前審理を10万件以上を調べたところ、実際に裁判で認められたドラッグ犯罪者の「暴力との結びつき」は他のグループの犯罪者に比べてむしろ少ないことも分かっています。研究者の中には、「現在違法とされるドラッグを服用することで、むしろ服用者の暴力性が減少する」と主張する人もいるくらいです。それと同時に、暴力によって過料に処せられた犯罪者は、ドラッグ犯罪者よりも2~3倍危険だということも分かっています。

さらに、1997年の調査では、ドラッグ犯罪を犯した人間のうち暴力を理由に有罪判決が下る人の割合は12%と示されており、2002年の調査では暴力と公序良俗で投獄されている人のうち、ドラッグを買うお金目当だった人はわずか5%だと判明しています。過去100年間にわたってドラッグの取引が行われてきたメキシコで、暴力犯罪が極端に増加してきたのがここ10年であることを見ても、ドラッグを扱うマーケットが暴力犯罪とは関係のないところで動いていることが見て取れます。

by Michael Coghlan

暴力はドラッグではなく経済的な困難や知識の不足、人の攻撃的な気質、人格障害からもたらされるというのが、最近の研究では指摘されており、「ドラッグと暴力の関係」はせいぜい「不確かである」という程度しか明言できないものです。しかし、近年の研究の進歩にもかかわらず、今でもアメリカの法律や裁判では「ドラッグと暴力は強く結びついている」という前提で動いており、ゆえにドラッグ犯罪者は他の犯罪よりも厳しく罰せられるのが現状となっています。

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